相場は「1回1万5000円」、1時間で客を二人捕まえる売れっ子、タイ人の男娼まで
横浜最大の歓楽街を抱えるJR関内駅からほど近い、人通りの少ない路地に入ると、その場所は見えてくる。
21時を過ぎた頃、路上に立っていた膝上丈のミニスカートを穿いた外国人女性と目が合うや、彼女は突然記者に体を密着させてきた。タイのバンコクから来たという27歳のメイ(仮名)はこう囁(ささや)いた。
「お兄さん遊ばない? スケベなこと、最後まで、1万5000円。すぐそこの私の部屋で気持ちいいことしよ」
面食らった記者がその場から離れ、遠くから見ていると、メイはもう次の男性の腕を取っていた。二人はそこから10m程の距離にあるマンションへと消えていった。それから30分もせずにメイは外に出てくるとまた別の男性を捕まえ、先ほどのマンションへと入っていくのだった。
東京・新宿の大久保公園や大阪・梅田の兎我野(とがの)町など違法売春を行う「立ちんぼ」の増加が、社会問題となっている。
昨年以来、各地で検挙が相次ぎ、街に立つ女性の数は目に見えて減少している。
ここ関内エリアも昨年5月から9月にかけての摘発作戦でタイ、フィリピン、ペルー国籍の20代から50代までの男娼5人が神奈川県の迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕され、その影響から年末はほぼ壊滅状態になっていたという。
しかし、そこからわずか3ヵ月ほどで、立ちんぼたちはこのエリアに戻ってきた。
最も多くの立ちんぼを見かけたのが関内駅から徒歩10分ほどの距離に位置する若葉町だ。地元商店の店主が憤る。
「去年の春なんて、30人は立っていたからね。何度も警察に『なんとかしてくれ』と泣きついたこともあり、去年の夏頃からようやく動いてくれた。逮捕者も出て一時期は随分落ち着いたんですが、また最近になってちょこちょこ現れるようになった。
私ら地域住民がとくに怒っているのは、近くの駐車場やビルなど所かまわず性行為が行われていること。ここはかつて青線区域だった黄金(こがね)町から近く、昔から売春目的の女性が集まる場所でしたけど、男娼も増えてきた。本当にカオスですよ」
若葉町やその隣の末吉町周辺にはタイ料理店やマッサージ店が集中し、タイ人のコミュニティが形成されている。タイ料理店で話を聞くと、こんな苦情が聞こえてきた。
「食事を終えたタイ人女性のお客さんが店から出て帰ろうとしたら、日本人男性がしつこく声をかけてきたんですよ。売春婦だと勘違いしてたみたいで、お客さんは本当に迷惑していました。怒りを通り越して、悲しそうな顔をしていました」
3月某日の週末。若葉町を訪れるとすでにコインパーキング前に3人の外国人女性が立ち、道行く男性に声をかけていた。一本挟んだ薄暗い路地に入ると、身長170僂鯆兇┐襯潺縫好ートの人物が立っていた。
警戒していたのか記者の横を何度か通り過ぎてから、野太い声で「遊ばない?」と腕を掴んできた。タイから来たというソムと名乗る”男娼”は、スマホ片手にタイ語で通話しながらこう話すのだった。
「最初はお兄さんをポリスだと思っていた。私達はショートステイで、近くにマンションがある。今日は暇だから、5000円でサービスするよ」
記者が身分を明かし、「逮捕は怖くないのか」と尋ねるとこう続けた。
「逮捕されても国に帰るだけだから」
近隣住民によれば、地区で見回りなどの防犯強化を行っているが、抑止力にはなっていないという。同じ関内エリアの福富町で客引きをしていた、立ちんぼ事情に明るい男性が語る。
「関内周辺は若葉町、末吉町、曙町、福富町に伊勢佐木町と、いくつか立ちんぼスポットがある。それが検挙の増加を受けて、今は若葉町辺りに集中するようになった。最近は若い日本人女性の姿も見かけるよ」
検挙と再開のイタチごっこが繰り返される関内の違法売春。住民達はその様子を傍目に、深い溜め息をついていた。
『FRIDAY』2024年4月5・12日合併号より