2023年以降、ニュースで性加害の報道が多くなっている。ジャニー喜多川氏などの例が思い浮かぶが、そのほとんど全てが、男性が加害者となっている事例である。
しかしながら、実は女性に性加害を受け、今もなおその傷に苦しみ続けながらも打ち明けられずに苦しんでいる人も多くいる。男性が被害を告発すれば、周囲の人間やSNS上には「実は喜んでいたに違いない」や「嫌なら容易に拒絶できただろう」などと被害者を責める意見が多く集まることがその理由として考えられる。
しかしながら、立場上断れない状況に追い込まれたり、心理状況によって強制されたりするのは、女性だけでなく男性にも起きることであり、実際苦しむ男性もたくさんいる。今回は高校の先生に精神を洗脳されたことによって性被害を受け続けたという、たけるさん(仮名)の独白だ。たけるさんは同じように辛い思いをする人がなくなることを望んでいる。
私が性加害を受けていたのは、高校3年生の時、今から5年ほど前です。当時は洗脳されていたので、加害者の先生を受け入れる気持ちと拒絶する気持ちの間で板挟みだったのですが、今ははっきりと、先生に支配され性加害を受け続けていたのだ、と考えています。
きっかけは、高校2年の冬、受験勉強に悩んでみさ先生(仮名)に相談したことでした。自分は、2年生の春までインターハイにも出場する関西の強豪サッカー部に所属していましたが、練習試合で大怪我をしてしまい、部活の引退を決意しました。それまでサッカーに捧げてきた高校生活が全て無駄になってしまうような気がして、悔しかったので、その想いをバネに東京大学を受験することにしました。友情、恋愛、青春すべてを捨てて勉強一本で成功すると心に誓ったんです。
私はもともとあまり成績が悪い方ではなく、成績も順調に上がっていったのですが、2年秋頃から徐々に停滞し、成績が落ちぎみになっていきました。
「このままでは東大に届きそうにない」「自分の高校生活は何も得られない、全てが無駄なものに終わってしまう」…。そう思うと家でカッターで指を切るほど病んでいき、さらに成績も落ちていきました。そんな時に自分に優しい言葉をかけてくれたのが、みさ先生でした。
優しい理科の先生で、見た目はちょっと太ったおばさん。不安定な自分の話を聞いてくれたし、いいアドバイスをよくしてれました。勉強のアドバイスだけでなく、彼女が話す雑学も面白く、直感を鍛える方法など、新鮮で魅力的な話をしてくれて、気が紛れました。
ところが、高3に進学する時に先生の転勤が決まりました。少し残念に思っていたところ、先生が自分のLINEを聞いてきました。「これからは個人的にもっと色々なことを聞いてあげる」「私がついていればあなたは絶対うまくいく」そう言われ「自分を救ってくれるのはこの人しかいない」と思い、LINEを交換しました。
はじめは先生と生徒という普通のやり取りをしていましたが、少しすると私たちの関係はどんどんおかしくなっていきました。毎朝、昨日の報告と「今日も元気に笑顔で行ってきます!」というコメントをつけたボイスメッセージを送ることを義務付けられ、先生からも返事のボイスメッセージが届き続けました。勉強関係の悩みだけでなく、自分の周りに起きたこと全てを話すようにやっていきました。
そして、先生に毎日「お前はこのままでは駄目だ」「生まれ変わらなくてならない」と全否定をされるようになりました。自分はもっと病んでいきましたが、先生が最後に付け加える「でも私が救ってやる」という言葉に助けられ一生この先生についていくと決めました。
自分が引けなくなった出来事があります。先生に「今度の休みに梅田のカフェで話を聞く」と言われたのですが、梅田は家から遠く、今まで親に理由も言わず遠出したことなどがなかったこともあり、「親に許可を取りたい」と先生に頼みました。
ところがこれに先生は激怒し、「親に全て委ね、頼っているからあなたは成長できない。自分で考えて行動しなさい」「私たちの関係は絶対に親に話してはならない」と言われました。当時の自分はなぜかこれに感銘を受け、より先生を信じるようになり、親に黙って先生とお茶にいきました。
これ以来、休みの日に先生とよくお出かけに行くようになり、友達との付き合いもなくなっていきました。相変わらず自分の成績は低調で心は不安でいっぱいの中、先生に毎日全否定をされ甘い言葉をかけられるということを繰り返し、洗脳されていきました。その後「世の中には知るものと知らざるものの2つのグループがある、知るものになりなさい」などと、今考えると訳のわからないことを言われ、当時の自分には彼女はまるで救い主でした。
そうして夏も後半に差し掛かった頃、彼女に告白されました。「あなたを救うには私も本気で取り組まなくてはならない、だからあなたも私に向き合う覚悟がありますか?」そう言われ、本能で嫌がる自分と救いを求める自分の葛藤、そして何より断れば呪い殺されるのではないか、そういう想いから承諾しました。そして二人でディズニーランドに行くことになりました。
20歳以上離れた女性と笑顔でディズニーをまわる自分を客観視する度、本当に気持ち悪く、吐き気が止まりませんでした。でも彼女自分に全力で楽しみ、はっちゃけることを要求してきました。16時ごろに限界が来て、一度一人で散歩にいかせてもらいました。
その日の夜、彼女に連れて行かれた先は人生で初めてのラブホテルでした。もうその時の精神状態では断ることなど到底不可能でした。たるんたるんの腹とおばさん顔から目を背けながら、快感と吐き気の狭間を彷徨い続けました。帰りは心が張り裂けそうでしたが、自分の救いのためには彼女を信じることしかできませんでした。
それからも彼女との関係は続き、気づけば受験はことごとく失敗。一つだけ合格した東京の私立大学に入学することにしました。
上京する直前、先生に「私が好きなら一生そばにいなければならない、その覚悟がありますか」と結婚を迫られましたが、受験も失敗し虚無感でいっぱいの自分から出てきた言葉はなぜか「生理的に無理、別れてほしい」でした。泣き狂い、数日にもわたって説教を続けてきた先生をなんとか振り切って東京へ出てきました。東京で自分の見える世界が変わり、先生からの洗脳も解け、無事彼女のLINEをブロックすることができましたが、当時がフラッシュバックするのが怖くて一度も地元に帰省していません。
この出来事以来、異性といい感じになっても先生を思い出して吐き気が止まらなくなり、一度もうまくいったことはありません。当時自分は支配されていたので思いもしませんでしたが、他の被害者の話を聞いて自分も性加害を受けていたのだ、と気付かされました。今こうして勇気を出して当時のことを話せるのも、他の被害者の方と話せたことや新たな友人と遊び幸せを感じられたおかげです。周りの人への感謝は計り知れないです。
自分が病み洗脳されていくときは、内側に飲み込まれていくような感覚で、外の人の意見が聞けなくなりどんどん人との関わりを断つようになっていってしまいます。自分の経験が、逃げ道を奪われた同じ状況の人の助けになることを願っています。そしてもし同じようなことで悩む人がいれば是非自分が話を聞いて救いたい、と心から思います。
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