大阪府内の住宅街に建設されている「ペットの火葬施設」。施設の営業条件については業者と周辺住民との間で話し合いが続けられていますが、そんな中、突如、施設の煙突から黒煙が上がったということです。いったい何が…。業者の“強行”に住民たちが憤懣しています。
大阪府堺市中区の幹線道路沿いに建つ真新しい建物。入り口には「ペットカフェ」と書かれています。しかし、建物の反対側に行ってみると…
(記者リポート)「裏側に回ると、あちら、煙突が2本立っているのがわかります」
これはペット用の火葬炉の煙突。実はこの施設、ペットカフェの横に今後営業開始を控えるペットの火葬場が併設されています。問題は、建物の裏側。施設は複数の民家が並ぶ住宅街のすぐそばに建っているのです。一番近い家との距離は20mほどしかなく、煙突も住宅側についています。
周辺住民は、営業開始後に出る煙や臭いに不安を訴えます。
(住民)「気持ち的には窓を開けて風を通したりとか、洗濯物を干すとか、ちょっとちゅうちょしますよね」 (住民)「お線香の臭いだとか、何ともいえない死臭ってあるじゃないですか。そういったものって年を重ねるごとにひどくなりますからね」
施設のすぐそばに住む女性は次のように話します。
(住民)「リビングが火葬場側なんですよ。窓開けて食事はできないかなと思って。日曜日とかお昼食べたりもできなくなっちゃうかな、臭いがすると、と思いました」
住民たちが心配を口にする原因は、建設の経緯にもあります。3年前、葬祭場などを経営する堺市内の会社が施設の建設を開始。しかし、建設前に住民らが業者側から知らされていたのは“ペットカフェをつくる”計画だったといいます。
初めて開かれた住民説明会で配られた資料のタイトルは、「ペットカフェ」となっています。ところが、紙をめくっていくと…図面の片隅に「火葬炉」の文字があります。
(住民※おととし)「(資料に)小さく『火葬炉』と書いてあるので、(住民の)みんなにある程度分かって、そこからばっと広がったんです」
ペットカフェだけでなく火葬場も建つことが判明し、住民側は反対運動を開始。おととし、住民らは「最もくつろげるはずの自宅で、毎日、半永久的にペットの死を意識させられ、平穏に生活する権利を侵害される」として、業者に対して火葬場の営業の差し止めなどを求める訴えを、大阪地裁堺支部に起こしました。
(住民代表)「一企業の利益のために周りの住民が大変な苦労、精神的な苦痛を味わう。それも一過性の問題じゃなしにずっと続くと。これは納得できない」
ただ、裁判は長期化し、今年2月からは住民と業者で、火葬場の営業時間や臭い・煙の測定など営業をする上での条件について話し合っていました。
ところが今年7月、住民たちの怒りを再燃させる出来事がありました。7月半ばに住民が撮影した映像を見ると、火葬場の煙突から突如、黒い煙が立ちのぼり始めます。映像には、約1分間にわたって煙が流れる様子が記録されていました。業者が火葬を“強行”したのです。
突然の出来事に、映像を撮影した近隣住民は…
(動画を撮影した住民)「『あ、やば』と思って。もう焼いているのかなと思いながら。風で大気に混ざってこっちへも来るよな、怖いなと思いました」
これを受け8月、住民たちは緊急の集会を開きました。
(住民)「やってることは傍若無人、やりたい放題。煙がどういう成分があるのか、どういう公害があるのか、その辺をまずしっかりしてもらわないと」
火葬を強行したことへの怒りとともに、不信感も再燃します。
(住民)「(業者の)やり口はどちらかと言えば、後だしじゃんけん。全部後だしで来ている」 (住民代表)「(条件交渉で)何を言っても何を書面で送っても対応しない、無視状態。これからもそうやと思うんですよ。どれだけ僕らが吠えてもたぶん動かない」
なぜ、話し合いを行っている中で火葬を強行したのか。業者側はMBSの取材に「係争中なので裁判に関する具体的な事項はお答えできない」と回答しました。ただ、住民側の弁護士によりますと、今回の火葬について業者側は「業者関係者のペットの小型犬が死んだため試運転を兼ねて火葬をした」と説明しているといいます。
住民側は今後も業者側に火葬場の営業時間や煙・臭いの調査を行うことなどを求めていく方針ですが、交渉の先行きは不透明なままです。
(住民代表)「今まで10提案しても0回答というのがずっと続いていますから、なかなか厳しいなとは感じています」
住民側の思いを繰り返し裏切るような業者側の行動。大切なペットを弔う施設ではありますが、近隣住民への真摯な対応が求められます。