能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市。13年前被災した福島県の寺の住職と高校2年生の娘が炊き出しを続けています。「恩返しをしたい」親子の思いとは…
【写真を見る】能登→東北へ贈った「炊き出し鍋」が能登に戻って“恩返し”「ご縁が忘れられない」高2の娘とつくる温かいスープ【つなぐ、つながる】
地震発生から6日後の能登半島。ある親子の姿がありました。
佐々木道範さんと高校2年生の娘、如恩(のの)さん(17)。炊き出しに駆け付けました。
被災者「ありがたいです」「おいしいね…(涙)おいしい」
実は如恩さん、13年前の東日本大震災で被災。そのとき、まだ4歳でした。
福島県二本松市の寺。父・道範さんはここの住職です。東日本大震災では、家族全員無事だったものの、原発事故の影響で、如恩さんと母親は避難。家族がバラバラになりました。
母・佐々木るりさん「(娘の如恩さんが)お父さんのいない不安でビクビクしてるみたいになっちゃって」
ひとり、二本松に残った道範さんは、津波の被害を受けた沿岸部の支援に向かいます。そこで偶然出会ったのが、能登から来てくれた人たちでした。大きな“ずんどう鍋”を持参し、炊き出しをしていました。
佐々木道範さん「駆けつけてくれたことがまず嬉しかった。そのご縁は忘れられない。間違いなく僕らの勇気や力になった」
道範さんはその後、如恩さんを支援活動に同行させることに。普段の生活は別々でも炊き出しの間は、お父さんと一緒です。
佐々木如恩さん「お父さんと一緒になんか初めてのことをやってるみたいな感じでワクワクしてる方が大きかった。楽しかったなって」
こうして自然と支援活動に加わった如恩さん。
親子は能登の人が持ってきてくれた“ずんどう鍋”を譲り受け、熊本地震など災害のたびに、支援に向かいました。
佐々木如恩さん「1回経験してるから被災者の人たちにちょっと寄り添えるのかなって思ってて、震災があったから恩返しをしたいなって」
2月、親子は避難所となっている輪島高校へ。
トラックから下ろして、如恩さんが運んでいるのはあの“ずんどう鍋”。130人分の中華スープを作ります。そして焼きそばも…
一緒に焼きそばを作るのは、崖顕さん。輪島の中学3年生で、今回の地震で被災しましたが、父親や佐々木さん親子と一緒に炊き出しをしています。
炊き出しの合間、自宅ガレージで如恩さんと顕さんは…
顕さん「先に問題見とるん?」如恩さん「そう。長文は先に問題読んでから」
顕さんは2週間後に高校受験を控えていました。2歳年上の ののさんがサポートします。
顕さん「助かります」
如恩さん「ちょうど受験シーズンに被災して、輪島に残って、勉強と炊き出しの手伝いを両立するのは考えられないからすごいなtて思います」
顕さん「両立っていうか勉強から逃げとる感じかな」
東日本大震災を経験した ののさん。能登での炊き出しはこんなところでも…ビニールハウスです。
10人ほどが避難生活を送っていますが、避難所に指定されておらず、支援が届きにくくなっています。
如恩さんたちはたこ焼きをつくります。思いが詰まったたこ焼き。
子ども「おいしい」男性「こういうのはなかなか無いのでおいしいです」
如恩さんは被災者の女性に話しかけます。
佐々木如恩さん「仲良くなりたいなって」女性「こんなおばちゃんでよければ」
話題は東日本大震災の時のことに…
女性「覚えてとるん、やっぱり4歳でも」佐々木如恩さん「揺れてるときの記憶はあるけど、怖いって思わなかった」
女性「それっていいかも」佐々木如恩さん「怖いってトラウマになるよりいいかも」女性「輪島におる子も怖いとか家に入れないとか…それがあったからこうやってボランティアに?」佐々木如恩さん「そうですね」
そして女性から、感謝の言葉が…。
女性「たこ焼きおいしかったです。すごくほちゃほちゃで」男性「ほちゃほちゃ分かる?」佐々木如恩さん「ほちゃほちゃって初めて聞きました」
男性「少し前向きになれるね」女性「若い子が来てると特に負けられんって」
ビニールハウスに広がった笑顔。
佐々木如恩さん「被害を経験してる者同士だから共感できることもあったし、話を聞いて気持ちを伝えたることは不安を解消することになるのかな。すごく嬉しいですね、笑顔になってくれるのは」