11月24日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「東京大改造~世界一の市へ~」。11月24日に開業した「麻布台ヒルズ」。不動産大手「森ビル」が、総事業費6400億円を投じる巨大プロジェクトで、高さ330メートル、日本一のタワーが完成した。今回「ガイア」のカメラが、入居困難とされる麻布台ヒルズのレジデンスに入り、麻布台ヒルズの全貌とオープンまでの舞台裏を独占取材。森ビルが描く未来のTOKYO、壮大な街づくりの構想に迫った。
【動画】独占「麻布台ヒルズ」の全貌
世界3位の国際都市・TOKYOの魅力づくり
11月24日、「麻布台ヒルズ」(東京・港区)がオープンした。日本一高い330メートルのタワービルの最上階には、推定価格200億円ともいわれる超高級マンションが。他の部屋も数十億円からと高額だが、購入希望者が殺到しているという。
美食の名店も目白押し。フレンチ料理の巨匠・三國清三シェフがプロデュースするビストロ、手作りのモッツァレラチーズが絶品の世界的な賞を受賞した日本初上陸のピザレストランも。完成まで、35年の月日を費やした麻布台ヒルズ。総事業費6400億円の巨大プロジェクトで開発を手がけたのは、不動産大手「森ビル」だ。
11月2日。麻布台ヒルズを、森ビル社長・辻慎吾さんが訪れた。オープンしたが、一部は未完成。辻さんが目を止めたのは、優美な天井が迎える敷地面積1200坪のフードマーケット。寿司の名店がこぞって仕入れる、マグロ卸売りの「やま幸」など、34の専門店が出店する。フードマーケットは2024年1月末オープン予定で、目玉スポットはこれからも増えていくという。
「いろいろな店舗を集めている。全部こだわり抜いている」と話す辻さんが、もう一つこだわったのが、6000平方メートルの芝生の広場だ。通常は建物の配置を先に決め、空いたスペースを緑化するが、麻布台ヒルズは、中心に緑の広場をつくることから始めた。東京ドーム1.7個分の面積は、約3分の1が緑化されている。中央広場の傍らにつくったのは、なんと果樹園。なっているミカンは、誰でも採っていいという。他にも、ザボンやレモンなど、11種類の果物の木が。都心でフルーツ狩りもできる憩いの場にしようというのだ。辻さんの命を受けたのが、森ビルの緑化を全て担ってきた、森ビル設計部・技術顧問の山口博喜さん。
樹木医の資格を持つ山口さんにとってこだわりの場所が、一般の人は入れないビルの屋上。一面、草がボーボーだ。あえて繁殖力の強い雑草・チガヤを植え、そこにはバッタやスズメの姿も。山口さんは人工的な緑ではなく、本物の緑を目指したのだ。「この場所は、鳥の“サンクチュアリ(保護区)”。人間が来ない時は生き物がたくさんいるとか、そういう場所をつくってあげた方が面白いかなと。街に深みが出る」と話す。
20年前に完成した六本木ヒルズでは、山口さんの手がけた緑が大活躍。なんと、六本木ヒルズの麓に、環境省のレッドリストにあるトウキョウダルマガエルが生息している。すぐ近くには田んぼもあり、近くの小学生の米作りが恒例行事になっていた。「都会で暮らす子たちなので、自然体験があまりなかった。田植えも稲刈りも初めてという子がいっぱいいた。自然と触れ合えるのはすごく貴重な経験になっている」と先生。六本木ヒルズ自治会理事の近藤剛司会長も、「街づくりでいうと、森ビルは他の会社と全然違う。森ビルじゃなかったら、もっと無機質な街になっていたと思う」と話す。年間4000万人が訪れる六本木ヒルズ。森ビルは、地元と共に四季折々のさまざまなイベントを仕掛け、商業施設の売り上げでは、今も過去最高を更新している。“街を育てる”ことが重要と考える森ビル辻社長は、「街の鮮度はオープンの時が一番。鮮度は一番でその後落ちてくる。来てくれた人がまた来てくれて、人との絆は増えてくる。鮮度を上げていけば街はずっと成長して行くというのが根本の考え方。『街を育む、育てる』それが大事」という。
六本木ヒルズに本社を置く森ビルは、社員1600人以上を抱える大手不動産デベロッパー。1955年に前身の森不動産が設立され、東京・西新橋の小さなビルから事業をスタート。その後、新橋・虎ノ門地区に次々とオフィスビルを建設し、物件ごとに数字がつけられ、“ナンバービル”と呼ばれるように。
そして1986年、日本初の民間による大規模開発「アークヒルズ」を開業。だが、当時再開発に賛成し、参加した住民は、わずか2割だった。森ビルへの批判の嵐が吹き荒れ、住民を追い出し、土地を買い占める“地上げ屋だ”という声も。
地権者との交渉に奔走したのは、プロジェクトリーダーの故・森稔社長(当時)。“東京を世界で一番の都市にしたい”と考えていたが、「時代を先駆けて次の時代にも評価されるものをつくると、反対運動が起きる。そんな時でも森ビルは妥協しませんから」と語っていた。
麻布台ヒルズに隣接する森ビルの施設に、地権者のとりまとめを担った人がいる。虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合 理事長を30年以上も務めてきた、曲谷健一さん(98)だ。「9町会ぐらいあり、会長でもあるけど、(再開発)反対という声を聞いたことがない。むしろ、協力してやっていこうという方がずっと強かった」と話す。麻布台ヒルズが建てられたエリアの土地の権利者は、約300人。そのうち、9割の約270人が再開発に参加した。
着工前、このエリアは、木造家屋が密集する地域だった。緊急車両も入れない狭い道が入り組み、住民は、地震や火事などに大きな不安を抱えていたという。麻布台の地権者交渉に携わったのが、森ビル開発事業部の村田佳之さん。30年以上にわたって、曲谷さんたちと地域の人たちに向き合ってきた。その結果、開発は進み、狭い路地は街を東西に貫く道路に。避難所広場がつくられ、広場周辺で3600人が避難できる災害に強い街になった。
この日、村田さんは、曲谷さんを初めて麻布台ヒルズの新居へ案内した。地元の人たちが入居するマンションは、130平方メートルで間取りは4LDK。曲谷さんにとっては、まさに30年来の夢だ。ベランダから街を眺めた曲谷さんは、「違う国に来たみたいだね。大勢の人が訪ねて来てくれる街になればいい」と笑顔を見せるが、そんな麻布台ヒルズの全貌とは――。
古い物件でも借ります!オフィスが驚きの激変
2023年10月、東京都心5区のオフィス空室率は6.1%(三鬼商事調べ)。供給過剰の目安5%を上回る「2030年問題」が持ち上がる中、これを商機として動いている会社が、貸し会議室を運営する「TKP」(東京・新宿区 従業員約1364人 ※2023年2月末)だ。コロナ禍は、会議室をワクチンの接種会場として貸し出すなどし、急成長している。
率いるのは、創業者で社長の河野貴輝さん。本社には次々と物件情報が舞い込み、有望な案件は、河野さんに情報が上げられる。河野さんはすぐに交渉を指示。「大量供給があれば、当然ダブつく。ダブつく時は仕入れのチャンス。とにかく仕入れていく…もう大チャンスなので」と話す。
そんな河野さんのもとに新たな情報が飛び込んできた。向かったのは、東京駅八重洲口のほど近く、イギリス・ロンドンに本社を構える大手外資系銀行のビル。かつては1~10階まで銀行だったが、3フロアが空いた。東京駅周辺を集中的に攻めている河野さんは、立地の良さから掘り出し物と判断し、即決。他にも、東京駅八重洲口の目の前にある、「みずほ銀行」が入居していたビルの物件も契約済みで、過半数のフロアがTKPになっていた。
TKPは築年数の古いビルを安く借り上げ、内装をリニューアルし、イベントもできる会場として時間貸ししている。居抜きではなく、コストを抑えて作り変える独自の手法。これまで、東京ドーム約10個分の空きオフィスを会議室にしてきた。
河野さんが、東京駅周辺と共に注目しているのが、品川駅のエリアだ。近辺で7カ所目となる物件は、品川駅から徒歩5分、4年前に竣工した新しいビル。広いフロアを生かし、400人以上収容できる大型の会議室に改装した。だが、現地にやってきた河野さんは、細かいところにも目を光らせ、開業直前まで徹底的にこだわる。「今期の営業利益も、過去最高益を更新していく。さらにアッパーサイドにいけそう。そういう手応えを非常に感じている」。河野さんの挑戦は続く。
番組ではこの他、虎ノ門ヒルズ開発の裏側、2024年2月上旬にオープンする麻布台ヒルズのデジタルアートミュージアム、森ビルの特別な施設「森ビルアーバンラボ」の内部も紹介する。