「仕事柄、ただでさえうちは嫌われる組織です。納税は国民の義務とはいえ、物価が上がる一方なのに収入は増えず、少しでも納税額を減らしたいというのが国民感情です。そういったなかで、スムーズに徴収を進めるためには我々自身がしっかりと納税するのは当たり前で、ほかの規律も守る生活を送るべきです。しかし……」(東京国税局中堅職員)

税務署などを含む全国の国税局で近年、不祥事が相次いでいる。東京国税局は全国で12ある国税局と事務所のうちのひとつで、大企業が多く所在し、富裕層も多い東京都や神奈川県、千葉県、山梨県の4都県を管轄する。職員数は1万5千人超と最大だ。

冒頭の中堅職員によると、巨大組織の中には、不良職員も少なくないという。昨年末にも問題職員がおこした耳を疑うような事案が明らかになった。

東京国税局

12月26日、同局広報室は都内の税務署で勤務していたいずれも20代の女性職員3人が無許可で兼業しており停職処分となったことを発表した(いずれも同日に依願退職)。3人が処分を受けた行為を以下に記す。

A子
2022年8月~2023年6月、ソープランドなどで勤務し約239万円を得ていた。また規則に反して、行政文書を無許可で持ち出し自宅で保管していた。

B子
2022年7月~2023年5月、ソープランドなどで勤務し約200万円を得ていた。

C子
2022年10月~2023年9月、男性用ヘッドスパで働き約136万円を得ていた。

昨年末に限らず、女性職員による風俗店での無許可兼業は近年複数回、発覚している。なぜ風俗店でこっそり副業をする女性職員が後を絶たないのか。

「ソープランドなどのピンク産業はもっとも脱税が多い業界のひとつです。勤務している女性の給与も男性客の支払いも現金が多く、しっかりと帳簿に残っていないことも少なくない。元女性職員はこのような実態を知った上で、『この業界での副業はバレない』と考えて手を出したんでしょう」(前出の中堅職員)

税務署職員として得た知識をもとに、兼業が発覚しにくいピンク産業を選び、納税もせずにカネを稼いでいたことになる。言い換えれば、脱税に加担していたわけだ。大手紙社会部記者によると、今回、処分を受けた3人(いずれも後に依願退職)の中には、風俗産業と同様に脱税が横行しているパパ活を行っていた女性職員もいたという。

「東京国税局では2022年末にも、無許可で風俗店で働いていた女性職員が懲戒処分を受けていますが、このところ毎年のように処分者が出ているんです。昨年末に懲戒処分をうけた元女性職員はその動機について『ホストクラブの遊興費だった』などと調査に回答していました。ホストクラブも現金の支払いが多く、売掛金などもありカネの流れが見えにくい業態のひとつ。こうしたところに税務署職員がお金を落としてるわけですから、ミイラ取りがミイラになってしまっているような状況です」

東京国税局の懲戒処分は風俗関係にとどまらないという。

「昨年5月にはスマホでFX取引を繰り返していた職員2人が減給の懲戒処分を受けました。一人の職員が9カ月間で3000回以上、トイレなどで隠れて取引を繰り返していました。このように勤務中に株やFX取引を行ったことによる処分は多いです。税務調査をすると、株やFXでものすごく利益をあげている個人の詳細がわかります。それに憧れて自らも手を出して依存しているんでしょうね」(同記者)

職場のトイレで株やFXをしていた(写真はイメージ)

東京国税局に限らず、全国レベルでもここ数年で税務職員によるさまざまなジャンルのトンデモ事件が相次いでいる。

「コロナ禍だった2021年には、まん延防止等重点措置の期間中に大人数で会食した国税庁職員間でクラスターが発生しました。国から持続化給付金をだまし取る詐欺事件に加担した職員もいましたよね。話題になったのが、埼玉県などを管轄する関東信越国税局の職員が勤務先に人糞を何度も送付していた猟奇的な事件。この職員は別にストーカー事件も起こしていた。そのほかにも盗撮に大麻……と刑事事件も全国で頻発しています」(同記者)

たった数年でこれだけの事件が起きているとはにわかには信じがたいが、こうした背景について前出の現役中堅職員が解説する。

大久保公園付近で“たちんぼ”をする女性(撮影/集英社オンライン)

「まず全国の国税職員は約5万6千人と規模が大きいことがあげられます。若い警察官の不祥事もよく目にしますが、うちには警察官になれなくて来た人間も多い。あとは若手、中堅、ベテラン問わず酒が好きな人間も多く、未明まで身内の飲み会に参加した後、勤務先近くのマンガ喫茶に宿泊して早朝からまた勤務している職員も少なくないですね。あと、少し頭の回る人間は退職後に再就職も見つかりやすいということに目をつけて、税務に興味がないのに入ってくるケースもある。企業は元国税というだけで採用したがりますから。」

1月24日には、当局国税局の男性職員(38)が、横浜市内の温泉施設で現金13万円などが入ったセカンドバッグを盗んだ疑いで現行犯逮捕された。
来月には確定申告も始まるが、国税職員の不正にも国民の厳しい目が向けられている。

取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班