全国に展開する大手美容クリニックAで施術した石川さん(仮名・30代女性)の写真がXを中心に話題となっている。涙袋をつくろうとヒアルロン酸を注入したところ、“デメキン”のように目の下の皮膚が垂れ下がってしまったという。いったい石川さんとAクリニックの間で何があったのか。本人に話を聞いた。
3月31日、有名インフルエンサーがXに写真を投稿したことで明るみとなった某美容外科Aの美容医療トラブル。かわいくなりたい一心で整形に踏み切った女性の気持ちを無残に踏みにじったのではと、ネットを中心に大炎上中だ。

自身は整形自体に抵抗はなく、周囲に手術済みの知人も多かったことから「私もヒアルロン酸を注入して涙袋をつくりたい」と1年前から考えていた石川さんは、3月29日に東海地方にあるAの某クリニックの門を叩いた。「インスタやTikTokで広告をよく目にしていたからという安易な理由で、Aに決めました。ホームページには涙袋へのヒアルロン酸注入が 1cc 2万円以下(通常、必要な注入量は0.1~0.5ccといわれる)、しかもウェブ予約限定クーポンとして2万円オフになると掲載されていて、『実質タダでできるじゃん! お得~』くらいの気持ちだったんです」
しかし、いざ来院してみると事前の認識とはまったく違ったという。「最初に医師ではないカウンセラーと話しました。こちらは『涙袋だけつくってほしい』と言っているのに、ほうれい線も消したほうがいいなど他の施術もいろいろカウンセラーから提案されて、最初に出された見積もりは約50万円でした。改めてこちらの希望を伝えても、やっぱり別の手術の追加を勧められ、次に出された見積もりが約30万円。その次は20万円……と3回くらい同じやりとりが繰り返されて、ようやく涙袋形成のみの見積もりを出してもらえました。カウンセリングだけで2時間はあったかと思います」料金はクーポンで2万円を値引きしても5万3600円。ホームページ記載の料金とは大きく開きがあったが、ウェブサイトで紹介していたものとは別の種類のヒアルロン酸を使用するという説明を受けた。「安かろう悪かろうになっても困るし、料金が高いということは、いい仕上がりになるだろう」と、石川さんは納得することにした。その後、カウンセラーとは別のドクターが現れ、再び、ほうれい線の手術などを提案されるも断り、ようやく5万3600円を現金で支払った。そして、施術室へ……。
「施術室のベッドの横になって、カウンセラーとは別のドクターが施術をしました。(鎮痛効果のある)笑気ガスを吸って手術時間は15分くらいだったと思います。で、終わった後に渡された手鏡で自分の顔を見てみたら明らかに涙袋がおかしくて。違和感をドクターに訴えても『いえいえ、おかしくないですよ』と受け入れてくれないので、『やっぱり変だから(ヒアルロン酸を)溶かしてくれませんか?』とお願いしました。でも相手は『溶かすことはできないけど、余ったヒアルロン酸をほうれい線に入れることができる』とまた別の手術の提案をしてきて……」
石川さんは頑として「ヒアルロン酸を溶かして涙袋をなくすこと」と「返金すること」を迫るも、施術したドクターは「溶かすことはできるが返金はできない」の一点張り。双方に気まずい沈黙の時間が流れるなか、「余ったヒアルロン酸を涙袋に注入すればマシになるかもしれない」と言われたため、再び施術室へと入った石川さん。笑気ガスの吸引時間は1回目より明らかに短かったため、ろくに麻酔がきかず再手術は激痛をともなった。だが事態はさらに悪化。こうして現在、ネット上で話題となっている涙袋ができてしまったというわけだ。
「2回目の術後、自分の顔を見た瞬間に完全にパニックです。『もう、(人生)終わった……』とすら思いました」「余計にひどくなっている!」と訴えてもまったく受け入れられず、「様子を見て、明日になってもまだ気になるようならカスタマーセンターに連絡する」と、いったんは帰宅をすることに。「相手はまるでクレーマーと接しているかのような対応だったので、自分の感覚がおかしいのかと思い、クリニックを出てすぐに友達にFaceTime(ビデオ電話)してみました。でも友人からは『クマができてるみたい』と言われ、帰宅後、同棲中の彼氏にも『目、どうしたの?』と心配されました。その日の晩にAのカスタマーセンターに電話をするも、『返金は30%のみで全額は応じられない。とりあえず明日、折り返す』ということでしたが、翌日、連絡がくることはありませんでした。こちらからクリニックに電話しても全然つながらず……本当に落ち込みましたね」
そして、ワラにもすがる思いで前述のインフルエンサーに自らの写真を送り、それが投稿されたことで大きな反響となったわけだ。腫れすぎた涙袋は、YouTube活動もしている別の医師にクリニックを紹介してもらい、無償で治してもらったという。その施術を担当した医師は「これ、本当に涙袋に入れていいヒアルロン酸なのかな」と首をひねっていたという。石川さんは今回の出来事で「整形がすっかりトラウマになりました」と話す。「涙袋はつくりたいけど、もう手術が怖いのでやることはないと思います。治るまで何度も泣きましたし、頭がどうにかなりそうで、彼氏の前でも取り乱してしまいました。とにかくAに対する激しい怒りを覚えます」石川さんはこの一連のトラブルのなかで、Aで唯一、親身になってくれる看護師がひとりいたと話す。術後、パニックになっているところ「このたびはキレイになりたくて当院に来てくださったのにすみません……」と慰めてくれたという。A内部にも、その体質に疑問を覚える人間がいるのかもしれない。
Aは今回のトラブルをどう考えているのだろうか。「集英社オンライン」は4月4日にAに電話をするも、「担当者は席を外している」「何時に戻るかわからない」と返答。グループ会社にも連絡をとり、取材意図を説明したが同様の対応だった。さらに質問状をFAXにて送ったが、期日内に回答を得ることはできなかった。
そんななか、4月5日夕方、石川さんの元に”医療記録開示請求の担当者”を名乗る男性から電話があり「過去の対応履歴からも大変ご迷惑をおかけしているという認識ですので、料金の3割をすでに返金しているかと思いますが、いただいている残りの金額につきましても全額お返ししたいと考えています」との内容を告げられたという。「私がインフルエンサーの方に告発したときは、返金は30%の一点張りだったので急にどうしたの? という感じです。最初からそうしてくれたら、私もことを荒立てたりしなかったのに。これ以上の問題にないように先手打たれた感じがして複雑な気持ちです」※「集英社オンライン」では、美容医療のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected](Twitter)@shuon_news 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班