「朝起きるのが辛い」。ただの夜更かしが原因と思われがちな寝坊だが、あまりにも辛い場合、病気の可能性もある。放置すれば人生を狂わしかねない「睡眠リズム障害」とは、いったいどのような症状なのだろうか?
【映像】「椅子に頭をのせて寝てしまう」睡眠リズム障害の女学生■時差ボケがずっと続いているような感覚「学校の授業や集会など、起きていなきゃいけない時にどうしても起きていられないことが増えて苦しくなった」 中学時代から朝起きることが苦痛になり、高校3年生の時、睡眠リズム障害と診断された深澤思乃さん(22)。眠りが訪れるのが明け方4時頃になるため、常に睡眠不足状態で「中3以降はもう何も覚えていない。ほとんど授業の記憶がない。起きていても絶えずぼーっとして『体のしんどさと闘うだけ』だった」と振り返る。

睡眠の時間帯が大きくずれてしまう睡眠リズム障害の症状について睡眠学会専門医の志村哲祥先生は「人間には体内時計があるため普通は朝が来ると目が覚めて夜が来ると眠くなる。一方で、この眠くなる時間には個人差・年齢差があり、深夜3時4時、場合によって朝の5時6時まで眠れない人もいる。そして一度寝てしまう朝起きられない。こういった体内時計の個人差によって社会生活が送りにくくなるのが睡眠リズム障害だ」と説明した。 この「時差ボケがずっと続いているような感覚」で生活せざるを得ない睡眠リズム障害は思春期で発症する人が多く、世界的には思春期人口の3~7%が苦しんでいるという。 中学2年生の頃から遅刻が多くなったという深澤さんも「重要な学校の用事に遅刻してしまうこともあった。親に『なんで起こしてくれなかったの?』と聞くと『3回も4回も起こしたのに、ずっとワーワー言って起きなかったのはあんたでしょ』と言われて…」と話す。 熟睡している時に無理やり起こされることで、人格が変わったように暴力的になったり、記憶が欠落してしまう睡眠酩酊。これを毎朝のように起こしていたという深澤さん。次第に授業にもついていけなくなった。「授業で起きていられないから、テストもわからない。テスト中も眠ってしまってヨダレでテスト用紙はぐちゃぐちゃ。学校に通っているけれど、白昼夢みたいな状態。空白の数年間。学校の先生にも、『いろんな生徒を見てきたけど、あなたはその意志にかかわらず、その睡魔にあらがえないで寝ているように見える』と指摘された」 あまりの異常さに先生や友人からは病院での受診を勧められたが、親には「たかが朝寝坊・居眠りで病院に行くものじゃない」と言われ、自分でも「気合いが足りないから授業で寝てしまう。昼夜逆転しているのも自分の甘えだ」と考え、病院に行かなかったという。 しかし、高校3年生の時に転機は訪れた。深澤さんの通う学校に睡眠の専門医が訪れ、深澤さんの異常さに気づいてくれたのだ。 睡眠の専門医から「体内時間が7時間に狂っているため、日本にいるのに実質フィンランド人と同じ体内時計」「朝8時の朝礼で起きていられないのは、夜中の1時に強引に起きているようなものだからしょうがない」と指摘され、深澤さんは初めて納得したという。 その後、クリニックでの診察を受け、睡眠リズム障害だと診断された。当時を深澤さんは「もう目から鱗でした。本当に、それまで抱えていた罪悪感みたいなものが一気に和らいだ瞬間で、すごく救われたことを覚えています」と振り返る。■14時出勤、22時退勤なら働けるのに… 高校卒業後、興味のあった服飾系の専門学校に通った深澤さん。生活習慣の改善や薬の服用などで授業にも集中できるようになり、ファッションの学生コンペで国内グランプリを受賞。ニューヨークなど海外でランウェイショーをやり遂げた。そんな実力があっても、睡眠リズム障害のために就職先が見つからないという。 深澤さんは「14時出勤、22時退勤なら全然普通に働けるはずだが、希望職にそれができるところがなかった。教育現場や医療現場に睡眠リズム障害の実態を知ってる人が本当にいない。いつまでたっても睡眠リズム障害の人たちは埋もれたままだ。こういう体質で苦しんでいる人がいることを伝えていきたい」と思いを語った。 睡眠リズム障害の認知度の低さを危惧する志村医師も「体内時計にも個人差と多様性がある。朝起きて昼働いて夜眠ることが当たり前ではない。様々な人がいることを知ってほしい」と訴えた。(『ABEMAヒルズ』より)
■時差ボケがずっと続いているような感覚
「学校の授業や集会など、起きていなきゃいけない時にどうしても起きていられないことが増えて苦しくなった」
中学時代から朝起きることが苦痛になり、高校3年生の時、睡眠リズム障害と診断された深澤思乃さん(22)。眠りが訪れるのが明け方4時頃になるため、常に睡眠不足状態で「中3以降はもう何も覚えていない。ほとんど授業の記憶がない。起きていても絶えずぼーっとして『体のしんどさと闘うだけ』だった」と振り返る。
睡眠の時間帯が大きくずれてしまう睡眠リズム障害の症状について睡眠学会専門医の志村哲祥先生は「人間には体内時計があるため普通は朝が来ると目が覚めて夜が来ると眠くなる。一方で、この眠くなる時間には個人差・年齢差があり、深夜3時4時、場合によって朝の5時6時まで眠れない人もいる。そして一度寝てしまう朝起きられない。こういった体内時計の個人差によって社会生活が送りにくくなるのが睡眠リズム障害だ」と説明した。
この「時差ボケがずっと続いているような感覚」で生活せざるを得ない睡眠リズム障害は思春期で発症する人が多く、世界的には思春期人口の3~7%が苦しんでいるという。
中学2年生の頃から遅刻が多くなったという深澤さんも「重要な学校の用事に遅刻してしまうこともあった。親に『なんで起こしてくれなかったの?』と聞くと『3回も4回も起こしたのに、ずっとワーワー言って起きなかったのはあんたでしょ』と言われて…」と話す。
熟睡している時に無理やり起こされることで、人格が変わったように暴力的になったり、記憶が欠落してしまう睡眠酩酊。これを毎朝のように起こしていたという深澤さん。次第に授業にもついていけなくなった。
「授業で起きていられないから、テストもわからない。テスト中も眠ってしまってヨダレでテスト用紙はぐちゃぐちゃ。学校に通っているけれど、白昼夢みたいな状態。空白の数年間。学校の先生にも、『いろんな生徒を見てきたけど、あなたはその意志にかかわらず、その睡魔にあらがえないで寝ているように見える』と指摘された」
あまりの異常さに先生や友人からは病院での受診を勧められたが、親には「たかが朝寝坊・居眠りで病院に行くものじゃない」と言われ、自分でも「気合いが足りないから授業で寝てしまう。昼夜逆転しているのも自分の甘えだ」と考え、病院に行かなかったという。
しかし、高校3年生の時に転機は訪れた。深澤さんの通う学校に睡眠の専門医が訪れ、深澤さんの異常さに気づいてくれたのだ。
睡眠の専門医から「体内時間が7時間に狂っているため、日本にいるのに実質フィンランド人と同じ体内時計」「朝8時の朝礼で起きていられないのは、夜中の1時に強引に起きているようなものだからしょうがない」と指摘され、深澤さんは初めて納得したという。
その後、クリニックでの診察を受け、睡眠リズム障害だと診断された。当時を深澤さんは「もう目から鱗でした。本当に、それまで抱えていた罪悪感みたいなものが一気に和らいだ瞬間で、すごく救われたことを覚えています」と振り返る。
■14時出勤、22時退勤なら働けるのに…
高校卒業後、興味のあった服飾系の専門学校に通った深澤さん。生活習慣の改善や薬の服用などで授業にも集中できるようになり、ファッションの学生コンペで国内グランプリを受賞。ニューヨークなど海外でランウェイショーをやり遂げた。そんな実力があっても、睡眠リズム障害のために就職先が見つからないという。
深澤さんは「14時出勤、22時退勤なら全然普通に働けるはずだが、希望職にそれができるところがなかった。教育現場や医療現場に睡眠リズム障害の実態を知ってる人が本当にいない。いつまでたっても睡眠リズム障害の人たちは埋もれたままだ。こういう体質で苦しんでいる人がいることを伝えていきたい」と思いを語った。
睡眠リズム障害の認知度の低さを危惧する志村医師も「体内時計にも個人差と多様性がある。朝起きて昼働いて夜眠ることが当たり前ではない。様々な人がいることを知ってほしい」と訴えた。(『ABEMAヒルズ』より)