この夏は線状降水帯による被害が相次ぎました。7月だけを取ってみても、島根、福岡、佐賀、大分、富山、石川とわずか1週間に3度も発生しました。
過去に類を見ない降水量を記録し、土砂が崩壊したり、河川が決壊したり、交通網が遮断されたりするなどの甚大な被害をもたらしました。
筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、経験上、人間の本性が現れるのは平時ではなく有事だと感じます。
妻は、何を考えているのだろうか…Photo/gettyimages
平時なら上手く嘘をつき、不倫を隠しとおすことも可能でしょう。しかし、身体的、精神的、金銭的に追い詰められている有事では、秘密を隠し切れずにボロが出るもの。そんな悲惨な場面に何度となく遭遇してきました。
さて、相談者・橘高祐樹さんは昨年、河川の氾濫による浸水被害に遭ったのですが、避難所等で夫婦関係にヒビが入りかねないシチュエーションに遭遇しました。一体、何があったのでしょうか?
<登場人物(相談時点。名前は仮)>夫:橘高祐樹(36歳。会社員。年収400万円。結婚2年目)☆今回の相談者妻:橘高梨穂子(34歳。会社員。年収350万円)不倫相手の男:(48歳、会社員)
線状降水帯の脅威は、祐樹さんが住む地域でも例外ではありませんでした。祐樹さんが住むアパートは最寄りの河川から2キロの距離と目と鼻の先。しかし、その日の朝、市の発表はまだ警戒レベル2にとどまっていました。万が一の場合に備え、避難経路を確認して欲しいという程度で、祐樹さんによれば、「早朝の雨脚は危険を感じるほどではなかった」そうです。
祐樹さんはバスと電車で通勤します。パチンコメーカーの営業職の妻の梨穂子さんは、車で通勤。2人は普段通りに出社したのですが、時間を追うごとに雨足は激しくなり、夕方に警戒レベルは4に達しました。市の対応は、「避難指示」に引き上げられたのです。
祐樹さんは、勤務先の会社から午後4時に仕事を切り上げ、退社するように命じられました。ハザードマップによると避難先は、河川から離れた高台にある公民館。そこで祐樹さんは梨穂子さんに「家に帰らず、公民館へ行こう」と連絡します。2人はそれぞれ集合場所を目指したのでした。
避難場所には、祐樹さんが先に到着しました。やがて横殴りの雨でびしょびしょに濡れ、折れかけた傘を手にして泣きそうな梨穂子さんが到着しました。祐樹さんが「怖かったね」と声をかけると、梨穂子さんは「良かった」と涙ながらに喜んだそうです。
しかし、その避難場所が、二人の関係を引き裂くことになるとは、祐樹さんはこの時、夢にも思っていませんでした。
避難してきたのは祐樹さん夫婦を合わせて20人ほど。他人との仕切りは段ボール1枚しかなく、話し声や寝言、いびきは筒抜け状態。
とても熟睡できる場所ではありませんでした。さらに夜通し降り続く激しい雨音に苛まれます。
自宅から避難してきた人とは異なり、2人は勤務先の会社から直行したので仕事用のカバンしか持っていませんでした。暇を持て余すなか、祐樹さんは深夜トイレから戻ると梨穂子さんが、LINEで誰かとやり取りをしている画面が目に入ったのです。
「そこはカードキーを2つもらえるけど。部屋が分かったら教えてね」と梨穂子さんが送ると、相手が「わかった。あんがと!」と返信していました。
当初、祐樹さんは梨穂子さんのLINEのやり取りは貸会議室のことだと考え、仕事関係の相手だと信じて疑いませんでした。そのため「こんな時間まで大変だね」と妻を気使ったのですが、梨穂子さんはなぜか返事をしませんでした。
しかし、実際には梨穂子さんのやり取りは、後日、ホテルの部屋で待ち合わせを約束するカップルのやり取りだったのです。
後に妻の不貞を確信した祐樹さんのとった行動は、実に意外なものでした。
後編『「妻の裏切り」の決定的証拠はドライブレコーダーに記録されていた…!「避難生活」で壊れゆく「夫婦の仲」と「夫の覚悟」』で、その後の顛末を詳しくお伝えしましょう。