アルツハイマー病治療に光明!? 東北大と東京大の研究チームは、沖縄や鹿児島の奄美大島に生息するヘビのハブが持つ毒に、アルツハイマー病の原因とされる物質を分解する成分があることを発見した。
チームは今後、動物実験などで効果や安全性を確かめるが、「将来、新たな認知症治療法の開発につながる可能性がある」とみている。
認知機能が低下するアルツハイマー病は「アミロイドベータ」などのタンパク質が脳に蓄積され、神経細胞を傷つけることで起こると考えられている。最近では、日本の製薬大手エーザイが開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」が8月、厚生労働省専門部会から製造販売の承認を了承された。ただ、年間薬価が380万円と高額になる見通し。
ハブが進化の過程で獲得した毒の主成分は、蛇毒メタロプロテアーゼというタンパク質分解酵素(SVMPS)。ヒトに存在するADMSファミリータンパク質と共通の祖先に由来する。
チームは、ハブ毒の成分からタンパク質を分解するSVMPSを抽出。アミロイドベータを分泌する培養細胞に加えたところ、蓄積が約90%抑えられたという。さらに酵素をアミロイドベータにくっつけると、直接分解することが分かった。同様の分解酵素は人間の体内にも存在しているが、ほかの生き物から見つかるのは珍しいという。
今後、マウスを使って毒性の影響や効果を調べる。チームの小川智久・東北大教授(細胞生物学)は「ヘビの毒という強い成分だからこそ、人間の体内で力を発揮すると期待できる」と話した。