11月5日午前1時30分頃、新宿、歌舞伎町にてホスト店勤務の20代の男性が、女性に刃物で切り付けられる事件が発生。
男性は首元をカッターナイフで刺されたが、命に別条はなかったという。刺したのは、20代の女性。警察は女性を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
事件のあった現場は、歌舞伎町の中でも人の往来が多い、花道通りの一角、時刻は午前1時30分。週末の歌舞伎町の路上、飲食店、キャバクラ、ホストクラブが閉店し、深夜にもかかわらず多くの人で賑わっている場所だ。
犯行現場の一部始終について、歌舞伎町でキャッチをしている男性から証言を得た。
「最初は、ただの痴話喧嘩だと思いました。女性が叫びながら、男(ホスト)の胸をたたいている感じで。次は女性が持っていたカバンで殴りつける。近くにいた人が、仲裁に入っていましたが、加害者の女性は頭に血が上っているようで、叫びながら倒れた男に暴行を加えていました。そのあとにカッターを取り出して男性を切りつけました」
キャッチの男性によると、歌舞伎町では男女のもめ事がよくあるため、周囲の人は誰も気にはしていなかったという。
女性は倒れた男性の髪の毛を引っ張りながら暴行を続けていたが、それでも被害者の男性は電話を手から離さず、刺される瞬間まで通話をしていた。
「警察が来たのは、男性が刺されてから20分後くらいです。午前2時頃です。自分も近くにいましたが、正直ここまでの怪我(被害者の男性)とは思わなかったです。キャッチの知り合いも『血が出ているだけじゃない?』と考えていたので。警察が来て、事の重大さに気が付きました」
警察が現場に到着しても、加害者の女性は「死ねぇクソガキよぉ」「舐めてんなよ!」と血まみれの被害者に対し暴言を吐き続けており、その光景はまさに異様だった。
周囲の人々が誰も手を貸さない状況に対して、歌舞伎町で商売をする人間の暗黙の了解があるという。
「終電後の歌舞伎町では、こうした面倒事には関わりたくない人が多いと思います。私を含めて手助けをしたら、警察の事情聴取があるので、違法な商売をしているやましい人間は近寄りたくないんです。薬物の売人、現役暴力団も現場の人だかりにいました。あの現場で進んで事件に首を突っ込みたいと思う人はいないですね」
歌舞伎町のホストクラブでは、1部営業と呼ばれる深夜1時までの営業時間帯が存在する。事件が起きたのは、ホストクラブの営業時間が終わり、キャッチ達が自分が入れた客の集金を始めるために、店を回る時間帯だ。
こうした終電後の歌舞伎町は、裏稼業の人達が活発になる。そのため、わざわざ自分から事件に関わろうとする人はいない。
各種報道によると、事件当事者の男女は『toU』と呼ばれるイケメン特化型ライブ配信アプリで知り合い、交際を始め、同棲をしていたという。こうしたライブ配信をするホストについて、ホストで遊ぶ20代の女性は語る。
「自分の『顔』を売る商売なので、やっているホストは多いですね。その配信を見て『〇〇君カッコいい』って担当(女性客がホストを呼ぶ際に使われる言葉)になる人もいますし、宣伝の一部です」
このアプリは売れないホストが宣伝目的で使い、自分を売るために利用していることが多い。
ホストでは、売り上げが正義。何よりも金が重視される仕事であるため、売れるための努力の一つとしてライブ配信をしているのだという。
「でも実際は、配信しているようなホストは一生売れないですし、そういうホストに限って、性格が終わっているので。全部金に繋げようとして、どうやって私たち(女性)から金を引き出すかしか考えていない。目の前の女性を楽しませる努力をした方がいいです」
ホストは夢を見せる仕事であると言われることがあるが、その裏側は金鉱脈を掘り当てようと必死な男たちの世界だ。
色恋営業がまかり通る夜の職で、男女の関係性が行き過ぎた結果今回のような事件に発展した。
次々に起こるホスト絡みの事件を受けて、行政による大きな規制が入る日もそう遠くないのかもしれない。