同じ意味の言葉を反復的につなげて遊ぶ「小泉進次郎構文」がSNSですっかり定着し、本人が言っていないことまで「語録」として楽しまれている小泉進次郎氏が、9月初旬に開かれた福島県南相馬市のサーフィン教室にみずから参加し、その後は地元の魚介を試食するなど、処理水海洋放出にともなう風評被害の拡大防止に文字どおり「身体を張って」活動したことが大きな話題になっていた。
このニュース映像はYouTubeにも上がっているので、ぜひ小泉氏の様子を見てもらいたいのだが、私はこれを見たときに、彼がなぜ地元で圧倒的な支持を受けているのかを理解することができた。それは「小泉純也の孫・小泉純一郎の子だから」という七光り的な要素だけではなく、彼自身がそもそも周囲の人を惹きつけて、支持にせよ不支持にせよなにかしらの態度を表明せずにはいられない「訴求力」を持つ人物であるからだ。

Photo by gettyimages先の総裁選において、小泉氏は岸田文雄氏に票を投じなかった(河野太郎氏を支持した)。それもあって現在は特に大臣やその関連の要職が与えられているわけでもなく、また党内のポジションで重用されていることもない、ようするに干されている状態となっている。しかし彼はそれでも少しも拗ねたりふてくされたりする様子はなく、いたって変わらない様子でいつもの「小泉進次郎」をまっすぐにやっており、現在は地元の自民党神奈川県連の運営に注力している。そこは素直に気骨のある政治家であると評価するべきだろう。実は高度な「進次郎構文」小泉氏の「南相馬サーフィン」が大きな話題になるなか、SNSでは左派文化人としても知られるお笑いタレントのぜんじろう氏が、SNSで愛される「小泉進次郎構文」を使って小泉氏を揶揄しようとしたところ、うまくその波に乗ることができずに炎上してしまうという事件がひそかに発生していたことも波紋を呼んでいた。【小泉進次郎氏がサーフィン】せっかく素晴らしいパフォーマンスしたんですから、ポエム小泉の新しい素晴らしいセクシーなポエム聞きたかったです。「私はサーフィンをしてると思います。だからこそ、波に乗っているということは、サーフィンしていると思います」(笑)https://t.co/wmhM0feQ3K- ぜんじろう (@zenzenjiro) September 4, 2023ぜんじろう氏の発言によって、図らずも小泉進次郎氏がメディアの取材などでしばしば発するトートロジー的な発言が、じつは短絡思考や軽慮浅謀によるものではなく、それなりに計算された高度なエクスキューズであったことが逆説的に示される形になったのは興味深い。実際のところ、小泉氏があやつる「小泉進次郎節」には以下の特徴がある。(1)それがサービス的なトークであることが相手に理解しやすいこと(2)ニュース番組の編集に耐えられる長さであること(3)マスコミにどこを切り取られても意図しないニュアンスにはなりにくいこと(4)お茶の間の人には重要なことを語っているように聞こえる口調やリズムであることこれら(1)~(4)をつねに満たした、政治的にはきわめて高度なプレゼンテーションである。もし素人が政治の土俵で(1)~(4)の要件を満たしたトークをやろうとしても、おそらく小泉進次郎氏より巧みに行うのは無理である。単なるトートロジーの言葉遊びである「小泉進次郎構文」はあくまでSNS上のネタでしかなく、小泉氏が実際に政治家として現場でやっていることは、それよりはるかに高度で熟達した技術に基づいた「話術」である。議員でいちばん「おもしろい」私はかねてより小泉氏のことを総理大臣になる器であるとそこかしこで言明している(断っておくが、だからといって現時点で彼のことを支持しているわけではない)。先述したとおり、いまは干されている状態にあるのだが、それでも彼はこのまま任期を重ねていけばいくほど国民の支持を集めていき、党内でも多くの味方をつけて権力の中枢に向かっていくことになるだろう。なぜかというと、安倍晋三が突如としていなくなった今、小泉進次郎氏が自民党内で(いや、もっといえば現職国会議員のなかでさえ)いちばん「おもしろい」からである。ここでいう「おもしろい」とは、楽しいとか可笑しいとかそういう意味ではなくて、厳密にいうならば「人を惹きつける」とか「華がある」とか「憎めない」とか「いちいち人が立ち止まってその動向を見たくなる」ということだ。彼はSNSでは「無能」「なにか言っているようでなにも言っていない人」「低学歴」などと批判されがちであるが、しかし地元の横須賀ではそうではない。「代々続く名家の生まれであるにもかかわらず、いつも気取らずに実直で冗談好きで、いつも親身になって仕事をしてくれるハンサムでチャーミングな兄(あん)ちゃん」という評判を得ている。もちろん「仕事ができる」との評価も高い。 そしてここで彼をもっとも差別化しているのは「名家の生まれ」でもなければ「親身に仕事をしてくれる」でもなく「チャーミングである」ことだ。現代の政治家には世襲の名家が多いのは当たり前で、熱心に仕事をするから票を集めて当選している。ここまでは国会議員ともなれば、ほぼ全員がクリアしている要件といっても過言ではない。しかし小泉氏は「親しみやすさ・チャーミングさ・おもしろさ」では、その辺の政治家とは比較にならないほど抜きんでている。そもそも子どもたちとサーフィンを楽しんで、ウェットスーツのまま海産物を食べて「うまい!」というアクティビティをしている姿を容易に想像できる現職政治家が小泉進次郎以外にいるかと言われれば、正直なところNOと言わざるを得ないだろう。彼は国会議員でありながら、インテリ的なスノビズムを感じない青年らしい「陽キャ」「スポーツマン」的な雰囲気を持っているただひとりの存在なのだ。たとえば年が近い国会議員には日本共産党の山添拓氏がいるが、山添氏がそのようなアクティビティによって「画になる」かといわれれば、まずないだろう。通常の国会議員がやったら「何やってんだコイツ」となりそうなことでも「おもろい」にしてしまう力があり、それこそが大衆に支持される強大な権力者としてもっとも重要な資質のひとつなのである。それは安倍晋三が女子高生に「可愛い」と言われていたり、後輩議員がもってきたお土産の果物を食べて毎回「ジューシー」というのが定番のギャグになっていたのと近い。彼の父である小泉純一郎は大衆のハートをがっちり掴むふるまいに関しては天賦の才を持っていた。小泉進次郎氏はその才能を受け継ぎながらも、それを「SNS時代」にフィットした形でさらにアップデートしている。「世代間闘争」という追い風2025年以降の社会問題の中核部は「社会保障制度の持続可能性」に移っていく。毎年100兆円を超える医療費や介護費の負担が、ますます減少していく現役世代・将来世代に重くのしかかる。この問題からだれも目を逸らすことができなくなる。2025年以降は、「高齢者向け政策」を標榜する自民党内のベテラン議員たちがこれまでのような輝きを失ってしまい、若手議員に世代交代が生じるチャンスが十分に生じる。政治家も支持者も比較的若手が中心となっている維新のような第三勢力への対応を余儀なくされる形で、自民党も今以上には「若者推し」に傾かざるを得なくなる。ご存知のとおり、小泉氏はコテコテの保守派というわけではなく、どちらかといえば自民党内では若手に多いネオリベラリズム派の政治家である。彼のこれまでの「脱炭素社会推し」や「健康保険制度の見直し(≒健康ゴールド免許構想)」などは、大きな賛否を招いていたし、小泉氏の真意をつかみかねるとの声も多くあった。しかしながら、彼のそうした先進的なネオリベラリズムのスタンスは、若年・現役・将来世代の利益を代弁するある種の「世代間闘争」の補助線を引けば理解しやすい。彼が「子育てしやすい社会」の理解促進に並々ならぬ情熱を注いでいることも偶然ではない(もっとも、党内では現在は向かい風の強い「現役世代・将来世代推し」の政治家だからこそ、なおのこと彼はいま干されているのだが)。つまりなにが言いたいかというと、これからの日本の経済状況や財政状況や少子高齢化や社会保障制度の状況を考慮すると、彼のこれまでの政治的スタンスには図らずも「追い風」が吹く可能性が高いということだ。これまでは「言っていることには同意できないが、しかし発言や行動が面白くて魅力的な人物だし、これからの政治には必要だ」と言われていたのが、時代の変化にともなう世の中の問題意識や関心領域の変化にともなって「言っていることも正論だし、人間的にも魅力的だ」という方向に評価が激変する可能性が大いにある。現役世代や将来世代をエンパワメントする政策立案者として時代の追い風を受け、なにより大衆社会・SNS社会において「チャーミング」であることも兼ね備えている――以上のことから、私は小泉進次郎氏が未来の総理大臣になることを強く確信しているし、もし総理大臣になったときには、父と匹敵もしくはそれを凌駕するほどの盤石で強固な長期政権を築く可能性は十分にあると考えている。唯一の「英雄の器」ここまで書いておきながら、私は小泉進次郎氏の支持者ではない。しかし客観的に見ても、彼はますます未来の総理大臣になる可能性を高めているように見える。人間の持つ「おもろさ」は、学力や知識量とは違い、鍛えたりしてもなかなか身に着けられないものだ。これこそ天賦の才といっても過言ではない。「おもしろい」者が時代の風を受けたときにこそ、英雄は誕生する。その意味で、小泉進次郎はまさに英雄の器なのである。国会議員のなかでだれよりも早く、そして効果的に、真面目くさった方法ではなく意表を突いたユーモラスな方法によって、福島県をはじめとした東北地方のために動いた男の姿を見て、私は改めてそう感じた。
このニュース映像はYouTubeにも上がっているので、ぜひ小泉氏の様子を見てもらいたいのだが、私はこれを見たときに、彼がなぜ地元で圧倒的な支持を受けているのかを理解することができた。それは「小泉純也の孫・小泉純一郎の子だから」という七光り的な要素だけではなく、彼自身がそもそも周囲の人を惹きつけて、支持にせよ不支持にせよなにかしらの態度を表明せずにはいられない「訴求力」を持つ人物であるからだ。
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先の総裁選において、小泉氏は岸田文雄氏に票を投じなかった(河野太郎氏を支持した)。それもあって現在は特に大臣やその関連の要職が与えられているわけでもなく、また党内のポジションで重用されていることもない、ようするに干されている状態となっている。しかし彼はそれでも少しも拗ねたりふてくされたりする様子はなく、いたって変わらない様子でいつもの「小泉進次郎」をまっすぐにやっており、現在は地元の自民党神奈川県連の運営に注力している。そこは素直に気骨のある政治家であると評価するべきだろう。
小泉氏の「南相馬サーフィン」が大きな話題になるなか、SNSでは左派文化人としても知られるお笑いタレントのぜんじろう氏が、SNSで愛される「小泉進次郎構文」を使って小泉氏を揶揄しようとしたところ、うまくその波に乗ることができずに炎上してしまうという事件がひそかに発生していたことも波紋を呼んでいた。
【小泉進次郎氏がサーフィン】せっかく素晴らしいパフォーマンスしたんですから、ポエム小泉の新しい素晴らしいセクシーなポエム聞きたかったです。「私はサーフィンをしてると思います。だからこそ、波に乗っているということは、サーフィンしていると思います」(笑)https://t.co/wmhM0feQ3K
ぜんじろう氏の発言によって、図らずも小泉進次郎氏がメディアの取材などでしばしば発するトートロジー的な発言が、じつは短絡思考や軽慮浅謀によるものではなく、それなりに計算された高度なエクスキューズであったことが逆説的に示される形になったのは興味深い。
実際のところ、小泉氏があやつる「小泉進次郎節」には以下の特徴がある。
(1)それがサービス的なトークであることが相手に理解しやすいこと(2)ニュース番組の編集に耐えられる長さであること(3)マスコミにどこを切り取られても意図しないニュアンスにはなりにくいこと(4)お茶の間の人には重要なことを語っているように聞こえる口調やリズムであること
これら(1)~(4)をつねに満たした、政治的にはきわめて高度なプレゼンテーションである。
もし素人が政治の土俵で(1)~(4)の要件を満たしたトークをやろうとしても、おそらく小泉進次郎氏より巧みに行うのは無理である。単なるトートロジーの言葉遊びである「小泉進次郎構文」はあくまでSNS上のネタでしかなく、小泉氏が実際に政治家として現場でやっていることは、それよりはるかに高度で熟達した技術に基づいた「話術」である。
私はかねてより小泉氏のことを総理大臣になる器であるとそこかしこで言明している(断っておくが、だからといって現時点で彼のことを支持しているわけではない)。
先述したとおり、いまは干されている状態にあるのだが、それでも彼はこのまま任期を重ねていけばいくほど国民の支持を集めていき、党内でも多くの味方をつけて権力の中枢に向かっていくことになるだろう。
なぜかというと、安倍晋三が突如としていなくなった今、小泉進次郎氏が自民党内で(いや、もっといえば現職国会議員のなかでさえ)いちばん「おもしろい」からである。
ここでいう「おもしろい」とは、楽しいとか可笑しいとかそういう意味ではなくて、厳密にいうならば「人を惹きつける」とか「華がある」とか「憎めない」とか「いちいち人が立ち止まってその動向を見たくなる」ということだ。
彼はSNSでは「無能」「なにか言っているようでなにも言っていない人」「低学歴」などと批判されがちであるが、しかし地元の横須賀ではそうではない。「代々続く名家の生まれであるにもかかわらず、いつも気取らずに実直で冗談好きで、いつも親身になって仕事をしてくれるハンサムでチャーミングな兄(あん)ちゃん」という評判を得ている。もちろん「仕事ができる」との評価も高い。
そしてここで彼をもっとも差別化しているのは「名家の生まれ」でもなければ「親身に仕事をしてくれる」でもなく「チャーミングである」ことだ。
現代の政治家には世襲の名家が多いのは当たり前で、熱心に仕事をするから票を集めて当選している。ここまでは国会議員ともなれば、ほぼ全員がクリアしている要件といっても過言ではない。しかし小泉氏は「親しみやすさ・チャーミングさ・おもしろさ」では、その辺の政治家とは比較にならないほど抜きんでている。
そもそも子どもたちとサーフィンを楽しんで、ウェットスーツのまま海産物を食べて「うまい!」というアクティビティをしている姿を容易に想像できる現職政治家が小泉進次郎以外にいるかと言われれば、正直なところNOと言わざるを得ないだろう。彼は国会議員でありながら、インテリ的なスノビズムを感じない青年らしい「陽キャ」「スポーツマン」的な雰囲気を持っているただひとりの存在なのだ。たとえば年が近い国会議員には日本共産党の山添拓氏がいるが、山添氏がそのようなアクティビティによって「画になる」かといわれれば、まずないだろう。
通常の国会議員がやったら「何やってんだコイツ」となりそうなことでも「おもろい」にしてしまう力があり、それこそが大衆に支持される強大な権力者としてもっとも重要な資質のひとつなのである。それは安倍晋三が女子高生に「可愛い」と言われていたり、後輩議員がもってきたお土産の果物を食べて毎回「ジューシー」というのが定番のギャグになっていたのと近い。
彼の父である小泉純一郎は大衆のハートをがっちり掴むふるまいに関しては天賦の才を持っていた。小泉進次郎氏はその才能を受け継ぎながらも、それを「SNS時代」にフィットした形でさらにアップデートしている。
2025年以降の社会問題の中核部は「社会保障制度の持続可能性」に移っていく。毎年100兆円を超える医療費や介護費の負担が、ますます減少していく現役世代・将来世代に重くのしかかる。この問題からだれも目を逸らすことができなくなる。2025年以降は、「高齢者向け政策」を標榜する自民党内のベテラン議員たちがこれまでのような輝きを失ってしまい、若手議員に世代交代が生じるチャンスが十分に生じる。政治家も支持者も比較的若手が中心となっている維新のような第三勢力への対応を余儀なくされる形で、自民党も今以上には「若者推し」に傾かざるを得なくなる。
ご存知のとおり、小泉氏はコテコテの保守派というわけではなく、どちらかといえば自民党内では若手に多いネオリベラリズム派の政治家である。彼のこれまでの「脱炭素社会推し」や「健康保険制度の見直し(≒健康ゴールド免許構想)」などは、大きな賛否を招いていたし、小泉氏の真意をつかみかねるとの声も多くあった。しかしながら、彼のそうした先進的なネオリベラリズムのスタンスは、若年・現役・将来世代の利益を代弁するある種の「世代間闘争」の補助線を引けば理解しやすい。彼が「子育てしやすい社会」の理解促進に並々ならぬ情熱を注いでいることも偶然ではない(もっとも、党内では現在は向かい風の強い「現役世代・将来世代推し」の政治家だからこそ、なおのこと彼はいま干されているのだが)。
つまりなにが言いたいかというと、これからの日本の経済状況や財政状況や少子高齢化や社会保障制度の状況を考慮すると、彼のこれまでの政治的スタンスには図らずも「追い風」が吹く可能性が高いということだ。これまでは「言っていることには同意できないが、しかし発言や行動が面白くて魅力的な人物だし、これからの政治には必要だ」と言われていたのが、時代の変化にともなう世の中の問題意識や関心領域の変化にともなって「言っていることも正論だし、人間的にも魅力的だ」という方向に評価が激変する可能性が大いにある。
現役世代や将来世代をエンパワメントする政策立案者として時代の追い風を受け、なにより大衆社会・SNS社会において「チャーミング」であることも兼ね備えている――以上のことから、私は小泉進次郎氏が未来の総理大臣になることを強く確信しているし、もし総理大臣になったときには、父と匹敵もしくはそれを凌駕するほどの盤石で強固な長期政権を築く可能性は十分にあると考えている。
ここまで書いておきながら、私は小泉進次郎氏の支持者ではない。しかし客観的に見ても、彼はますます未来の総理大臣になる可能性を高めているように見える。
人間の持つ「おもろさ」は、学力や知識量とは違い、鍛えたりしてもなかなか身に着けられないものだ。これこそ天賦の才といっても過言ではない。
「おもしろい」者が時代の風を受けたときにこそ、英雄は誕生する。
その意味で、小泉進次郎はまさに英雄の器なのである。
国会議員のなかでだれよりも早く、そして効果的に、真面目くさった方法ではなく意表を突いたユーモラスな方法によって、福島県をはじめとした東北地方のために動いた男の姿を見て、私は改めてそう感じた。