2021年3月、ヤフーとLINEは経営統合を発表した(写真・共同通信)
「六代目山口組は、11月1日からLINEの使用をいっさい禁止したようです。『今後はLINEを送らないでほしいという』LINEが来たのを最後に、その文言も消えてしまいました」
困惑した様子でそう語るのは、東京在住の暴力団関係者だ。
LINEは11月1日から、反社会的勢力に対しての利用制限を発表した。10月1日にヤフーと統合したことに伴い、LINEヤフー共通利用規約を新たに設けたもの。規約には、次のような文言が記されている。
《当社は、反社会的勢力の構成員(過去に構成員であった方を含みます。)およびその関係者の方や、当社サービスを悪用したり、第三者に迷惑をかけたりするようなお客様に対してはご利用をお断りしています。》
また《アカウントが反社会的勢力またはその構成員や関係者によって登録または使用された場合、もしくはそのおそれがあると当社が合理的に判断した場合》にも、通知することなくデータやコンテンツを削除できることにした。
この発表は、ヤクザ社会に少なからず衝撃をもたらした。別の暴力団関係者はこう話す。
「我々は、情報のやり取りをLINEを通じてやってきた。電話もLINE電話が多かった。それがいきなり使えなくなると本当に困るよ。いまのところLINEが止まってしまうことはないが、今後、どうなるかわからない。LINEをやめて、ほかの通信アプリを使用するように、と言ってくる組織もあるが、もうそんなにたくさんアプリを入れたくもないし、よくわからない」
これまで堅気の人間とLINEでつながっていたこの暴力団関係者は、自分たちがLINEを送ったら相手がどうなるか、心配しているという。
「ヤクザ同士のLINEが禁止なのか、堅気の人にも送ったらダメなのか、堅気の人からLINEが送られてきたら、それもダメなのかわからない。LINEでやり取りしただけで逮捕になるなんて、ひどい話だ。ましてや、相手方も逮捕になるなら、もう使うことはできない」
関東地方の指定暴力団では、11月初旬の会合で「LINEの使用は個人の責任。解約する人は、それぞれ違う連絡手段を持つこと」などが話し合われたという。
はたして暴力団関係者は、LINEを使用しただけで逮捕されることになるのか。暴力団に詳しい都内の弁護士はこう分析する。
「これまでも、暴力団組員であることを隠してゴルフ場を利用したことが、詐欺罪に当たるとの判決が出されたり、暴力団組員であることを隠して航空会社のマイルを貯めたことが、電子計算機使用詐欺に当たると逮捕されたりした事例があります。LINEは無料で使用できるため、欺罔行為(ぎもうこうい・人を欺きだますこと)により財産上の利益を得た、と言えるかという点にやや疑問はありますが、暴力団組員であることを隠して通信サービスの提供を受けること自体が、詐欺であると言われる可能性はあるでしょう」
ヤクザの世界では、しばらく混乱が続きそうだ。