だるさ、老け顔、皮膚炎、腎炎、腎臓病、自己免疫疾患、痛風、脂肪肝……。さまざまな症状の原因に“糖質”が関係していることは珍しくない。そう指摘するのは、糖尿病の専門医、総合内科医として活躍する山田悟氏だ。
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ここでは、同氏が摂取する栄養によって引き起こされる諸問題を解説した『糖質疲労 』(サンマーク出版)の一部を抜粋。健康的なイメージの強い食品、食事に潜む意外な落とし穴を紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
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サラダチキンだけ、デスクでかじっておしまい。そんなランチをなさっている方も多いでしょう。
確かに手軽で高たんぱくという点では本当に理にかなっています。ただ、サラダチキンには落とし穴があります。それは脂質が足りていないということです。
そもそも、たんぱく質だけを食べても、エネルギー摂取が足りていないと、食べたたんぱく質が破壊されてエネルギー供給にまわされてしまい、筋肉などの細胞の材料にはならないのです。
写真はイメージ AFLO
エネルギーにするために分解されたたんぱく質から生み出される尿素という物質が腎臓に負担をかけるのではないかと懸念している人もいます。実際には腎臓への負担を懸念する必要がないという論文もあるのですが、せっかく食べたたんぱく質を筋肉や内臓の新陳代謝に利用できないのはもったいないことです。
それ以上に大切なのは、たんぱく質と脂質には、それぞれ独立した機序で食後高血糖を予防・是正してくれる力があるということです。(*1)(*2)
*1BMJ Open Diabetes Res Care 2022; 10(3): e002820*2 J Am Coll Nutr 2009; 28(3): 286-295
脂質の摂取が少ないと食後高血糖(糖質疲労)を予防する力がサラダチキンのたんぱく質一辺倒ということになり、それでは脂質の分だけ力不足となります。もし、昼下がりに差し入れのお菓子をもらった場合、脂質を摂取していなかったがために糖質疲労を招くということになりかねません。
そもそも多くの人が「サラダチキン」を愛用する理由は、たんぱく質をエネルギー源とするためではなく、たんぱく質を「体をつくる材料とし」、余計なカロリーを摂取して太ることを避けたいからだと思います。
幸い、脂質を控えても(糖質を控える場合に比較して)カロリー消費が1日約300kcal減少してしまい、(つまり代謝が落ちるということ)減量には無利益だという論文があります(*3)どうぞ安心して脂質を摂取しましょう。
*3JAMA 2012; 307(24): 2627-2634
そして、サラダチキンを食べるときには、脂質をプラスすることをお忘れなく。
和食はヘルシーなイメージがあります。しかし、実際には、隠れている糖質が多いこともあるので、注意が必要です。
“和食はヘルシー”というイメージは、カロリーが少ない、油脂の使用量が少ないということに由来しているものと思います。肉の脂身を気にして、どの部位のお肉にするかや大豆ミートに替えようか、ということに気を遣う人もいらっしゃるでしょう。しかし、その際に、本来目を向けるべき糖質量に意識が向かわず、結果として、カロリーや油脂が少なくて糖質が多いという、典型的に食後高血糖、すなわち糖質疲労を招くメニューにしてしまうことがあるのです。
上白糖大さじ1杯で7.9g、みりん大さじ1杯で7.8gの糖質量となります。おにぎり1個の糖質量が約40gですから、おかずでこうした味つけの中で糖質を摂取し、さらに、主食を食べてとなると、容易に糖質過多を招きます。
しかも、こうした調味料に含まれる糖質は、実際にどれほどの量か外食のメニューとして提供された中では把握することは不可能です。食べて「甘い」と感じるほどでなくても、知らぬ間に糖質疲労を招きかねないということを認識していただきたいと思います。
とんかつもみなさんが大好きなメニューでしょう。多くの方は「揚げ物の油脂が問題」と思うかもしれません。揚げることで油脂を摂取するので、ロースをやめてヒレにしようとなさる方も多いと聞きます。
しかし、油脂は摂取することで血糖値上昇を抑制してくれます(*2)。
*2 J Am Coll Nutr 2009; 28(3): 286-295
油脂ではなく、問題はとんかつの衣(パン粉。1枚で糖質20~30g)やとんかつソース(大さじ1杯5.6g)に多く含まれる糖質です。
私も学生時代は、とんかつソースをおかわり自由のキャベツにたっぷりかけて、考えると糖質かぶせで食べてしまっていました。しかし、むしろ、とんかつを楽しむのであれば、ヒレでもロースでもOK。油脂の多いロースのほうがよりいいくらいです。一緒の白米の量を軽くし、味つけをソースよりもおろしポン酢や塩レモンにしていただくといいでしょう。

また、楽しく鉄板を囲むお好み焼きも、問題は「豚バラ」や「マヨネーズ」ではありません。糖質量として多いのは、素材としての粉そのものとお好み焼きソースです。
お好み焼きソース(大さじ1杯7.1g)は大さじ1杯では済まない量を塗っている方も多いかもしれませんが、ソースよりもマヨネーズをメインに塗りつけて、豚バラをたっぷりにすることが大切です。
小麦粉を山芋にすることで健康上のメリットをうたっているレシピもありますが、山芋もあくまで芋であり、糖質量が豊富ですので、ご注意ください。
さらに、みんなが大好きなカレーライスもお米の量だけを気になさる方もいらっしゃるようです。具材のジャガイモの糖質にお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日本で一般的なカレーのルーはとろみづけに小麦粉などの糖質豊富な食材が使われています。たとえば、市販のカレールーのキューブ1個で7.6gです。カレーライスは糖質かぶせの上をいく「トリプル糖質」というわけで、要注意なのです。
幸い、チェーン店のカレーライス店では、白米をカリフラワーに変更することで糖質量を減らせるお店もあります。食べるのをやめる、ではなく、工夫することで食べられるようにする、を心がけたいですね。
なお、寒い時期の和食に使用される餡のとろみ(中華料理の餡かけにも使われます)は片栗粉です。同様に、ごま豆腐などに使用されるのは葛粉です。片栗粉も葛粉もいずれも糖質そのものです。糖質量としてのカウントを忘れないようにご注意ください。
〈睡眠の質を高める乳酸菌飲料が身体に悪影響を与える…!? 糖質制限のトップドクターが明かす“間違いだらけの「飲み方」”問題〉へ続く
(山田 悟/Webオリジナル(外部転載))