2019年に離婚調停のために東京家庭裁判所を訪れた妻の首を刺して、殺害した罪などに問われているアメリカ人の夫の裁判で、検察側は懲役22年を求刑しました。一方、夫側は「心神喪失の状態だった」と無罪を主張しています。
ウィルソン・ジェイコブ被告(37)は、2019年3月、東京・千代田区にある東京家庭裁判所の玄関で、離婚調停のために訪れた妻の香子さん(当時31)の首をナイフで切りつけて殺害した罪などに問われています。
これまでの裁判で、ウィルソン被告側は「当時、統合失調症の妄想や幻聴による強い影響を受けていて心神喪失により無罪だ」と主張し、ウィルソン被告自身は法廷で供述を拒否しています。
きょうの裁判で、検察側は「被告に完全責任能力はあった」としたうえで、「調停の1時間前から待ち伏せして、被害者が弁護士と別行動をした一瞬の隙を狙った計画的な犯行だ」と指摘。「幼い子どもを残して、この世を去ることになった被害者の無念さは言うまでもなく、子どもへの影響も極めて大きい」「被告人には謝罪の言葉も反省の態度も見られない」として懲役22年を求刑しました。
一方、弁護側は改めて無罪を主張。
ウィルソン被告は最終意見陳述で、「何も言いたくありません」と英語で話しました。
求刑を前に、亡くなった香子さんの両親が法廷で意見陳述を行いました。
父親は、「娘は体が小さく華奢だが何ごとにも明るく前向きな子でした」「法廷で被告の父親の『釈放されたら面倒をみる』という証言を聞いたが、私は娘の未来に寄り添い支えてやることができない。なんという不条理、無念でなりません」と述べました。
また、母親は、「娘は孫を守りたかった、ただそれだけなのです。娘を殺した被告を恨んでおらず、娘を救えなかった自分自身を恨んでいます」「被告には犯した罪に向き合ってほしいと思います」と語りました。
判決は今月20日に言い渡されます。