若手社員から「老害」と思われないためにはどうしたらいいのでしょうか(写真:USSIE/PIXTA)
「優しく接していたら、成長できないと不安を持たれる」「成長を願って厳しくしたら、パワハラと言われる」
ゆるくてもダメ、ブラックはもちろんダメな時代には、どのようなマネジメントが必要なのか。このたび、経営コンサルタントとして200社以上の経営者・マネジャーを支援した実績を持つ横山信弘氏が、部下を成長させつつ、良好な関係を保つ「ちょうどよいマネジメント」を解説した『若者に辞められると困るので、強く言えません:マネジャーの心の負担を減らす11のルール』を出版した。
本記事では、比較的若い30~40代でも硬直的な考え方の人だと若手から思われてしまう、「ソフト老害」と呼ばれる上司の話を取り上げる。若手社員から「老害」と揶揄されるようにならないためには、どうしたらいいか? 「ソフト老害」と思われてしまう30~40代の人の口癖を3つ紹介して、その理由を簡単に解説する。
まずは、「老害」と思われてしまう人には一般的にどんな特徴があるのか? 私は以下4つの特徴があると考えている。

(1)上から目線で自分の意見を押し付ける
(2)過去のやり方こそが正しいと思い込んでいる
(3)自分の非を認めない
(4)年寄扱いされると怒る
共通しているポイントは、理不尽さ、不誠実さである。理にかなっていない言動、真心に欠ける態度によって強い悪影響を受けると、
「老害だ!」
と言いたくなるのだ。1つひとつ解説していこう(※ちなみに「話が長い」「同じことを何度も繰り返す」といった特徴も老害だ、とする意見・記事を目にするがこれらは除いた。これぐらいの特徴で「老害」と表現すると、本質を見誤るからだ。少しぐらい話が長くても、同じことを何度も繰り返したとしても、理不尽ではないし、ましてや不誠実とまでは言いきれない)。
(1)上から目線で自分の意見を押し付ける
上から目線で自分の意見を押し付けることは、まさに理不尽と言える。こういった特徴を持つ人は、過去の成功体験を過信し、それを絶対視してしまう傾向にある。反対意見を無視して意見を押し通す「確証バイアス」のベテラン社員は、この部類に入る。
(2)過去のやり方こそが正しいと思い込んでいる
過去の成功体験に固執し、それが現代でも同様に役立つと信じて疑わない。まさに「現状維持バイアス」にかかっている人だ。もちろん、何でもかんでも新しくすればいいわけではない。何を変えるべきで、何を変えないべきか、松尾芭蕉の俳諧理念の1つで新刊でも解説した「不易流行」を正しく意識すべきである。
(3)自分の非を認めない
自分の非を認めない、間違いを訂正しない姿勢は不誠実だ。まさに若者に対して「示しがつかない」態度である。間に挟まれる30~40代社員は手を焼くことだろう。
(4)年寄扱いされると怒る
年齢を理由に特別扱いされること、特に能力面で疑問視されることに敏感な人がいる。決して卑下する必要はないが、正しい自己分析は必要だ。年齢など関係なく、必要な能力、意識が足りないのなら謙虚に受け止めて改善する姿勢を示すべきだ。
「老害」と思われてしまう人の最大の特徴は、やはり「上から目線で自分の意見を押し付ける」ことだ。パワハラとまでは言えないが、若手社員の意見に耳を傾けず、自らの考えを一方的に通そうとする姿勢は、チーム内の空気を硬直させ、心理的安全性を著しく低くするだろう。
それでは「ソフト老害」とは、どんなものか? 40代になって職場で上と下の間に入り、上の世代を配慮しつつ、下の意見もうまく取り入れようとしたが、それでも下の世代からは「老害」と思われてしまう行動を指すそうだ。
この文章を読んで「なるほど!」と思わずに、「仕方ないじゃないか」と思われた方は注意してほしい。だから、50~60代の言動は「老害」とされ、30~40代は「ソフト老害」と揶揄されてしまう。
つまり、ここにある問題は一つ。それは「共感力」だ。「エセ共感」と呼んだらいいか、「なんちゃって共感」と表現したらいいのか。表向きだけ傾聴し、共感したフリだけするのはやめよう。そうしないと、
「うちの課長も『ソフト老害』だと思う」
と言われかねない。
それでは、「ソフト老害」をさらに理解できるよう、そう思われがちな人の口癖を3つ紹介しよう。
(1)「部長は言いだしたら聞かないからなぁ。ここはガマンするしかないな」
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。上司の多くが、若い部下に対してこのような愚痴をこぼすシーンをよく目にする。
「最近の若い子は、まるで言うことを聞かない。どうしたらいいんだ」
このように文句を言っているにもかかわらず、自分より上の部長や社長のことは、
「一度言いだしたら聞かないからなぁ」
だなんて呑気に言っているのだ。
「言っても聞かない」
「言いだしたら聞かない」
どちらも同じようなものではないか。忖度してないで、もっと経営陣にも文句を言えよと、頭がいい若者なら、そう思うに違いない。
(2)「君の気持ちもわかるけど、昔はもっと大変だったんだから」
「不満があったら言えよ。何でも聞くから」
といって、耳を傾けてくれる先輩や上司の存在は、若者にとってとても心強い存在だ。しかし、人には2種類のタイプがいる。
・口にするだけでスッキリするタイプ
・問題解決に取り組んでくれるとスッキリするタイプ
前者のタイプなら、「親身に話を聞いてくれた」「自分の言い分に共感してくれた」と満足するかもしれない。しかし後者だったら、それだけでは満足しない。目的が「話を聞いてもらう」「ガス抜き」ではなく「問題解決」だからだ。
したがって、その場限りで共感をされても納得しない。だから、
「では、具体的にどうすればいいですか?」
と聞きたくなる。それに対して、上司が問題解決を目的とせず、ただ聞くことだけを目的としていたことに気がつくと、若者は強く失望する。
「不満があるなら言えっていうので言ったのに、それじゃあなんも解決しないじゃないですか」
このように責めてしまいたくなる。そうなると上司も困り果て、
「お前の気持ちもわかるけど、昔はもっと大変だったんだから」
と、苦し紛れの「言い訳」が口をついて出てしまう。当然「今はこれでも、まだマシになったんだから」と言われて納得する人などいない。相手(若者)目線に立った発言じゃないからだ。
「ソフト老害」と思われる人は、上から目線で自分の意見を押し付けるような態度はしない。しかし、ソフトタッチで若者の主張を受け入れない。だから「老害と大して変わらない」と思われてしまうのだ。
(3)「うちの業界は特殊だから……」
まともな理由をもって反対するならともかく、「もっと変わるべきだ」と訴えたのに、このように言い訳されると多くの若者はガッカリするだろう。
「会社に向かって提案するだなんて、10年早い!」
と言ってしまったら本物の老害だが、
「君はまだ経験が浅いからわからないだろうけれど、この業界は特殊だから」
などと、やんわり上から目線で言ってくる。なので「ソフト老害」なのだ。
そもそもこの言い訳は、業界標準や他社の手法を取り入れることから逃げるために使われる。「この業界は特殊」「うちの会社は特殊」という根拠を持ち出されたら、何も変えることができない。
「いろいろ提案して」
と先輩や上司に言われても、その気にはならないだろう。
今の時代、50代や60代だけではない。30~40代も正しく自己認識をしよう。そして不要なプライドを捨てて、若者たちと協力的な関係を築くことだ。
「私が部下を育ててやる」
という上から目線ではなく、
「一緒に育っていこう」
と謙虚になること。それができないと「老害」と思われるかもしれない。たとえ変えられなくても、変わろうと努力することが重要だ。最初から「どうせ無理」「昔からこうだから」と変革から逃げてしまうのは、絶対によくない。
30~40代の上司たちも「ソフト老害」と呼ばれないよう、新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません:マネジャーの心の負担を減らす11のルール』を参考にしてほしい。
(横山 信弘 : 経営コラムニスト)