警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、最近の暴力団の葬儀事情について。
【写真】1976年、暴力団会長の葬儀は物々しい雰囲気に * * * 9月14日の午前中、新宿区にある高田馬場駅周辺が騒然となったと報じられた(『SmartFLASH』9月16日公開)。理由は高田馬場駅近くの寺院で、住吉会傘下の幸平一家理事長で二代目大昇會の藤本政弘会長の葬儀が執り行われたから。早稲田通りには暴力団関係者の黒塗りの車がずらりと並んだらしい。

幸平一家は新宿歌舞伎町で勢力を伸ばしている武闘派組織、その傘下である大昇會も同じく歌舞伎町に本部を置く暴力団組織だ。藤本氏の葬儀は大々的に執り行われ、住吉会以外に山口組、稲川会など全国各地から弔問客が訪れ、参列した団体は30を超えていたという。 ヤクザにとって冠婚葬祭は大事な義理事であり、関係者となれば絶対に欠かすことはできない。組内の幹部でも亡くなれば、立派な葬儀を出して、組員みんなで送り出し……と思うものだが現実は違う。「そんなのは過去の話。今は死んでも葬式なんて出せないのが普通」と語るのは、都内を拠点に活動する暴力団幹部K氏だ。前述した大昇會のケースは例外だという。葬儀店や葬祭業者は、基本的に暴力団の葬儀を受注しなくなった。つまり暴力団排除条例、暴力団対策法の施行以降、暴力団が葬儀を執り行うというのは難しくなった。ホテルやレストランが反社会的組織の集まりやパーティーを受けず、ゴルフ場が彼らが主催するコンペを受けつけなくなったのと同じだ。 だがもう1つ、葬祭業者が暴力団の葬儀を受けない理由がある。それは葬儀の参列者が持ってくる香典だ。例えばヤクザ組織の組長が亡くなると、葬儀に際して参列者たちは当然、香典を持ってくる。前述した大昇會のように、関係団体や他組織から続々と組長や幹部たちが集まってくれば、そこで渡される香典もかなりの額になる。それも香典は課税対象外。香典として集まった金が暴力団組織の資金になるかもしれない。 暴排条例では暴力団の活動を助長する行為や取引、利益供与などを禁じている。集まった香典が暴力団の資金となれば、暴排条例に抵触する可能性があるため、葬祭業者は暴力団組織としての葬儀は受けなくなった。直葬するしかない こうなると困るのは暴力団組織だ。K氏も関係団体の組長が亡くなった時、この問題にぶち当たった。病院で亡くなった組長の遺体を運びだせる場所がなかったのである。「組織としての葬儀は無理だとわかっていたので、家族葬扱いでやってくれと頼んでいたらしい。それで受けた葬儀屋が葬儀場に遺体を運び、安置しておく手はずだった、だが直前になって葬儀屋が断ってきたと関係団体の組員から連絡があった。葬儀を出すのは諦めて、直葬するしかないと話した」とK氏。直葬とは通夜や告別式を行わず、火葬のみを行う葬儀のことだ。「火葬場は暴力団組員かどうか関係なく、葬儀を受け付ける。日本では火葬しなければ埋葬できないからね。だけど火葬場が予想以上に混んでいて」(K氏)。ここ数年、K氏が言うように火葬場はどこも混んでいる。亡くなったからといって、すぐに火葬できず、1週間ほど待つこともざらになった。「直葬することになったが火葬場は順番待ち。順番がくるまで、遺体を安置しておく場所を探さなくてはならなくなったが、これが大変だった」とK氏は話す。 いくらドライアイスを詰めたといっても、時間が経てば遺体は腐ってくる。葬儀場などでは遺体を保存するための設備もあるだろうが、前述のような事情で葬儀場には頼めない。だからといって、事務所に遺体を搬入し、置いておくこともできない。困ったK氏は古くから懇意にしていた多目的ホールや貸し会議室を経営する知人に連絡、空いていた会議室に数日、置かせてもらうことにしたという。そうして組長は無事に荼毘にふされた。「葬儀が出せないのはまだしも、火葬までの間、どこに遺体を置いておけばいいのか。うかうか死んでもいられない」(K氏)というのが、今、暴力団組員が置かれている現実らしい。
* * * 9月14日の午前中、新宿区にある高田馬場駅周辺が騒然となったと報じられた(『SmartFLASH』9月16日公開)。理由は高田馬場駅近くの寺院で、住吉会傘下の幸平一家理事長で二代目大昇會の藤本政弘会長の葬儀が執り行われたから。早稲田通りには暴力団関係者の黒塗りの車がずらりと並んだらしい。
幸平一家は新宿歌舞伎町で勢力を伸ばしている武闘派組織、その傘下である大昇會も同じく歌舞伎町に本部を置く暴力団組織だ。藤本氏の葬儀は大々的に執り行われ、住吉会以外に山口組、稲川会など全国各地から弔問客が訪れ、参列した団体は30を超えていたという。
ヤクザにとって冠婚葬祭は大事な義理事であり、関係者となれば絶対に欠かすことはできない。組内の幹部でも亡くなれば、立派な葬儀を出して、組員みんなで送り出し……と思うものだが現実は違う。
「そんなのは過去の話。今は死んでも葬式なんて出せないのが普通」と語るのは、都内を拠点に活動する暴力団幹部K氏だ。前述した大昇會のケースは例外だという。葬儀店や葬祭業者は、基本的に暴力団の葬儀を受注しなくなった。つまり暴力団排除条例、暴力団対策法の施行以降、暴力団が葬儀を執り行うというのは難しくなった。ホテルやレストランが反社会的組織の集まりやパーティーを受けず、ゴルフ場が彼らが主催するコンペを受けつけなくなったのと同じだ。
だがもう1つ、葬祭業者が暴力団の葬儀を受けない理由がある。それは葬儀の参列者が持ってくる香典だ。例えばヤクザ組織の組長が亡くなると、葬儀に際して参列者たちは当然、香典を持ってくる。前述した大昇會のように、関係団体や他組織から続々と組長や幹部たちが集まってくれば、そこで渡される香典もかなりの額になる。それも香典は課税対象外。香典として集まった金が暴力団組織の資金になるかもしれない。
暴排条例では暴力団の活動を助長する行為や取引、利益供与などを禁じている。集まった香典が暴力団の資金となれば、暴排条例に抵触する可能性があるため、葬祭業者は暴力団組織としての葬儀は受けなくなった。
こうなると困るのは暴力団組織だ。K氏も関係団体の組長が亡くなった時、この問題にぶち当たった。病院で亡くなった組長の遺体を運びだせる場所がなかったのである。「組織としての葬儀は無理だとわかっていたので、家族葬扱いでやってくれと頼んでいたらしい。それで受けた葬儀屋が葬儀場に遺体を運び、安置しておく手はずだった、だが直前になって葬儀屋が断ってきたと関係団体の組員から連絡があった。葬儀を出すのは諦めて、直葬するしかないと話した」とK氏。直葬とは通夜や告別式を行わず、火葬のみを行う葬儀のことだ。
「火葬場は暴力団組員かどうか関係なく、葬儀を受け付ける。日本では火葬しなければ埋葬できないからね。だけど火葬場が予想以上に混んでいて」(K氏)。ここ数年、K氏が言うように火葬場はどこも混んでいる。亡くなったからといって、すぐに火葬できず、1週間ほど待つこともざらになった。「直葬することになったが火葬場は順番待ち。順番がくるまで、遺体を安置しておく場所を探さなくてはならなくなったが、これが大変だった」とK氏は話す。
いくらドライアイスを詰めたといっても、時間が経てば遺体は腐ってくる。葬儀場などでは遺体を保存するための設備もあるだろうが、前述のような事情で葬儀場には頼めない。だからといって、事務所に遺体を搬入し、置いておくこともできない。困ったK氏は古くから懇意にしていた多目的ホールや貸し会議室を経営する知人に連絡、空いていた会議室に数日、置かせてもらうことにしたという。そうして組長は無事に荼毘にふされた。
「葬儀が出せないのはまだしも、火葬までの間、どこに遺体を置いておけばいいのか。うかうか死んでもいられない」(K氏)というのが、今、暴力団組員が置かれている現実らしい。