将棋の藤井聡太七冠(21)が11日、京都市の「ウェスティン都ホテル京都」で指された第71期王座戦五番勝負の第4局で永瀬拓矢王座(31)を破り、王座を奪取。史上初の八冠を達成した。2016年に将棋棋士デビューし、21歳の若さで棋界を統一した。棋界無双の藤井新八冠に師匠・杉本昌隆八段の兄弟子である小林健二九段(66)は大リーグ・エンゼルス大谷翔平(29)の姿を重ね合わせるとともにライバルの誕生を願った。
息詰まる激戦の末に、その瞬間は訪れた。永瀬王座に終始リードされる苦しい展開も、藤井七冠が驚異の粘りを見せた。86手目から1分将棋となり、123手目で形勢逆転。対局開始から12時間が過ぎ、138手目に永瀬王座が投了し、史上初の八冠を達成した。
快挙にも藤井新八冠は「このような結果を出せると自分自身でも思っていませんでしたので、すごくうれしく思っています。一方で今回のシリーズで苦しい将棋が多かったですし、実力がまだまだ足りないところを感じています。その地位に見合った実力を付けられるように今後、一層取り組んでいかないといけないと思っています」と謙虚に答えた。
また、今後の目標についても「実力をつけること。そのうえで面白い将棋を指したいという気持ちがある。そういったところを目指していきたい」と周囲の盛り上がりとは対照的にいつもと変わらぬ様子だった。
小林九段はこの日の対局について「将棋の内容としては納得してないと思います」と代弁する。
続けて「ひと言で言いますと永瀬王座は将棋に勝って勝負に負けた。その裏返しで藤井八冠は将棋の内容では負けたんですが、最後に勝負で勝った。将棋の内容としては負けなんですが目に見えないプレッシャーを少しずつ永瀬王座は感じてたと思います」と解説する。それでも勝つのが藤井八冠の強さなのかもしれない。
前人未到の八冠。21歳の若さで棋界を統一し、次に視界に捉える景色とは?
小林九段が藤井八冠に重ね合わせるのが二刀流として次々と歴史の扉を開けているエンゼルスの大谷だ。
「藤井さんと大谷さんが共通しているのは、自分を高めようとしているところ。つまり、将棋を極めようというものが見えます。すごいことだと思います。もちろんジャンルは違いますけど、考え方は似てるんじゃないかと思いますね。大谷さんと一緒でよく寝てるみたいですし(笑い)。自己管理のしっかりした人は強いですよ」と話した。
自身を高めるためにライバルの存在も不可欠。
「私が現役の時にはなかったAIがあるので勉強方法も変わってくると思うんですね。早いスピードで強くなる人が出てきても不思議ではないと思っています。藤井さんを脅かす存在ができてもおかしくない。そうならないと将棋界も盛り上がりませんから。藤井聡太を脅かす人が出てきてほしいし、藤井さんはそういう人と戦うことを喜びとするんじゃないですかね」と棋界全体の底上げのためにもライバル誕生に期待を寄せる。
最後に「八冠おめでとう。身体に気を付けて、さらなる高みを目指してほしいですね」とエールを送った。