スーパーで弁当や総菜を買おうとしたときに、誤って床に落としてしまった経験はありませんか。その際、容器がへこんでしまったり、容器から中身が飛び出たりしてしまうことがあります。
このような場合、落とした人は店に弁当や総菜の代金を支払わなければならないのでしょうか。また、落とした弁当や総菜を店に黙って売り場に戻した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
Q.スーパーで買い物をしている際に、誤って弁当や総菜を床に落としてしまうことがあります。もし容器がへこんでしまったり、容器から中身が飛び出てしまったりした場合、客は弁当や総菜の代金を支払わなければならないのでしょうか。
牧野さん「過失により店舗に損害を与えた場合、民法709条の不法行為に該当する可能性があり、この場合、原則として店舗に生じた損害を賠償する責任が生じます。具体的には、落としてしまった弁当や総菜の代金の支払いのほか、清掃にかかる費用を負担しなければならないでしょう。
ただし、『弁当や総菜の容器のふたがテープなどで固定されておらず、外れやすい状態だった』『弁当を何個も積み重ねるなど、床に落ちやすい状態で陳列していた』といったように、店舗側に落ち度があったことが原因で弁当や総菜を床に落とした場合は過失相殺となります。その場合、客は損害賠償額を減額されるか、損害賠償そのものを免除される可能性があります。
もっとも、ほぼ毎日、店の商品を購入しているなど、店にとって重要な顧客の場合、店側が損害賠償を任意に免除する可能性があります」
Q.誤って弁当や総菜を床に落としてしまった際に、弁償したくないからと店に黙って売り場に戻したとします。この場合、客は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「落とした弁当や総菜を黙って売り場に戻したという事実が発覚した場合で、店側が当該商品を廃棄することになったり、顧客が当該商品を購入後、食中毒を起こしたりするなどの損害が生じた場合は、商品を戻した行為に故意が認められます。
そのため、商品を戻した人は、民事上の不法行為責任に基づき、店舗や当該商品を購入した顧客に対して、廃棄や食中毒などで生じた損害を賠償する責任を負う可能性があるでしょう」
Q.故意に弁当や総菜を床に落とした場合、どのような法的責任を問われる可能性がありますか。
牧野さん「民事上の不法行為責任に基づく損害賠償責任を負う可能性があることに加え、刑法261条の器物損壊罪が成立する可能性があります。器物損壊罪が成立した場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料を科される可能性があります」
スーパーで弁当や総菜を購入するときは、落とさないように気を付けましょう。