〈殴ったり蹴ったりしないと報酬をあげない。皆さん、容赦なくやっちゃってください〉
警察によると、闇バイト強盗の指示役は実行犯へこう命じていたという。
10月3日、警視庁捜査1課は強盗殺人未遂と住居侵入の疑いで特殊詐欺グループ幹部の今村磨人(39)、藤田聖也(39)、渡辺優樹(39)の3容疑者を再逮捕した。3人は、今年1月に東京都狛江市の住宅で大塩衣与さん(当時90)が暴行を受け亡くなった事件で犯行を指示したとして、すでに逮捕されている。
「再逮捕容疑で、3人は実行役らと共謀し強盗に及んだとされます。’22年12月に広島市西区の時計販売店へ実行役が宅配業者を装って侵入し、50代の男性経営者を工具で殴り現金約250万円と時計など130点ほど(2439万円相当)を強奪。
経営者は現在も意識不明の重体です。今村容疑者らは、ワゴン車で現場へ向かう実行犯に対し〈殴ったり蹴ったりしないと報酬をあげない〉などと指示していたことがわかっています」(全国紙社会部記者)
今村容疑者ら指示役はフィリピンを拠点に暗躍していた。『FRIDAYデジタル』は7月2日配信の記事で、フィリピンから移送された今村容疑者の様子を詳しく報じている。再録して、実行犯を恐怖で支配する闇バイト強盗の戦慄の実態を振り返りたい(内容は一部修正しています)ーー。
移送された指示役の容疑者は、悪びれた様子をみせず後部座席に座っていた。
6月29日、警視庁捜査1課が強盗の疑いで逮捕したのがフィリピンから強制送還された今村容疑者だった。今村容疑者は全国で相次ぐ「闇バイト強盗」の指示役で「ルフィ」や「キム」を名乗っていたと思われる。
「今村容疑者は’22年5月に京都市左京区で起きた、高級腕時計41点(約6920万円相当)が奪われた事件に関与しているとみられます。今村容疑者は秘匿性の高い通信アプリ『テレグラム』などを使い、実行犯やレンタカー調達役ら13人に指示。換金されたカネの一部が、今村容疑者にわたっていたことが判明したんです。
換金役は、奪った高級時計41点のうち19点を都内の買い取り店へ約1350万円で売却。今村容疑者は’22年5月から3回に分け、自身名義の口座に送金させていいました。当時、今村容疑者が収監されていたフィリピンの入管施設近くで、全額が引き出されたこともわかっています」(全国紙社会部記者)
今村容疑者は、実行犯らに事細かく指示を出していたようだ。『読売新聞』(6月30日付)は、フィリピンの入管施設に収容されていた関係者が電話でこう言われたと報じている。
〈3分以内に終わらせろ。奪ったら早く逃げろ〉
〈店の真ん中のショーケースに目当ての品がある。時計が傷つかないようにしろ〉
前出の社会部記者が続ける。
「こうした指示から、今村容疑者ら指示役が犯行現場を事前に詳しく調べていたことがわかります。ショーケースの位置や高級時計の置き場所まで把握しているんです。おそらく〈3分以内〉という犯行時間も適当に指示したわけではなく、通報を受けた警察が駆けつけることから逆算して導き出した数字でしょう」
実行犯らの大半はSNS上の「闇バイト」に応募し、事件に手を染めていた。〈報酬1000万円のタタキ(強盗)〉〈日当100万円〉などの高額報酬にひかれ、名乗り出たと思われる。しかし実際は、それほど都合の良いバイトなどではない。恐怖と不安で支配されていたようだ。
「応募者は、顔写真と運転免許証など身分証明書の画像を送るよう求められていたようです。一旦画像を送ると〈逃げたらヒドい目に遭うぞ〉という趣旨のメッセージが。家族構成まで伝えていたため、親族にまで危害が加えられるのを恐れ簡単には抜けられなかったのでしょう。
実際『いきなり自宅に見知らぬ男が訪ねてきた』『監視されていると思った』と、供述している実行犯もいます。中には、報酬をまったく受けとれなかった実行犯もいるそうです」(同前)
「恐ろしい組織に入ってしまった」と後悔しても後の祭り。実行犯は「ルフィ」を恐れ、後戻りできなくなっていたようだ。