酒かすを加えた餌で養殖する福井県小浜市のブランドサバ「小浜よっぱらいサバ」が、今夏の猛暑などの影響で大量に死んだことがわかった。
養殖に使う天然のサバも不漁が続き、今後の出荷の見通しは立っていない。養殖業者は、天然サバに頼らない「完全養殖」の実用化も視野に、事業の継続を目指している。(浜崎春香)
小浜よっぱらいサバは2016年度、漁獲量が激減した地元産のサバの「復活」を目指して、市などが養殖を開始。19年からは漁業者らが作る「田烏水産」(小浜市)が担う。刺し身で食べても臭みがなく、ほどよい脂が特徴で、県内や首都圏、京都府内の飲食店などに流通している。
同社によると、養殖のいけすがある小浜市の釣姫(つるべ)漁港周辺では、今夏の記録的な猛暑のため、8月中旬以降の数週間は海水温が下がらず、31度を計測したこともあった。今年は約3600匹を育てたものの、同月下旬から1日あたり数十匹が死んでいるのが見つかり、これまでに計約3190匹が死んだ。昨年の約200匹を大幅に上回り、約500万円の損失になるとする。
例年は瀬戸内海でとれた天然サバを2~5月頃に入荷して養殖。高温に弱く、食事の代謝に伴う発熱などで死ぬ恐れがあるため、夏季は餌の量を抑える。今年は不漁で入荷が6月末にずれ込んでいた。大量死を受け、同社が死んだサバを解剖して調べたところ、消化器官の細さや肝臓の小ささが目立ったという。
横山拓也社長(55)は「餓死しているような状態だった。自然の海にいた頃から餌を十分に食べていなかったのでは」と推測する。
生き残った約400匹は、7月までに注文を受けた取引先へ納品した。天然サバの不漁が続き、今後の出荷のめどは立っていない。
同社などは、よっぱらいサバの安定供給のため、卵から稚魚を誕生させ、いけすなどで成長させて出荷に結びつける完全養殖の研究を進めている。
横山社長は「天然のサバに依存しない完全養殖の実用化を目指し、よっぱらいサバの養殖事業を続けたい」と話している。