ビッグモーターによる保険金不正請求問題で、自動車整備工場への信頼が揺らいでいます。カーオーナーにとって、腕が良く、誠実なメカニックを見つけられれば万々歳ですが、中には、顧客の目が届かないのをいいことにお粗末な修理・整備をされたケースはあるようで。今回は、そんな愛車のメンテナンスにまつわる許せないエピソードです。 ハウスメーカー勤務で、独身を満喫している岸本さん(仮名・37歳)。趣味は愛車のアメ車を駆って休日にドライブをすることだそうです。
◆自慢の愛車は真っ赤なアメ車
学生の頃は自動車部に入っていたほど車好きな岸本さんは、20代の後半に念願の輸入車を手に入れたそうです。
「父親がもともとクルマ好きで、僕も幼い頃から国内外のクルマに興味がありました。小学校6年の時に、その頃は幕張メッセで行われていた東京モーターショーに連れて行ってもらった時に見た真っ赤なアメ車のスポーツカーに一目ぼれしたんですよ。『シボレー・コルベット・5.7』で、排気量が5700ccのモンスターエンジンを搭載していたんです」
まるで子供のような表情を浮かべ、当時の思い出を語ってくれた岸本さん。目の前で見た真っ赤なクルマが相当印象的だったようです。
◆愛車と一緒に転勤することに
「社会人になってから、何台か日本車の比較的スポーティーな車種に乗っていたんですが、どうしてもコルベットが忘れられず、ついに真っ赤なコルベットC7を手に入れたんです」。そんな岸本さんは、春の人事異動でとある地方都市への転勤を命ぜられたそうです。
「普段でも休みの日は愛車で遠出することがよくあったので、今度の赴任先で新しいドライブライフを楽しめると思うと、正直今回の異動はとてもウエルカムでした。ただ、現地で愛車コルベットのメンテナンスをお願いできそうな修理工場があるのか、少し不安でした」
岸本さんの愛車も、そろそろ10年選手の仲間入り間近だったので、赴任先の住居選びを後回しにするほど日々良さそうなメンテナンス工場を探したそうです。
◆近所の整備工場に車を預けた結果
「赴任前に時間もあったので、休日を使って新天地を訪問したんです。そしたら、運が良いことに転居先のすぐ近所に輸入車専門の整備工場があったので、なにかの縁だと思い、とりあえずそこに決めました」
そんなこんなで、岸本さんは無事に引っ越し作業を終え、挨拶がてらオイル交換などの簡単なメンテナンスをお願いしたところ、とんでもない事態になったそうです。
「その日、開店一番にコルベットを預けに行き、その後、前任の担当者と同行して取引先へ挨拶回りをしていたんです。夕方前には終わったので、その足で愛車を引き取りに行き、そのまま少しドライブをしていたのですが、なにかエンジンの調子というか吹き上がりが悪く、その日は早めに帰宅しました」
心配性な岸本さんは、オイル交換中の映像をドライブレコーダーに録画していたようで、帰宅後に念のため確認したそうです。すると、そこには信じられない映像と会話が映っていたのだとか。
◆ドライブレコーダーに映った信じられない悪行
「僕のコルベットC7は、ボンネットが一般的な開閉と逆なんですよ。つまり、普通ならボンネットが邪魔して作業風景は映らないのですが、このクルマの場合はバッチリ見えるんです。それで、その映像をしばらく見ていると『ちょっとオイルたんねえから、アレもってきてくれよ。前の軽自動車に使った残りのヤツ。大丈夫だって、少しくらい』という音声と映像が入っていました。一瞬耳を疑い、その日は怒りが込み上げてろくに睡眠もできませんでした」

「翌日、開店と同時に整備工場へ行きました。僕の表情を見た整備担当者は、おそらく何かを察知したんでしょうね。一瞬、奥の事務所に引っ込んで店長らしき人物と一緒に出てきました。スマホにダウンロードした動画の一部始終を見せてやったら、ただ平謝りでしたね」
◆第二の被害者を出さないために
怒りを通り越したからか、岸本さんは落ち着いた口調で、大切な愛車を元通りにさせるためのあらゆるメンテナンスをすぐに行うように伝えたといいます。
「正規のオイルに交換するのは一番あとで、ヘッドを開けさせてエンジンルーム内のバルブやピストンなどを直接洗浄するように言いました。もちろん、プラグやオイルフィルターなど、ほとんどエンジンのオーバーホールですよね。彼らは少しビビりながら、ひたすら首を縦に振っていました。第二の被害者を出さないためにも目一杯強い姿勢で臨みました」
整備工場側は、すぐに代車を用意し、時間をかけて完璧な整備を行うことを約束してくれたそうです。加えて、当面の定期メンテナンスも含め全て無償対応するとのことです。赴任早々出鼻をくじかれた岸本さん。工場選びの大切さをあらためて感じたそうです。
<TEXT/ベルクちゃん>