サントリーの新浪剛史社長(64)は財界リーダーにふさわしいのか。4度の結婚、凄絶なパワハラ……本誌(「週刊新潮」)は“書かれざる履歴書”をひもといてきたが、そこに新たなページが。社長時代、ローソン名義でハワイの高級コンドミニアムのペントハウスを複数購入していて――。
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【写真を見る】約2億円! ワイキキビーチにほど近い高級コンドミニアム 新浪社長時代にローソンが購入している 抜けるような青空とたなびく雲が視界いっぱいに広がっている。眼下には、木々の緑、砂浜の白、海のエメラルドグリーンのコントラストが鮮やかなオーシャンビュー。ハワイ語で大型のバルコニーやベランダのことをラナイという。陽光ふりそそぐそのラナイからの眺望がとりわけ開放感抜群なのは、そこがペントハウスだからだ。

新浪剛史氏 ハワイ・ワイキキの西側、アラワイ運河沿いにある高級コンドミニアム「ザ・ウォーターマーク」最上階の3804号室。ラナイとつながるリビングルームには8人がけのダイニングテーブルが設えられ、その奥のキッチン・カウンターは御影石、キャビネットはマホガニー製だ。2ベッドルーム、2バスルーム。全ての部屋からオーシャンビューが望める。ハワイ最大のショッピングセンター「アラモアナセンター」まで徒歩10分で、コンドミニアム内には、プールやサウナ、エクササイズルームなどの共用施設が充実している。約2億円の高級物件 2011年、およそ庶民とは無縁のこの高級物件を購入したのは、日本の「ローソン」である。当時の社長は新浪剛史氏だ。購入価格は255万ドル。当時のレートで計算すると、約2億円となる。 ローソン元幹部によると、「ローソンがハワイのコンドミニアムを購入したという事実を知っているのは社内でも一部のみ。それがペントハウスであることや、物件の場所や名前まで把握している人は新浪さんとその側近くらいです」 しかも、新浪氏が社長を務めていた時期にローソンがハワイで購入した物件は、このウォーターマークだけではない。 07年には、ワイキキビーチの真正面にある高級コンドミニアム「アストン ワイキキ ビーチ タワー」の3304号室、08年には同コンドミニアムの3804号室(定期借地権)、10年には同コンドミニアムのペントハウスである4002号室を購入している。約1億5千万円の物件も新たに購入 そして、ワイキキビーチタワーの3304号室を日本人に売却した3カ月後に、先のウォーターマークを新たに購入しているのだ。「ワイキキビーチタワーは1983年築のコンドミニアムで、各フロアに4部屋しかありません。物件の所有者が利用滞在しない間は、アストンホテルや、ホノルルにある不動産管理会社が、所有者に代わって観光客などにホテルとして貸し出ししてくれます」(ハワイの不動産業関係者) 176万ドル、当時のレートにして約1億5千万円で購入した4002号室については、「2ベッドルーム、2バスルームの111平米ほどのお部屋です。築年数は古く、特別広くもありませんが、一歩外に出ればもうワイキキビーチという抜群のロケーションで現在でも人気があります。月々の管理費、固定資産税もかなり高額になりますので、豊富な資産がないと維持が難しい高級物件です。会社名義で購入する場合、社員の福利厚生に利用する目的も考えられると思います」(同)「あったことすら知らない」 しかし、さるローソンの元役員は首をかしげながら、「ハワイのコンドミニアムがウチの福利厚生、例えば保養所などの名目で使われている、というのは聞いたことがありません」 と、こう語る。「ローソンの社員が誰でも使えた保養所のような施設としては、親会社がダイエーだった時から富士山麓に持っていたゲストハウスくらい。そこは研修所で宿泊施設もあり、社員が申請を出せば使えて、ご飯もおいしいし、結構好きだという人もいたんです。しかし、新浪さんが社長になってから、“稼働率が悪いからやめちまえ”と言ってなくしてしまったのです」 社員の福利厚生ではないが、ローソンは1991年からハワイで「FC(フランチャイズ)再契約記念ツアー」なるものを実施している。FCの契約期間10年以上を満了し、新たに再契約したオーナーが招待の対象となる。このツアーの際、コンドミニアムが使われるのだろうか。 12年に「再契約記念ツアー」に夫婦で参加したローソンのFCオーナーは、「ローソンが持っているコンドミニアム? そんなものがあったことすら知らないですね。私が参加した時、オーナーたちが宿泊したのは1階にローソン店舗が入っているシェラトン・ワイキキホテルでした。新浪さんがどこに泊まっていたのかは分かりません」ファーストクラスでハワイへ? あるいはその際、新浪氏だけが高級コンドミニアムのペントハウスに宿泊していたということなのか。「ツアーの日程は3泊5日。参加者は400人以上いたでしょうか。関西国際空港に集合し、エコノミークラスでハワイに向かいました。関空に新浪社長はいなかったのですが、ファーストクラスで向かった、といううわさが流れていました」(同) ハワイでは基本的に自由行動。ローソンからガイドブックを渡され、別料金で提示されるオプショナルツアーを、希望者が各々選ぶスタイルだ。「2日目の夜には、クルーズ船『スターオブホノルル号』を借りて、オーナー全員と新浪社長、当時の玉塚元一副社長でフラダンスなどのディナーショーを見ました。新浪社長と絡んだのはその時だけ。彼は“10年間お疲れ様でした。また10年後に会いましょう”というようなことを言っていました」(同)オーナーたちに「プレッシャー」を ちなみに、FCオーナーたちの「新浪人気」は決して高くなかったという。人気低下のきっかけとなったのは、半年に1度程度の頻度で展示場などを借り切って開催され、棚割りや商品レイアウトなどを勉強する「商品説明会」だ。「元々商品説明会は息抜き的な側面が強く、ラフな格好でみんなで試食をしたり、お土産をもらったり、と楽しむ場所だった。それが新浪さんが社長になってからは“勉強会にそんな格好でくるとは何事か!”と怒ったり、それまでは子供も参加OKだったのがダメになったり、締め付けがかなり厳しくなりました。それ以降はお土産もなくなり、みんなスーツやジャケットで参加するようになった」(同) それだけではない。「新浪さんは覆面調査員を店に派遣して点数を付けさせ、一定レベルに満たないと契約を更新しない、ということをやっていた。点数の基準は品ぞろえ、接客、清掃など。しかし、立地や客層で当然、品ぞろえには差が出る。それを一律の基準で測り、場合によっては契約更新しないというのはひどい、とオーナー側から声が上がっていました」(同) 会議の場でローソン幹部らを怒鳴りつけたり、携帯電話を投げつけて骨折させたり、といった新浪氏の「パワハラ癖」については以前、本誌でお伝えした通り。どうやら、ローソンオーナーたちにも同様の「プレッシャー」をかけていたようである。“尻ぬぐいばかり…” ハワイにおける不動産物件の取引記録は、ホノルルの不動産登記所で取得することができる。確認すると、ワイキキビーチタワーとウォーターマーク、いずれのペントハウスを購入する際も、同じローソン幹部A氏のサインが記されている。「Aさんは元々、人事にいたのですが、新浪さんが社長の時代に社長秘書になりました。それから別の人と社長秘書を交代し、別の部署の所属になってからも一貫して『新浪案件』をいろいろとやってきた人、という認識です」(ローソン元社員) ワイキキビーチタワーの3304号室を売却し、新たにウォーターマークのペントハウスを購入した11年前後、ローソン元役員(前出)はA氏からこんな話を聞いたという。「当時、Aはあるプロジェクトの人事を担当していました。で、やらなければならないことが山積していたのですが、そんな中Aは“(新浪氏の案件で)ハワイに行くから”と言っていました。“大変なんですよ、尻ぬぐいばかりやらされて……”と愚痴のようなことも漏らしていました」保養施設だというが… ハワイの豪華施設は新浪氏や一部の関係者だけが使える物件だったのか。サントリーを通じて新浪氏に取材を申し込んだところ、以下の回答が寄せられた。「(ペントハウスなどは)ローソン社様の社員や役員とそのご家族が利用する保養施設として購入したと聞いております。新浪自身は過去に業務で使用したことはありますが、配偶者を伴ったプライベートな利用はございません。私的に使用する目的で購入したというのは事実ではございません」 なんと、一連の豪華施設は保養施設だというのだ。「ハワイに保養施設がある、というのはローソン社内では全く知られていません。何も知らない社員や役員が、どうやってその保養施設を利用するのでしょうか?」(前出・ローソン元役員) ウォーターマークは14年、新浪氏がローソン会長を退任する直前に、ワイキキビーチタワー3804号室は16年に、いずれも日本の企業に売却。4002号室は19年、ローソンの子会社「ローソンUSAハワイ」に売却されている。「どの物件のことかは分かりませんが、Aは“ようやくケリがついた。やっと売れた”と言っていました」(同) それらは新浪社長時代の負の遺産だったのか―。「週刊新潮」2023年10月26日号 掲載
抜けるような青空とたなびく雲が視界いっぱいに広がっている。眼下には、木々の緑、砂浜の白、海のエメラルドグリーンのコントラストが鮮やかなオーシャンビュー。ハワイ語で大型のバルコニーやベランダのことをラナイという。陽光ふりそそぐそのラナイからの眺望がとりわけ開放感抜群なのは、そこがペントハウスだからだ。
ハワイ・ワイキキの西側、アラワイ運河沿いにある高級コンドミニアム「ザ・ウォーターマーク」最上階の3804号室。ラナイとつながるリビングルームには8人がけのダイニングテーブルが設えられ、その奥のキッチン・カウンターは御影石、キャビネットはマホガニー製だ。2ベッドルーム、2バスルーム。全ての部屋からオーシャンビューが望める。ハワイ最大のショッピングセンター「アラモアナセンター」まで徒歩10分で、コンドミニアム内には、プールやサウナ、エクササイズルームなどの共用施設が充実している。
2011年、およそ庶民とは無縁のこの高級物件を購入したのは、日本の「ローソン」である。当時の社長は新浪剛史氏だ。購入価格は255万ドル。当時のレートで計算すると、約2億円となる。
ローソン元幹部によると、
「ローソンがハワイのコンドミニアムを購入したという事実を知っているのは社内でも一部のみ。それがペントハウスであることや、物件の場所や名前まで把握している人は新浪さんとその側近くらいです」
しかも、新浪氏が社長を務めていた時期にローソンがハワイで購入した物件は、このウォーターマークだけではない。
07年には、ワイキキビーチの真正面にある高級コンドミニアム「アストン ワイキキ ビーチ タワー」の3304号室、08年には同コンドミニアムの3804号室(定期借地権)、10年には同コンドミニアムのペントハウスである4002号室を購入している。
そして、ワイキキビーチタワーの3304号室を日本人に売却した3カ月後に、先のウォーターマークを新たに購入しているのだ。
「ワイキキビーチタワーは1983年築のコンドミニアムで、各フロアに4部屋しかありません。物件の所有者が利用滞在しない間は、アストンホテルや、ホノルルにある不動産管理会社が、所有者に代わって観光客などにホテルとして貸し出ししてくれます」(ハワイの不動産業関係者)
176万ドル、当時のレートにして約1億5千万円で購入した4002号室については、
「2ベッドルーム、2バスルームの111平米ほどのお部屋です。築年数は古く、特別広くもありませんが、一歩外に出ればもうワイキキビーチという抜群のロケーションで現在でも人気があります。月々の管理費、固定資産税もかなり高額になりますので、豊富な資産がないと維持が難しい高級物件です。会社名義で購入する場合、社員の福利厚生に利用する目的も考えられると思います」(同)
しかし、さるローソンの元役員は首をかしげながら、
「ハワイのコンドミニアムがウチの福利厚生、例えば保養所などの名目で使われている、というのは聞いたことがありません」
と、こう語る。
「ローソンの社員が誰でも使えた保養所のような施設としては、親会社がダイエーだった時から富士山麓に持っていたゲストハウスくらい。そこは研修所で宿泊施設もあり、社員が申請を出せば使えて、ご飯もおいしいし、結構好きだという人もいたんです。しかし、新浪さんが社長になってから、“稼働率が悪いからやめちまえ”と言ってなくしてしまったのです」
社員の福利厚生ではないが、ローソンは1991年からハワイで「FC(フランチャイズ)再契約記念ツアー」なるものを実施している。FCの契約期間10年以上を満了し、新たに再契約したオーナーが招待の対象となる。このツアーの際、コンドミニアムが使われるのだろうか。
12年に「再契約記念ツアー」に夫婦で参加したローソンのFCオーナーは、
「ローソンが持っているコンドミニアム? そんなものがあったことすら知らないですね。私が参加した時、オーナーたちが宿泊したのは1階にローソン店舗が入っているシェラトン・ワイキキホテルでした。新浪さんがどこに泊まっていたのかは分かりません」
あるいはその際、新浪氏だけが高級コンドミニアムのペントハウスに宿泊していたということなのか。
「ツアーの日程は3泊5日。参加者は400人以上いたでしょうか。関西国際空港に集合し、エコノミークラスでハワイに向かいました。関空に新浪社長はいなかったのですが、ファーストクラスで向かった、といううわさが流れていました」(同)
ハワイでは基本的に自由行動。ローソンからガイドブックを渡され、別料金で提示されるオプショナルツアーを、希望者が各々選ぶスタイルだ。
「2日目の夜には、クルーズ船『スターオブホノルル号』を借りて、オーナー全員と新浪社長、当時の玉塚元一副社長でフラダンスなどのディナーショーを見ました。新浪社長と絡んだのはその時だけ。彼は“10年間お疲れ様でした。また10年後に会いましょう”というようなことを言っていました」(同)
ちなみに、FCオーナーたちの「新浪人気」は決して高くなかったという。人気低下のきっかけとなったのは、半年に1度程度の頻度で展示場などを借り切って開催され、棚割りや商品レイアウトなどを勉強する「商品説明会」だ。
「元々商品説明会は息抜き的な側面が強く、ラフな格好でみんなで試食をしたり、お土産をもらったり、と楽しむ場所だった。それが新浪さんが社長になってからは“勉強会にそんな格好でくるとは何事か!”と怒ったり、それまでは子供も参加OKだったのがダメになったり、締め付けがかなり厳しくなりました。それ以降はお土産もなくなり、みんなスーツやジャケットで参加するようになった」(同)
それだけではない。
「新浪さんは覆面調査員を店に派遣して点数を付けさせ、一定レベルに満たないと契約を更新しない、ということをやっていた。点数の基準は品ぞろえ、接客、清掃など。しかし、立地や客層で当然、品ぞろえには差が出る。それを一律の基準で測り、場合によっては契約更新しないというのはひどい、とオーナー側から声が上がっていました」(同)
会議の場でローソン幹部らを怒鳴りつけたり、携帯電話を投げつけて骨折させたり、といった新浪氏の「パワハラ癖」については以前、本誌でお伝えした通り。どうやら、ローソンオーナーたちにも同様の「プレッシャー」をかけていたようである。
ハワイにおける不動産物件の取引記録は、ホノルルの不動産登記所で取得することができる。確認すると、ワイキキビーチタワーとウォーターマーク、いずれのペントハウスを購入する際も、同じローソン幹部A氏のサインが記されている。
「Aさんは元々、人事にいたのですが、新浪さんが社長の時代に社長秘書になりました。それから別の人と社長秘書を交代し、別の部署の所属になってからも一貫して『新浪案件』をいろいろとやってきた人、という認識です」(ローソン元社員)
ワイキキビーチタワーの3304号室を売却し、新たにウォーターマークのペントハウスを購入した11年前後、ローソン元役員(前出)はA氏からこんな話を聞いたという。
「当時、Aはあるプロジェクトの人事を担当していました。で、やらなければならないことが山積していたのですが、そんな中Aは“(新浪氏の案件で)ハワイに行くから”と言っていました。“大変なんですよ、尻ぬぐいばかりやらされて……”と愚痴のようなことも漏らしていました」
ハワイの豪華施設は新浪氏や一部の関係者だけが使える物件だったのか。サントリーを通じて新浪氏に取材を申し込んだところ、以下の回答が寄せられた。
「(ペントハウスなどは)ローソン社様の社員や役員とそのご家族が利用する保養施設として購入したと聞いております。新浪自身は過去に業務で使用したことはありますが、配偶者を伴ったプライベートな利用はございません。私的に使用する目的で購入したというのは事実ではございません」
なんと、一連の豪華施設は保養施設だというのだ。
「ハワイに保養施設がある、というのはローソン社内では全く知られていません。何も知らない社員や役員が、どうやってその保養施設を利用するのでしょうか?」(前出・ローソン元役員)
ウォーターマークは14年、新浪氏がローソン会長を退任する直前に、ワイキキビーチタワー3804号室は16年に、いずれも日本の企業に売却。4002号室は19年、ローソンの子会社「ローソンUSAハワイ」に売却されている。
「どの物件のことかは分かりませんが、Aは“ようやくケリがついた。やっと売れた”と言っていました」(同)
それらは新浪社長時代の負の遺産だったのか―。
「週刊新潮」2023年10月26日号 掲載