特殊詐欺に関わる若者が後を絶たない。
昨年11月、特殊詐欺グループの末端として窃盗罪などに問われた無職の男(21)が懲役4年6月の実刑判決を受けた。受け子や出し子などで計23回、総額約2700万円の事件に関与したと認定された。
男の弁護を担当した中村勉弁護士(92)によると、男は神戸市内の児童養護施設で育ち、母親の名前も知らなかった。高校を中退し、建設現場で働いたものの、3か月で辞めた。
生活費に困っていた時、知人から指示役の男を紹介された。「1日で20万円稼げる仕事がある。足はつかない」。後ろめたさはあったが、報酬は得た金の3割との約束で誘いに乗った。
指示役や会ったこともない「ボス」の指示に従い、2022年6~9月、高齢者からキャッシュカードを受け取り、ATMで現金を引き出し続けた。無報酬だったため、やめようと考えたが、怖くて言えなかった。兵庫県警に逮捕された瞬間、「やっと組織から離れられる」と安堵(あんど)したという。
21年版の犯罪白書によると、有罪判決を受けた特殊詐欺の出し子や受け子のうち、約55%が実刑だった。中村弁護士は「若者は軽い気持ちで特殊詐欺に手を出すが、組織に使い捨てられた後に、非常に重い刑罰が待っている」と話した。