発売から41年を迎えた「テレホンカード」。若い人たちの多くはその存在すら知らず、持っている人もすっかり見かけなくなった……と思ったら、いまでも年間130万枚が販売されているという。一体、どんな人たちが、どんな目的で買っているのか。
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【写真を見る】「エモい」「カワイイ」と若者の間で人気再燃! 懐かしの“レトロ”公衆電話たち テレホンカードが発売されたのは1982年12月。同じ年、これまでの硬貨式に代わるカード式の公衆電話が登場したことが背景にある。ピーク時の95年度には4億353万枚が販売されたが、携帯電話の普及とともに減少の一途をたどり、現在の販売数はNTT東西を合わせて約130万枚(21年度末)となっている。

シンプルなデザイン 公衆電話も同様で、ピーク時の84年には全国で93万4903台あったが、いまでは12万1882台(22年度末)にまで減少。総務省が全国の15~85歳の男女を対象に行ったアンケート調査(20年)では「公衆電話を過去1年間利用していない」との回答が74%を占めるなど、いまや「昭和の風景」の一つと化しつつある。 かつてはアイドルやゲームのキャラクターなどをデザインしたテレホンカードが多く発売され、希少性の高いレアモノだと100万円を超す価格で取り引きされたケースも。ただ「コレクション」としての価値は健在で、いまもカードショップやメルカリなどで数万~数十万円で売買されるものもあるという。“そもそもテレホンカードってどこで売っているの?”との声も聞こえてきそうだが、コンビニのほか、Amazonでも買うことができる。現在、販売されているのは文字だけが印刷された簡素なデザインの50度と105度の2種類。コレクターたちは「見向きもしない」というが、購入しているのはどんな人なのか。「非常食」と同じ感覚 テレホンカードのほか、各種カードやチケットなどを販売する都内のチェーンショップの店長がこう話す。「いまでも多い時で月に数十枚は売れます。高齢者のなかにはスマホを持っていない人もいて、そういった方が外出時の連絡用にテレカを買っていく。あと高齢の両親が入院するということで、家族の方が10枚や20枚単位で購入するケースもあります。施設内でスマホの利用できるスペースを制限している病院は少なくなく、また心臓ペースメーカーなど埋め込み型の医療機器を装着する場合、スマホは誤作動を誘発する恐れがあるため、連絡手段は公衆電話とするのがベターだそうです」 他にもスマホのバッテリーが切れた時などに備え、“保険”としてテレホンカードを買っていく営業マンもいるという。「最近ではお子さんにスマホを持たせていない親御さんが、万が一の連絡用として子供に携帯させる目的で買っていくケースもあります。でも一番多いのは災害時を念頭に家族のために買っていく方々ですね。“一家に1枚”ではないですが、大地震などに備えて非常食と同じ感覚で“テレホンカードを常備する”というお客さんは昔から一定数います」(同)「災害時専用」公衆電話 災害の発生時、通信規制がかかり、携帯電話や固定電話が繋がりにくくなる事例は過去にも頻発。公衆電話はこの通信規制の対象外となり、緊急時には携帯や一般電話より優先的に繋がることで知られる。 実際、11年の東日本大震災の際、携帯電話が繋がらず、街中の公衆電話に長蛇の列ができた光景を覚えている人も多いだろう。ただし11年の震災時には、東日本エリアで公衆電話が無料開放されるなど、テレホンカードが不要となったケースもある。 さらに前述の公衆電話約12万台のほかに、「災害時用公衆電話」が東日本大震災を機に本格整備され、その数は全国で8万8644台(22年度末)にのぼっている。「災害時用公衆電話は通話が無料のためテレホンカードなどは不要ですが、設置場所は主に避難場所となる小中学校や公民館」(NTT東日本広報室)などに限られるという。 過去の教訓を踏まえ、公衆電話の利便性も増しているが、備えあれば憂いなし。使う機会は限られても、“もしもの時”に家族の安否や自分の無事を伝えるツールとなり得る、テレホンカードの有用性は変わらないという。デイリー新潮編集部
テレホンカードが発売されたのは1982年12月。同じ年、これまでの硬貨式に代わるカード式の公衆電話が登場したことが背景にある。ピーク時の95年度には4億353万枚が販売されたが、携帯電話の普及とともに減少の一途をたどり、現在の販売数はNTT東西を合わせて約130万枚(21年度末)となっている。
公衆電話も同様で、ピーク時の84年には全国で93万4903台あったが、いまでは12万1882台(22年度末)にまで減少。総務省が全国の15~85歳の男女を対象に行ったアンケート調査(20年)では「公衆電話を過去1年間利用していない」との回答が74%を占めるなど、いまや「昭和の風景」の一つと化しつつある。
かつてはアイドルやゲームのキャラクターなどをデザインしたテレホンカードが多く発売され、希少性の高いレアモノだと100万円を超す価格で取り引きされたケースも。ただ「コレクション」としての価値は健在で、いまもカードショップやメルカリなどで数万~数十万円で売買されるものもあるという。
“そもそもテレホンカードってどこで売っているの?”との声も聞こえてきそうだが、コンビニのほか、Amazonでも買うことができる。現在、販売されているのは文字だけが印刷された簡素なデザインの50度と105度の2種類。コレクターたちは「見向きもしない」というが、購入しているのはどんな人なのか。
テレホンカードのほか、各種カードやチケットなどを販売する都内のチェーンショップの店長がこう話す。
「いまでも多い時で月に数十枚は売れます。高齢者のなかにはスマホを持っていない人もいて、そういった方が外出時の連絡用にテレカを買っていく。あと高齢の両親が入院するということで、家族の方が10枚や20枚単位で購入するケースもあります。施設内でスマホの利用できるスペースを制限している病院は少なくなく、また心臓ペースメーカーなど埋め込み型の医療機器を装着する場合、スマホは誤作動を誘発する恐れがあるため、連絡手段は公衆電話とするのがベターだそうです」
他にもスマホのバッテリーが切れた時などに備え、“保険”としてテレホンカードを買っていく営業マンもいるという。
「最近ではお子さんにスマホを持たせていない親御さんが、万が一の連絡用として子供に携帯させる目的で買っていくケースもあります。でも一番多いのは災害時を念頭に家族のために買っていく方々ですね。“一家に1枚”ではないですが、大地震などに備えて非常食と同じ感覚で“テレホンカードを常備する”というお客さんは昔から一定数います」(同)
災害の発生時、通信規制がかかり、携帯電話や固定電話が繋がりにくくなる事例は過去にも頻発。公衆電話はこの通信規制の対象外となり、緊急時には携帯や一般電話より優先的に繋がることで知られる。
実際、11年の東日本大震災の際、携帯電話が繋がらず、街中の公衆電話に長蛇の列ができた光景を覚えている人も多いだろう。ただし11年の震災時には、東日本エリアで公衆電話が無料開放されるなど、テレホンカードが不要となったケースもある。
さらに前述の公衆電話約12万台のほかに、「災害時用公衆電話」が東日本大震災を機に本格整備され、その数は全国で8万8644台(22年度末)にのぼっている。
「災害時用公衆電話は通話が無料のためテレホンカードなどは不要ですが、設置場所は主に避難場所となる小中学校や公民館」(NTT東日本広報室)などに限られるという。
過去の教訓を踏まえ、公衆電話の利便性も増しているが、備えあれば憂いなし。使う機会は限られても、“もしもの時”に家族の安否や自分の無事を伝えるツールとなり得る、テレホンカードの有用性は変わらないという。
デイリー新潮編集部