研ナオコの『夏をあきらめて』がヒットしたのが’82年。41年後のいま、日本人は夏よりも秋をあきらめなければならないかもしれない。終わらない夏の熱波が秋をも焼き尽くす。気象専門家の警告。
前編記事『日本から「春」と「秋」が無くなる…!? 気象学者が「今年は紅葉を見に行った方がいい」…と指摘する日本の気候の「ヤバすぎる変化」』より続く。
前編に続き、日本の気候に何が起こるのかを三重大学生物資源学部で気象学・気候力学を研究する立花義裕教授に予測してもらった。
8月 40度超えの日が連続する。
甲子園は灼熱のなかで行われる。砂浜は熱くて歩けなくなる。日本全国どこも暑いので、熊谷などの「暑さで有名な地域」が普通の地域になる。
9月 まったく暑さが収まらないうえ、スーパー台風が何度も上陸する。
十五夜の月は台風によって見られないか、熱帯夜のなか汗をかきながら見ることになる。外で運動などできないので、「運動の秋」という言葉が過去のものになる。
10月 蚊が羽化してブンブン飛び回る。
実は蚊は、暑さに弱い生き物。35度を超えると活動が鈍くなり、30度以下で活発になる。今後は35度以上が続く9月までは見かけず、10月になってやっとその姿を見ることになる。暖かい海が嫌いなサンマが獲れなくなるなど、秋の味覚も次々食べられなくなる。
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11月 汚い紅葉が一瞬だけ見られる。
「紅葉は、日中暖かく夜が寒いときれいに葉が染まっていくのですが、日中も夜も暑い状況だと、まだらな紅葉になる。少し葉が色づいてきたなと思った頃には、大雪が降って葉っぱが落ちるでしょう」(立花氏)
12~1月 大寒波が到来する。
「今年、北海道では雪が降りすぎて、除去した雪を置く場所がなくなりましたが、雪の降りやすい地域は大雪に、そうでないところでも雪害が起こるようになる。’20年12月に東京と新潟を結ぶ関越自動車道で大雪が降り、多くのドライバーが身動きできなくなる事態が発生しましたが、そんな混乱が日本全国で発生します」(同)
2月 桜が咲く。
北海道でもこの頃には暖かくなるので、毎年2月に開催される「さっぽろ雪まつり」がなくなる可能性がある。
3月 卒業式の前に桜が散り、「旅立ちと出会いの象徴」ではなくなる。
5月 セミが一斉に鳴き始める。
6~7月 長い長い梅雨が続く。外国人観光客も逃げ出すような灼熱の夏が始まる。
「こうした異常な変化さえ、入り口でしかありません。私の予測では、今後10年で完全に秋が消滅し、20年後にはスーパー台風、大雨、大雪などの異常気象が毎日起こるような状況に見舞われます。
なにも行動しないままでは、この異常気象の進行は速まるばかり。経済活動を完全に止めることはできないにしても、日々、一人一人が二酸化炭素の排出を減らす意識改革が必要です。
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それでも溶けた北極の氷はすぐに元には戻りません。当面、われわれは今年直面した以上の異常気象と付き合っていくしかないのです」(立花氏)
冬はつとめて。秋はあきらめて
清少納言が令和の日本を覗いたら、こんな感想を綴るかもしれない。「風流」などという言葉は消滅し、日本人は海に囲まれ逃げ場のない島国に生まれたことを恨むようになるだろう。灼熱と極寒のなかでは、そんなことを恨む頭の余裕さえないかもしれないが……。
さらに関連記事『「今年の夏の暑さは本当に“異常”だった」…国内外の機関が「観測史上最も暑かった夏」と発表、「温暖化の次に迫る『地球沸騰化』の予兆」がヤバすぎる』では、日本の気象に起きている恐るべき事実に迫っています。
週刊現代9月30日・10月7日合併号より