夜の電車内でぐずり始めた赤ちゃんに対し、優先席に座っていた高齢男性が怒って杖を床に叩きつける。「うるさいよ! 黙りなさい!」と怒鳴り、周囲が注意すると「あんたみたいに甘やかす人が日本をダメにする」などと語気を荒らげた――。10月の下旬、Xに投稿された動画(現在は削除済)が物議を醸している。
投稿された動画は、電車のドア付近に立っていた母親が撮影したもの。投稿者の足もとでは、ベビーカーのなかで赤ちゃんが泣き声を上げている。その向かい側で、スーツ姿の男性が近くに座る男性と口論している。
投稿者のポスト(現在は削除済)によると、男性は赤ちゃんが3分ほど泣き止まない様子を見て、「うるさいよ!」と怒鳴り始めたという。周囲の乗客が男性を制止すると、男性は「黙らせられない親を見ると腹が立ってならない」「あんなのは親としても人間としても失格」とまくしたてる。投稿者が「あんたの暴言、動画撮ったから次の駅で降りて」と警告すると、男性は「誰に口聞いてんだブス」「俺らが払った税金でヌクヌク生きてんだろうが」とブチギレたという。
J-CASTニュースの取材によれば、その後男性は駅員と警察に引き渡されたというが、投稿者に対し謝罪はなかったという。SNSでは〈「泣く」のが赤ちゃんの仕事だ。そんなこともわからないか?〉〈我が家は子供が小さい頃は車移動、外食は基本せずで他人にうるさいとか思われないように子育てしてたなぁ〉などと様々な意見が飛び交った。
公共の場での赤ちゃんの泣き声に関するトラブルは度々話題に上がる。教育ジャーナリストの小林哲夫氏は、今回の動画のケースについて、「赤ちゃんですから、母親のしつけがどうこうという話ではない」と断じる。
「動画を確認しましたが、泣いているのは赤ちゃんのようですから教育のしようもない。乳児は言って聞かせて泣き止むものでもないんです。
杖を付いた男性は動画を見た感じからすると、70歳以上の人なんでしょうね。となると団塊の世代を含みますから、彼らが子供の頃は日本が一番うるさかった時代だと思います。子供は泣くのが仕事ですから、そこは社会全体が寛容じゃなきゃいけない」(小林氏)
小林氏はこの男性について、「団塊世代ですと仕事仕事の人生で、自分で子育てはしなかった、そんな時代の人なのかもしれない」とし、「もう一度教育を受ける機会が必要」とする。
「今の時代、学生が教育を受けるのはもちろん、社会に出て働くようになってからも、コンプライアンス講習を受ける必要があるし、部下を持つようになったら管理職としての再教育もあるでしょう。団塊世代の高齢者も時代による考え方の違いを理解するために、今の少子化の現状や子育てのリアルについて再教育を受ける機会があったほうがいい。
子育て中のお母さんはこういう高齢者に出会ったら、『もう少し我慢してください』と毅然とした態度を取ってもいいと思います。『ごめんなさい』と謝る必要はありません」(小林氏)
少子高齢化が進む日本。子育てに対する社会全体の態度を、もう一度考え直す必要があるのかもしれない。