政府が、悪質な運転による死傷者を伴う交通事故に危険運転致死傷罪を適用する要件の緩和を検討していることが9日、分かった。
厳密な要件によって同罪が適用されない事案が問題視されているためで、自動車運転処罰法の改正を視野に入れる。故意性によってはスマートフォンを操作しながらの運転も危険運転として厳罰化を検討する。複数の政府関係者が明らかにした。
危険運転致死傷罪の要件には、アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難▽制御困難な高速度で運転▽無免許-などがある。検察や司法が適用に慎重になり、加害者が危険運転致死傷罪(懲役20年以下)に比べて法定刑が軽い過失運転致死傷罪(懲役7年以下)に問われ、問題となるケースが多い。
自民党の交通安全対策特別委員会の危険運転致死傷のあり方検討プロジェクトチーム(座長・平沢勝栄元復興相)は6日、提言をまとめた。危険運転致死傷罪について「国民の常識と法の適用に大きな乖離(かいり)がある」「要件が分かりにくく、立証のハードルが高い」と見直しを求めている。
また、法定の最高速度を大幅に上回る異常な高速度運転に対し、適用を拡充する法改正を含む措置を求めている。現行は対象となっていないスマホを操作しながらの運転については、「悪質・危険な運転行為として、故意犯に準じてより厳しい処罰をもって対処すべきだ」とPT内で議論があったと明記した。
自民は14日にも提言を決定し、岸田文雄首相が近く受け取る方針。法務省が法改正の是非を巡る有識者会議を開く方向で調整している。