8月23日、ウーバーイーツの営業時間が24時間になった。24時間営業の対象となるのは、ローソンや吉野家、松屋などの一部加盟店で、対象エリアは東京や大阪など全国12都市に限られている。これまで同エリアの営業時間は午前7時から翌午前2時までだったが、深夜や早朝にも営業時間を広げることでどのような変化があるのか? 今では東京の街角で、フードデリバリーのバッグを背負った配達員の姿を目にしない日はない。街で忙しく行き交う配達員に、今回の営業時間変更についてどう受け止めているのか話を聞いてみた。
◆24時間営業に配達員のホンネは?
昨年からウーバーイーツの配達をはじめ、現在は月に500回ほど配達を行う専業配達員の福島真司さん(仮名・39歳)は、24時間営業について次のように語る。
「24時間に変わる前も深夜3時ぐらいまで東京・新宿ではウーバーイーツは営業していたし、僕は休憩を入れて朝9時から夜11時までと時間帯を決めて仕事をしていますから、生活に変化はありません。
24時間営業に変わると、警備員など夜働いている人が仕事終わりから副業で2時間ぐらいウーバーイーツをやれるようになるから、そこは喜ばれるかもしれませんね。あと、黒服やバーテンダーなど夜の商売は終わるのが5時ぐらいなので、外食するにも限られた店しかないし、ウーバーイーツで注文する人が増えるかもしれません」
◆「24時間になっても変わりはない」
福島さんのように専業でウーバーイーツをやっている人は、時間を決めてフルタイムのように仕事をしているため「24時間になっても変わりはない」と話す。そもそも福島さんはウーバーイーツを始める前は歌舞伎町でキャバクラの店長を勤めていたという。
「夜の仕事は30代前半から6年ぐらいやってきました。昼夜逆転の生活のせいで日中もよく眠れなくなり、38歳になるころには自律神経失調症になりました。人がわいわいやっている酒の世界が好きでしたが、やはり日光にあたらない生活を続けると体はおかしくなります。なぜか視力まで悪くなりました」
◆今年の東京は死ぬような暑さ
昼夜逆転生活を続けた福島さんは、「キャバクラの店長を辞めたあと、特にやりたいことも無いし、月30万円ぐらい稼げれば新宿区で生活できるので、ウーバーイーツをはじめてみました」と話す。
「何より日光を浴びて生活したかったので、バイクの免許を持っていますがあえて自転車で配達をしています。汗をかいて夜の生活で壊れた心身を整えたかったからです。ただ、今年の東京の真夏は死ぬような暑さだから、空調ベストを着用しないと確実に倒れます。家で毎日ベストのバッテリーを充電するのが面倒に思っています。バッテリーがダメになれば、また買い換えないといけませんし」
筆者もウーバーイーツ配達員をやっていが、真夏の東京は灼熱で、配達を日中するなら対策が必要だ。バイクで配達しているが、首に濡らしたタオルを常に巻いている。それでも2時間連続で配達するのが限界で、配達を日中やるなら休憩しつつそれでも5時間までだろう。
◆会社員との兼業配達員の声
もう1人にも話を聞いてみた。普段は会社員として勤務しているという須磨佳さん(41歳・仮名)は、24時間営業になったことで「ウーバーイーツで朝活をはじめた」と話す。
「フルタイムで普通に会社員として働いていますが、ウーバーイーツが24時間になる前は仕事が終わり、暇なときや、週末も暇なときに、ツーリング気分で都内をバイクで配達していました。バイクで走るのが好きなので、趣味と実益をかねて行えるウーバーイーツは自分にとって嬉しい副業です」

ウーバーイーツ配達員はバイク好きには気分転換にもなり、「楽しい仕事だ」と須磨さんは話す。
「今は早朝も配達できるので朝5時から2時間だけウーバーイーツをやっています。いつもバイクで通勤するので、方向が会社とだいたい合っていれば朝活感覚で配達しながら通勤しています。会社からなるべく離れないように配達先を選んでやってますし、会社と多少離れても、そこはバイクなのでうまく戻って遅刻せずにすんでいます。
2時間で多くても4件の配達が限界ですが、それでも月4万~5万円は生活費の足しにできています。24時間の変更は早朝も配達ができてありがたいですが、早朝から営業している店がまだ少ないので、今後もっと増えてくれればと思っています」
◆オーダーのバラエティが少ない課題も
ウーバーイーツ配達員にとって早朝、どんな店が営業しているのかが大事だ。筆者の経験上、アプリを早朝からオンラインにできても、オーダー数が少ない店ばかりでは意味がない。須磨さんに聞いたところ、「牛丼チェーンの朝定食やハンバーガーチェーンの朝食メニューなど、オーダーのバラエティはまだ少ない」と言う。
また、店舗を持たないデリバリー専門店、いわゆるゴーストレストランも24時間営業をはじめている。冒頭に書いた通り、今はまだローソンや吉野家、松屋などの一部加盟店のみが配送の対象だが、今後整備が進めば、早朝に適したメニューがあるゴーストレストランのほうもオーダーが増えるのではないか。
まとめると、24時間営業開始は、一部配達員にとってはメリットがありそうだが、それ以外の大多数の配達員にとってあまり影響はない模様だ。くれぐれも筆者も含め配達員は安全運転を心がけてほしい。
<取材・文/逆撫太郎>