Amazon Prime Videoの婚活サバイバル番組「バチェロレッテ・ジャパン」で、初代バチェロレッテを務めたタレントの福田萌子さんが、自身のインスタグラムで投稿した「泣かせない育児」について、ネット上で賛否の声が上がっています。
生後7カ月のわが子の様子を「生活表」に記録しているという福田さんは、「なるべく笑って過ごせるように」と、子どもを笑顔にさせるようコントロールをしてきたとのこと。その結果、「生活表を振り返るともう3カ月ほど子どもの涙を見ていないことに気が付きました」と報告。「おなかが空く前に、眠くなる前に、疲れすぎる前に先回りする」と、“先回り育児”を実践してきたことをつづっています。
これについて、「素晴らしいです」「丁寧な育児をされていてすごい」など称賛するコメントが寄せられた一方で、「乳児は泣くのが仕事なのに」「泣かせない方がいいとは思えない」「先回りしすぎるのは悪影響では」といった疑問の声も上がりました。実際のところ、「泣かせない育児」は子どもにどのような影響を与え得るのでしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに見解を聞きました。
Q.子ども(特に0歳児)にとって、「泣く」というのはどのような意味を持つ行動なのでしょうか。
佐藤さん「赤ちゃんは何かしら『不快だ』と感じると、それに対して泣いて反応します。生まれて間もない時期は、空腹やオムツの汚れ、暑さなど体感的な不快感で泣くことが多いですが、その後、記憶力が発達してきて『ママ・パパじゃなくちゃ嫌』という愛着が生まれると、『寂しい』『悲しい』といった心の不快感で泣くことも増えてきます。
また、1歳半ばくらいまでに段階的にやってくる知能の急成長期にも、泣く頻度が増加しやすいといわれています。これは『メンタルリープ』と呼ばれるもので、脳が成長することで内部の感覚が大きく変わり、その急激な変化にとまどい、激しく泣くことがあります。親にとっては喜ばしいわが子の成長ですが、赤ちゃん本人にとっては内部の急な変化になるので、“不快感”として捉えられるのでしょう」
Q.子どもを泣かせないようにする、またそのために“先回り”をする育児について、どう思われますか。
佐藤さん「『子どもには、できればご機嫌に過ごしてもらいたい』というのは誰もが思うことですが、もし、泣くことに対して過剰に敏感になってしまうと、悪い先回りになってしまうこともあると感じています。ここでは『いい先回り』『悪い先回り』と分けて見ていきたいと思います。
例えば、赤ちゃんが出す信号に感度よく反応してあげている状態なら、いい先回りです。泣くことも一つの信号ですし、それ以外にも声を出したり、足や手を動かしたりする子もいるでしょう。このような赤ちゃんの気配に気付き、タイミングよく動いてあげることを、心理学では『応答感受性が高い』といいます。
『自分の様子をちゃんと見てくれていて、信号を出せば毎回来てくれる』、このような一貫性のある対応は、赤ちゃんの心の安定を促します。特に、ハイハイなどでまだ移動ができない0歳前半は、自分で欲求を伝えに行けないので、親が様子を察し、感度よく反応してあげることは大切になります。
しかし、赤ちゃん時代の対応をそのまま継続していると、やり過ぎな先回りになってしまっていることがあります。例えば、子どもが『喉が渇いた』と感じているとき。『ママ、お水ちょうだい』と言う前に『喉、渇いてるよね。はいお水』と満たしてしまったら、この子は自分から発信する機会を失ってしまうことになります。
ここでは分かりやすくするために極端な例を出しましたが、子どもが自分から思いを伝える力をつけていくこともとても大切です。親が先回りし過ぎてしまい、『やってもらうのが当たり前』という感覚が身に付いてしまった例をこれまでもたくさん見ていますので、ここは気を付けるべきポイントだと思います」
Q.育児のやり方、考え方については、今回のように賛否の声が上がることもしばしばあります。「各人、各家庭の子育てのスタンス」について、お考えをお聞かせください。
佐藤さん「育児方針はそれぞれのご家庭で違っていいと思いますし、実際に違うものです。しかし、それがもし極端な場合は子どもたちに影響が出てしまうこともあるので、育児方針を決める際には、表面的な判断をしないことは大切だと感じています。
例えば、今回の例でいうなら、泣くこと自体を『かわいそう』とか『だめなもの』と見てしまうと、大事なことを見落としてしまうこともあるように思います。『できれば泣いてほしくない』と思うのは自然なことですが、0歳の子にとっては、自分の思いを伝えるツールでもあります。赤ちゃんにとって、自分の発信で周囲が反応してくれることは、『こうやるとこうなる』という予測につながるので、この感覚を得ることは、実はとても重要なことです。
私たち大人もそうですが、自分が何か働きかけても無反応だと自信をなくしますが、何らかの反応を得られると力を感じることができます。赤ちゃんも同様で、泣くこと自体がかわいそうというよりは、信号を送っているのに反応をしてあげないことがかわいそうなのですね。泣くことに、過剰に敏感になってしまうと、のちのち『叱れない』『振り回されてしまう』などの悩みに至ることは多いので、年齢に合った育児方針へとアップデートをかけていくことも大事なポイントだと思います」