1月14日、愛媛県四国中央市のスターバックスで男性が射殺された事件で、愛媛県警は殺人の疑いで、6代目山口組と敵対する池田組の2次団体・功龍會会長で池田組のナンバー2・前谷祐一郎若頭(62)を全国に指名手配中だ。市民を恐怖に陥れる白昼堂々の蛮行は決して許されるものではないが、ナンバー2自らが発砲するに至った背景はどういったものだったのだろうか。
【写真を見る】移籍先がハッキリ記された亡くなった石川さんの「移籍報告書」、凶行の引き金となった祭りでの乱闘シーンなど
まずは、事件についておさらいしておこう。
「現場は四国中央市のスターバックス イオンタウン川之江店のテラス席で、前谷若頭が市内に住む石川雄一郎さん(49)の胸を拳銃で撃ち、殺害したものです。前谷若頭は凶器を持ったまま逃走を続けていると見られています」
と、担当記者。
愛媛県警は事件の翌日。愛媛県新居浜市にある前谷若頭の実家や自身が主宰する右翼団体の事務所、岡山市内の自宅や知人女性宅にも家宅捜索をし、殺人容疑で逮捕状を取って全国に指名手配をした。
さらに22日には池田組の事務所の捜索にも踏み切っている。前谷若頭は身長約163センチで小太り、白髪だという(情報提供先:四国中央警察署捜査本部 電話0896-24-0110)。
「事件直後から実家が新居浜市の前谷若頭と連絡が取れなくなっている点などから、その犯行を疑う声があがっていました」(同)
竹垣悟氏(NPO法人主宰、元山口組系暴力団組長)によると、「前谷若頭は人と話をするときは近隣のガストかジョイフルといったファミレスを選ぶのだと聞きました」とのことである。今回、あえてスタバのテラス席を選んだのは、話をするためではなく最初から殺害の意図があったということなのだろうか。いずれにせよ、市民を巻き込みかねない蛮行と言わざるを得ない。
殺害された石川氏は元々、前谷若頭が率いる功龍會の会長代行と政治結社・祐龍会の会長を務めていた人物。前谷若頭とは“親子”の関係にあった。それが15年ほど前に、石川氏は破門になる。何があったのか。
「かつて功龍會の本部長を務め、現在はカタギとなっているAさんから今回の事件後に連絡を取って聞いたところでは、石川氏がAさんを刃物で刺したことがあり、そのことで破門になったと言っていました。石川氏は当時、薬物中毒だったようです」(同)
石川氏は服役後、一旦は前谷若頭のもとに戻ったようだが、その後、6代目山口組との関係を深めていったようだ。6代目側の「移籍報告書」を見る限りでは、2021年2月25日の日付で、功龍會の石川祐一会長代行(石川氏の渡世名)の所属先として、6代目山口組の2次団体・2代目若林組・森組が記載されている。
2015年8月に山口組が分裂した際、功龍會の上部組織である池田組は神戸山口組側についたり、そこから脱退したり、新たに「神戸・池田」の2社連合を結んだりと、変遷を経て今に至っている。ただ、この間、山口組と対立関係であるという点は一貫している。石川氏は相手側に移籍したことになる。
前谷若頭と石川氏の親子関係がこじれたのはこれと無縁ではないようだが、決定的な亀裂が走ったのは、2022年10月の伊予三島秋祭り(四国中央市)でのトラブルだったという。
その祭りで前谷若頭と石川氏との間でケンカのようなことが起き、それを捉えた動画も出回っている。
「当時、石川氏は自身のバックに6代目山口組がいることを吹聴していたとも聞きました。岡山や香川から20人ほど、自身に近い人間を集めてケンカをふっかけたということでした」(同)
祭りという公衆の面前で元・子分からケンカを売られるというのは、ヤクザの親分として看過し難いことだったのだろう。折に触れて「あいつだけは許せない」と当時のトラブルを振り返っていたとの証言もあるという。
「祭りのあったエリアを仕切っていたのは元々、6代目山口組の3次団体・加地組で、前谷若頭はこの組織に所属していました。加地組の組長が引退した後に地盤を引き継ぎ、功龍會を組織したのが前谷若頭です」(同)
どんな理由であれ、殺人を正当化することはできないが、自身の地元での揉め事で親分としてのプライドがズタズタにされたということなのかもしれない。前谷若頭は依然として逃走を続けているようだが……。
「“出頭する気はさらさらない”との思いを吐露していたとの情報もありました。逮捕・起訴されれば最低でも無期懲役は不可避ですからね。潜伏生活は何らかのサポートなしには続けられないでしょうから、池田組が捜査当局のターゲットになると見られています」(先の記者)
結果として、池田組にとって抗争相手である6代目山口組を刺激することになるのだろうか。
デイリー新潮編集部