石川県能登地方を襲った地震は6日に死者が100人を超え、今なお不明者の捜索が各地で続いている。
同県穴水町の住宅倒壊現場では、がれきの下敷きとなった家族の捜索を、悲痛な思いで見守る男性がいる。(金沢支局 秋野誠、宮嶋範)
この現場では土砂崩れで家屋3棟が倒壊し、町によると6日夕の時点で男女5人の死亡が確認され、計11人の行方がわかっていない。金沢市の障害者支援施設職員の男性(52)が見つめる先にあるのは、このうち1軒の妻の実家。家族4人と親族3人の計7人が見つからないままだ。
男性の一家は、妻(53)の実家で年を越すのが恒例だった。この年末年始も31日から、妻が長男(23)、次男(21)、三男(19)、長女(15)を連れて戻っていた。実家には、妻の両親、妻の弟夫婦と小学生の子供を含め、計10人が集まっていた。
男性は元日の仕事を終えた後、夕方から合流する予定になっていた。年が明けるとすぐに、家族のグループラインで「明けましておめでとう。今年もよろしくね」とメッセージをやりとりした。夕方、金沢市内を出ようとした矢先、激しい揺れに襲われた。
妻に何度も電話したが、つながらない。実家周辺はもともと電波のつながりにくい地域だったこともあり、最初は「無事避難できただろう」と考えていた。だが、その後も家族の誰とも連絡が取れず、不安は募った。
町役場や県警に問い合わせ、妻の実家が土砂崩れに巻き込まれたことがわかった。道路が各地で寸断され、金沢市を車で出発できたのは5日朝。ハンドルを握りながら「どこかで生きている。すぐに会える」と、何度も自分に言い聞かせた。悪路を越えて夕方にたどりつくと、変わり果てた風景にぼう然とした。家は土砂で押し流され、横倒しに。屋根瓦もほとんど崩れ落ち、周囲の電柱も根元から折れていた。それでも「顔を見るまでは分からない」と祈るような思いで、連日続く消防隊員らの捜索を見守り続けた。
これまでに、妻の両親、次男が救出されたが、3人とも死亡が確認された。6日朝、病院で対面した次男の遺体は損傷が激しく、見慣れた衣服でようやく本人だと分かった。喪失感で、しばらく動くことができなかった。
男性は捜索の様子を見つめながら、「最後まで見届ける。希望は捨てていない。もう一度、みんなで年を越したいんだ」と涙ながらに語った。