創業者のジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、10月2日に行われたジャニーズ事務所の記者会見において、質疑応答の場面で指名から排除する「NGリスト」が作成されていたことについてNHKが報じた。これを受け、民放各局も後追いで報じ、事務所側はコメントを発表するという事態になっている。
【相関図をみる】そもそも“解体”されるジャニーズってどういう組織だったの? 影響力の大きさが分かる、驚異的な“紅白出場回数”一覧も 会見にはジャニーズ事務所の東山紀之社長と井ノ原快彦副社長、顧問弁護士らが出席。事務所は解体して廃業、性被害の補償を担う「スマイルアップ」社を設立、タレントのマネジメントに関しては新たな会社を設立し、各タレントとはエージェント契約を結ぶことなどを説明した。

再生を期すジャニーズ事務所の会見 その後の質疑応答は「1社1問」と限定され、司会者が挙手をした記者を指名する形で行われた。ジャニーズ事務所は会見の運営を外資系のコンサルタント会社に委託しており、この会社が手を挙げても指名しない記者やフリージャーナリストらのリストを会場に持ち込んでいたという。名前はもちろん写真付きだったというから、手が込んだものと言えるだろうか。「リストには、東京新聞の望月衣塑子記者やジャーナリストの鈴木エイト氏らが記載されていたようです。ただ、記載されていたから指名されなかったわけではなく、質問できた人もいましたね」 と、NHK関係者。円滑な進行を狙ったか ジャニーズ事務所側はこのリストについて、《リストは誰も見ていない。会見の前々日の会議にコンサル会社が媒体リストを持ってきてそこに「NG」とあったので、井ノ原(副社長)が「これはどういう意味か、絶対に当てなきゃダメだ」と指摘した。コンサル会社は「後半に当てる」と回答した》などとし、NGリストへの関与を全面的に否定している。「前回の9月7日の会見では時間無制限で行われた結果、4時間を超え紛糾した印象を与えたところもありました。それを踏まえ、円滑な進行をするにはどうしたらよいのかについてコンサル会社側で検討がなされた末の苦肉の策がリスト作りだったのかもしれません。が、ジャニーズ側から“絶対当てるように”と言明されなくても、そうすべきだったでしょう。仮にどうしてもNGリストを作りたかったとしても、6人くらいが対象ならリストなどにしなければよかったようにも感じました。そもそも、それを会見場に持ち込んで見えるように持ち歩くスタッフがいるのが信じられないくらい不用意なことです。危機管理を期待されての依頼だったでしょうに、逆効果ですよ。性加害について丁寧に謝罪し、真摯に対応していくという事務所側の姿勢に疑問符がつきかねませんからね」(同)加害を受けたというご記憶が「NG」対象となっていたとされる望月記者は前回の会見で、数分にわたって持論を展開したうえで、東山紀之新社長に対し、《話していただきたいのは、東山さん自身がデビューする前にですね、ジャニーさんから、加害的なものを、他のメンバーを含めて、加害を受けたというご記憶があるのかないのか》と尋ねていた。性被害の告白を半ば強要するものとして相当な批判を浴びた。セカンドレイプまがいだ、というのだ。 そして今回は会見の終了が告げられた後、東山社長に対して過去の性加害の事実について尋ねるひと幕があった。 望月氏が「事実を向き合ったうえで新会社のトップに就任すべきではないでしょうか?」と問うと、東山社長は「僕は性加害はしていませんので」との回答。さらに望月氏が「性加害をしていないというのを貫くんですね」と重ねると、「貫くというか、本当のことを言ってるんです」と東山社長は返した。「NGリストが存在したということで、そこにリストアップされていた望月氏らの言動に同情が集まる部分もあるかもしれません。が、過去2回の振舞いを見たりして感じたのは、会見に対する考え方を改めて吟味した方がよいのではないかという点です」 と話すのは、民放テレビ局の元幹部。企業や著名人のスキャンダル会見などに関与してきた経験を持つ。会見をエンタメと見なし「海外は別として、一般的に国内で不祥事を犯した企業やスキャンダルに巻き込まれた著名人が会見をする際、いつ・どこで・どんな風にやるのかの枠組みを決めるのは企業や著名人側です。ルールというほど厳格なものではないにしても、それを守ったうえでのやり取りをしなければ運営に支障をきたすことになります」(同) 今回でいえば「時間制限を設けるほうがおかしい」といった意見もあるが、「時間無制限」は現実的ではないのは間違いない。望月記者にマイクを握らせて1時間与えれば、他の多くの記者からは不満が出る。「そもそも、民間企業ですから、会見をする義務は存在しないのです。書面のやり取りだけで済ませることもできる。それでも会見をする意図とは、贖罪なり説明責任を果たすなりして再出発していきたいという思いを伝えることでしょう。ある意味でこれも企業にとってはPR活動なのです。 一方で、メディア側と言うか特に民放側は会見を中継したうえで番組ごとにアナウンサーや記者を派遣し、彼らに質問させ、その箇所を番組で使うわけですね。会見をショーやエンタメだと見なし、コンテンツ化している」(同)“糾弾”調が色濃く「もちろん面白い展開があったり、丁々発止のやり取りやそれこそ怒号が飛び交っていたりする映像があった方が盛り上がる。あるいは真実を隠しているはずだから徹底的に糾弾し、ボロが出ることを期待したり……というものもあるかもしれません。望月氏らのスタンスにはこの“糾弾”調のものが色濃くあったように感じました」(同) ざっくりと言えば、追及をうまく切り抜け好感度を上げたい側と、つるし上げてサンドバッグにしたい側があり、もともと両者が折り合うことは難しいということなのだろう。「会見をするか否かが主催者側の判断である以上、ある程度、彼らが敷いたレールのうえで闘わざるを得ない。よほどのスクープがあって、それを会見でぶつけるなら別です。しかし、仮にそうであるなら個別に取材を依頼すればよいだけのこと。わざわざ会見でスクープを披露する必要はありません。見る限り、望月氏をはじめとして、質問できなかったことに不平を言っている記者たちの中で、独自のネタを持ってぶつけるような取材をしていた方はいないのではないでしょうか」(同)メディアのコンテンツのための時間「ジャーナリストの鈴木さんにしても、統一教会に詳しいジャーナリストのはず。彼らに時間を与えたところで、週刊文春その他メディアの報じたことをぶつけたり、自分の意見を言ったりするだけになるのでは。今回公表すべき内容は東山社長らがすでに説明してしまっているはずですから、繰り返しになりますが、質疑応答部分は基本的に質問する側、メディアのコンテンツのための時間という面が強いのです」(同) たしかに望月記者の今回の質問も「すべきではないか」という言葉からもわかる通り、ファクトの確認などでは無い。会社側の説明の矛盾や不足部分を問うものでも無い。「こうすべきなのに、しないのはおかしいではないか」という意見表明である。「今回、仮に時間無制限で質疑応答をしたとしても、疑問は残ったとか説明責任が果たせていないとか反省が足りないと言われていたでしょう。現実の運営を考えれば、『1社1問』という決まり事に問題はなかったと思います。これから事務所側が真摯に向き合うべきは報道陣に対してではなく被害者側。ただ、その姿勢にすごく大きな疑問を生じさせてしまったという意味で、今回のNGリストはとてもまずかったですね」(同) 事務所はリスト作りへの関与を全否定しているが、再生をアピールするにあたって水をさされたのは間違いないだろう。デイリー新潮編集部
会見にはジャニーズ事務所の東山紀之社長と井ノ原快彦副社長、顧問弁護士らが出席。事務所は解体して廃業、性被害の補償を担う「スマイルアップ」社を設立、タレントのマネジメントに関しては新たな会社を設立し、各タレントとはエージェント契約を結ぶことなどを説明した。
その後の質疑応答は「1社1問」と限定され、司会者が挙手をした記者を指名する形で行われた。ジャニーズ事務所は会見の運営を外資系のコンサルタント会社に委託しており、この会社が手を挙げても指名しない記者やフリージャーナリストらのリストを会場に持ち込んでいたという。名前はもちろん写真付きだったというから、手が込んだものと言えるだろうか。
「リストには、東京新聞の望月衣塑子記者やジャーナリストの鈴木エイト氏らが記載されていたようです。ただ、記載されていたから指名されなかったわけではなく、質問できた人もいましたね」
と、NHK関係者。
ジャニーズ事務所側はこのリストについて、《リストは誰も見ていない。会見の前々日の会議にコンサル会社が媒体リストを持ってきてそこに「NG」とあったので、井ノ原(副社長)が「これはどういう意味か、絶対に当てなきゃダメだ」と指摘した。コンサル会社は「後半に当てる」と回答した》などとし、NGリストへの関与を全面的に否定している。
「前回の9月7日の会見では時間無制限で行われた結果、4時間を超え紛糾した印象を与えたところもありました。それを踏まえ、円滑な進行をするにはどうしたらよいのかについてコンサル会社側で検討がなされた末の苦肉の策がリスト作りだったのかもしれません。が、ジャニーズ側から“絶対当てるように”と言明されなくても、そうすべきだったでしょう。仮にどうしてもNGリストを作りたかったとしても、6人くらいが対象ならリストなどにしなければよかったようにも感じました。そもそも、それを会見場に持ち込んで見えるように持ち歩くスタッフがいるのが信じられないくらい不用意なことです。危機管理を期待されての依頼だったでしょうに、逆効果ですよ。性加害について丁寧に謝罪し、真摯に対応していくという事務所側の姿勢に疑問符がつきかねませんからね」(同)
「NG」対象となっていたとされる望月記者は前回の会見で、数分にわたって持論を展開したうえで、東山紀之新社長に対し、《話していただきたいのは、東山さん自身がデビューする前にですね、ジャニーさんから、加害的なものを、他のメンバーを含めて、加害を受けたというご記憶があるのかないのか》と尋ねていた。性被害の告白を半ば強要するものとして相当な批判を浴びた。セカンドレイプまがいだ、というのだ。
そして今回は会見の終了が告げられた後、東山社長に対して過去の性加害の事実について尋ねるひと幕があった。
望月氏が「事実を向き合ったうえで新会社のトップに就任すべきではないでしょうか?」と問うと、東山社長は「僕は性加害はしていませんので」との回答。さらに望月氏が「性加害をしていないというのを貫くんですね」と重ねると、「貫くというか、本当のことを言ってるんです」と東山社長は返した。
「NGリストが存在したということで、そこにリストアップされていた望月氏らの言動に同情が集まる部分もあるかもしれません。が、過去2回の振舞いを見たりして感じたのは、会見に対する考え方を改めて吟味した方がよいのではないかという点です」
と話すのは、民放テレビ局の元幹部。企業や著名人のスキャンダル会見などに関与してきた経験を持つ。
「海外は別として、一般的に国内で不祥事を犯した企業やスキャンダルに巻き込まれた著名人が会見をする際、いつ・どこで・どんな風にやるのかの枠組みを決めるのは企業や著名人側です。ルールというほど厳格なものではないにしても、それを守ったうえでのやり取りをしなければ運営に支障をきたすことになります」(同)
今回でいえば「時間制限を設けるほうがおかしい」といった意見もあるが、「時間無制限」は現実的ではないのは間違いない。望月記者にマイクを握らせて1時間与えれば、他の多くの記者からは不満が出る。
「そもそも、民間企業ですから、会見をする義務は存在しないのです。書面のやり取りだけで済ませることもできる。それでも会見をする意図とは、贖罪なり説明責任を果たすなりして再出発していきたいという思いを伝えることでしょう。ある意味でこれも企業にとってはPR活動なのです。
一方で、メディア側と言うか特に民放側は会見を中継したうえで番組ごとにアナウンサーや記者を派遣し、彼らに質問させ、その箇所を番組で使うわけですね。会見をショーやエンタメだと見なし、コンテンツ化している」(同)
「もちろん面白い展開があったり、丁々発止のやり取りやそれこそ怒号が飛び交っていたりする映像があった方が盛り上がる。あるいは真実を隠しているはずだから徹底的に糾弾し、ボロが出ることを期待したり……というものもあるかもしれません。望月氏らのスタンスにはこの“糾弾”調のものが色濃くあったように感じました」(同)
ざっくりと言えば、追及をうまく切り抜け好感度を上げたい側と、つるし上げてサンドバッグにしたい側があり、もともと両者が折り合うことは難しいということなのだろう。「会見をするか否かが主催者側の判断である以上、ある程度、彼らが敷いたレールのうえで闘わざるを得ない。よほどのスクープがあって、それを会見でぶつけるなら別です。しかし、仮にそうであるなら個別に取材を依頼すればよいだけのこと。わざわざ会見でスクープを披露する必要はありません。見る限り、望月氏をはじめとして、質問できなかったことに不平を言っている記者たちの中で、独自のネタを持ってぶつけるような取材をしていた方はいないのではないでしょうか」(同)
「ジャーナリストの鈴木さんにしても、統一教会に詳しいジャーナリストのはず。彼らに時間を与えたところで、週刊文春その他メディアの報じたことをぶつけたり、自分の意見を言ったりするだけになるのでは。今回公表すべき内容は東山社長らがすでに説明してしまっているはずですから、繰り返しになりますが、質疑応答部分は基本的に質問する側、メディアのコンテンツのための時間という面が強いのです」(同)
たしかに望月記者の今回の質問も「すべきではないか」という言葉からもわかる通り、ファクトの確認などでは無い。会社側の説明の矛盾や不足部分を問うものでも無い。「こうすべきなのに、しないのはおかしいではないか」という意見表明である。
「今回、仮に時間無制限で質疑応答をしたとしても、疑問は残ったとか説明責任が果たせていないとか反省が足りないと言われていたでしょう。現実の運営を考えれば、『1社1問』という決まり事に問題はなかったと思います。これから事務所側が真摯に向き合うべきは報道陣に対してではなく被害者側。ただ、その姿勢にすごく大きな疑問を生じさせてしまったという意味で、今回のNGリストはとてもまずかったですね」(同)
事務所はリスト作りへの関与を全否定しているが、再生をアピールするにあたって水をさされたのは間違いないだろう。
デイリー新潮編集部