いわゆる「パパ活」をめぐるトラブルで、刑事事件や懲戒処分に至る事例が相次いで報じられています。
東京都の女性職員がパパ活で計22万円を得たとして減給10分の1(1カ月)の懲戒処分となったり、パパ活マニュアルを販売した女性が詐欺幇助の疑いで逮捕されたりし、大きく報じられました。
報道に至るような大きな事例にはならなくても、パパ活では様々なトラブルが発生しており、弁護士ドットコムにも男女双方から多数の相談が寄せられています。一体、彼らはどんなトラブルに見舞われているのでしょうか。プライバシーに配慮し、一部修正した上で紹介します。
ガールズバーで働いていた相談者は、客の男性とパパ活の関係に。性的な接触は拒否していましたが、徐々に「パパ」から深い関係を求められるようになったため、会うことも連絡することも止めました。
すると、パパは豹変。「気持ちだから」と言われて受け取ったお金を「会わないなら返せ」と言うように。相談者は返金すべきなのかと悩んでいます。
他にも、パパの要求を拒否したり、別れを告げたりしたところ、「これまでデートやパパ活にかかったお金を全額返金しろ!」と要求されて困っている女性たちの相談は複数寄せられていました。
「パパ」が実は既婚者だったため、その妻から慰謝料を請求された、という女性もいました。
パパと性的関係にありませんが、1度だけ食事し、その際に100万円程の援助を受けました。相手が既婚者であったことは知らず、不貞関係にあったとは言えないと考えていますが、「上手く示談を成立させたい」と、穏便な解決を望んでいました。
一方の「パパ」からも相談が寄せられています。
ある「パパ」はパパ活として出会った女性から「妊娠した」と連絡があり、悩んでいます。。DNA検査や病院への付き添いを頑なに拒否する女性に不信感を抱いており、自分の子ではないと考えているためです。
なお、女性側からも「パパ活で妊娠してしまった」との相談は複数寄せられていました。多くのケースで、連絡先はLINEしか知らないため、LINEで妊娠を告げたところブロックされ、泣き寝入りするケースもありました。
当然のことですが、配偶者の「パパ活」が発覚すれば、離婚や夫婦関係に暗い影を落とすことになります。
ある女性は、夫が週2日、パパ活として女性に会っていることを把握。「何度注意してもやめてくれない」といい、夫本人はキャバクラと同等のものだと考えており悪いことをしている自覚はないようだといいます。そこで、夫のパパ活を離婚事由として離婚を進めていきたいと考えています。
このようにパパ活は金銭トラブルや妊娠トラブル等、様々なリスクを抱える危険性があります。
では法的にはどう考えられるのでしょうか。よくある相談事例について、冨本和男弁護士に聞きました。
Q1)パパ活でもらったお金を「返金しろ」と言われたら、応じる義務はあるのでしょうか?
「パパ活」をしてお金をもらう約束をすることも一種の契約だと考えられます。「パパ活」の内容にもよりますが、原則としては贈与にあたりますので、返金する義務はないでしょう。
また、性行為を伴う「パパ活」の契約は、民法90条の公序良俗違反となり無効となると考えられます。民法708条の不法原因給付に該当し、その返還を求めることができません。
なお先日、「頂き女子・りりちゃん」なる人物がマニュアルを販売して詐欺幇助で起訴されたほか、詐欺で再逮捕されたと報じられています。ただ恋愛感情に乗じてお金を出させたのではなく、「アパレル会社を起業するのに借金をして、返済しないと風俗店で働かないといけなくなる」といった嘘をついて多額のお金を出させたからのようです。
パパ活も内容によっては、刑事事件になり得ることにも留意する必要が当然ながらあります。
Q2)パパ活で相手の妻から慰謝料を請求されたら応じる義務はあるのでしょうか?
もし、男性が既婚者であることを知っていたのであれば、原則として支払うことになるでしょう。
一方で、既婚者であることを知らなかった、肉体関係がなかった、あるいは相手の婚姻関係が破綻していたと言える場合には、慰謝料を支払う可能性がないこともあり得ます。
Q3)「妊娠した」と嘘をつかれた場合、相手に対して何らかの法的手続きをとることは可能でしょうか?
妊娠の証拠を見せてもらう、病院に付きそうなどした上で、事実関係を把握する必要があります。
もし、妊娠の事実がないのに、中絶や出産費用の名目で金銭を要求された場合には、詐欺罪(刑法第246条)になる可能性もあります。
Q4)夫のパパ活は離婚理由となるのでしょうか?
明確に不貞があったと言える場合は、離婚は認められるでしょう。
一方で、不貞がなかった場合、その具体的な内容や頻度にもよるとは思いますが、食事をした程度では、基本的には離婚事由に該当しないと考えられます。
ただ、話し合いを求めても応じないなどの状態が続けば「婚姻を継続し難い重大な事由がある」(民法770条1項5号)と認められる可能性もあります。
【取材協力弁護士】冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。事務所名:法律事務所あすか事務所URL:http://www.aska-law.jp