福岡市博多区のJR博多駅近くで昨年1月、会社員の川野美樹さん(当時38歳)が殺害された事件で、殺人罪やストーカー規制法違反などに問われた元交際相手の住所不定、無職寺内進被告(32)の裁判員裁判の初公判が17日午前、福岡地裁(冨田敦史裁判長)で始まった。
寺内被告は殺人罪については「刺したことに間違いない」と起訴事実を認め、同法違反については「待ち伏せしたことは違います」と述べ、無罪を主張した。
起訴状では、寺内被告は2022年11月に同法に基づき川野さんへのつきまとい行為などの禁止命令を受けていたが、23年1月16日、博多駅前の路上で職場から帰宅する川野さんを待ち伏せして追いかけ、頭や首、胸や背中などを包丁(刃体約24センチ)で多数回突き刺して殺害したとしている。
検察側の冒頭陳述によると、2人は福岡市・中洲で飲食店を展開するグループ内の別々の店で働いていて、22年4月に交際をスタート。その後、寺内被告が束縛するようになり、携帯を取り上げるなどしたため、同年10月、川野さんが警察に相談した。
その後、禁止命令を出されたことにいらだちを募らせ、謝罪させたいと考えるようになり、返答によっては殺害についても考えるようになった。事件当日は、川野さんの勤務先近くの博多駅前で3分間待ち伏せ、同駅へと歩く川野さんに約170メートルつきまとった。川野さんから「しつこい。警察で話そう」などと言われて激高し、包丁で少なくとも17回刺したと主張した。検察側は「悪質性が極めて高く、結果は重大」と訴えた。
一方、弁護側は包丁を持っていたのは「何者かから自宅を襲撃されたため」だとし、護身用目的だったと主張。事件当日は滞納していた携帯電話の料金の支払いのために博多駅に向かう際に、偶然会ったと反論。立ち止まったのは「『明日からの生活費をどうしよう』などと考えていたためだ」と述べて、「川野さんから謝罪があるだろうと思ったが相手にされず、気が付いたら包丁を手に持ち、川野さんが倒れていた。頭が真っ白になった」などとした。