出産後や更年期に多くの女性が悩む「尿漏れ」。じつは40代女性の4割以上が経験しています。恥ずかしいけれど、放っておくと悪化することも。産婦人科専門医の高尾美穂先生が尿漏れ対策法を教えてくれました。簡単に始められるトレーニングから治療法まで、悩みを解消するヒントを紹介します。
二男出産後の13年前から尿漏れが始まりました。最初はくしゃみなどで腹圧がかかると少し漏れる程度でしたが、ここ1年、体重が増えたのも影響したのか、症状が悪化。歩く振動でも漏れるように…。(Mさん・48歳)
相談者さんのように、くしゃみや歩行など腹圧がかかったタイミングで尿漏れすることを「腹圧性尿失禁」といいます。日本泌尿器科学会によると40代女性の4割以上の人が、尿漏れを経験しているほど、めずらしくない症状です。
尿漏れには、私たちの骨盤の底にハンモック状に広がる「骨盤底筋」が関係しています。これは、骨盤内の内臓を下支えし、尿道や腟(ちつ)、肛門をキュッと締める役割のある筋肉のこと。しかし、加齢による筋力低下に伴い尿道を締める力が弱まると、腹圧がかかるたび、尿漏れを起こしやすくなるのです。とくに経産婦の方は、妊娠のときに大きくなった子宮で圧迫され、さらには出産時、赤ちゃんが産道を通る際に大きく引き伸ばされるため、骨盤底筋がダメージを受けています。そのため尿漏れの症状が出やすいのです。
また、女性は更年期に差しかかると代謝機能が低下し、太って内臓脂肪が増加。それにより内臓を下支えする骨盤底筋に負荷がかかります。つまり肥満も尿漏れを悪化させる原因です。
相談者さんは2度の出産による骨盤底筋のダメージが回復しないまま、筋力低下と体重増加が重なり、症状が悪化したのでしょう。
自分でできる対策は、肥満解消の意味からも体幹の筋肉を鍛える運動習慣をもつこと。それと並行して、腟や肛門を締める・ゆるめるを繰り返し行う骨盤底筋トレーニングを行うと効果的です。また、日頃からお尻を締めて立つことを心がけると、骨盤底筋と連動する筋肉を鍛えられるので尿漏れ防止につながります。骨盤底筋は意識するのが難しい筋肉である反面、トレーニング効果が出やすいところ。諦めずに続けてみてください。
ただ、相談者さんのように歩いても尿漏れをするのは重い部類です。尿道をテープで支える手術などの外科的治療もありますので、一度女性泌尿器科で相談することをおすすめします。