強盗事件を指示したとして、警視庁は10日、中国籍で職業不詳の汪楠(ワンナン)容疑者(51)(千葉県市川市)を強盗傷害容疑などで逮捕した。
汪容疑者は中国残留孤児2世らでつくる準暴力団「チャイニーズドラゴン」創設メンバーで、近年は受刑者支援に取り組むとして著書を出版したりテレビに出演したりしていた。
発表によると、汪容疑者は仲間と共謀して3月21日、東京都豊島区東池袋のマンションにある会社事務所に侵入。中国籍の社長男性(50)と30歳代の女性従業員を殴って結束バンドで緊縛し、現金約110万円とパソコン5台など計19点(約150万円相当)を奪った疑い。男性は頭部打撲など全治約3週間のけが。
警視庁はこれまで実行役など40~50歳代の男5人を逮捕。一部の容疑者は汪容疑者と面識があり、押収したスマートフォンを解析した結果、汪容疑者が強盗を指示した疑いが強まったという。調べに汪容疑者は「私は全く関係ない」と容疑を否認している。
■被害の男性「全容解明を」
この事件では、実行役のうちモンゴル国籍の20歳代の男が被害男性に抵抗された際に首を刺されて死亡し、警視庁が状況を調べている。被害男性が取材に応じ、当時の様子を語った。
男性によると、当日の朝、インターホンが鳴り、作業服姿の男が「ガス点検に来た」と申し出た。応対に向かった女性従業員の悲鳴が聞こえたため玄関に駆け付けると、強盗団が侵入していた。うち1人がナイフを手に迫ってきたため、とっさに刃をつかんで奪い取り、もみ合いの末、男の首を刺したという。
直後、男性は別の男らに押さえつけられた。頭を蹴られ、結束バンドで両手足を縛られた。男らは、刺されて倒れた仲間の男を放置して金品を奪い、約2時間半後に逃走するまで救急車も呼ばなかった。
男性は頭の打撲のほか、ナイフを奪うなどした際に手を13針縫うけがをした。「なぜ狙われたのかわからない。相手を死なせ、まるで悪い夢のようだ。警察は事件の全容を解明してほしい」と語った。