新型コロナウイルスが5類感染症扱いとなり、街の飲食店では一昔前の賑わいを取り戻している。そんななか、都心の飲食店は「ネズミの大量発生問題」に直面している。 コロナ禍の際、営業自粛もあり、ネズミたちはエサを求めて繁華街から住宅街、公園などに移動したという。一時期、SNSなどでも頻繁にその様子がアップされていたので見たことがある人も多いだろう。
そして、コロナ禍が明け、飲食店が活気を取り戻した今、ネズミたちも繁華街へと舞い戻り、再び飲食店関係者を悩ませているそうだ。
以前紹介した「ネズミが大量発生した食べ放題店」の記事では、当時のアルバイト店員のAさんに、客を装って本社にクレームを入れるなど、ネズミが出る店で悪戦苦闘した経験談を語ってもらった。
そして今回、同じお店で働いていたパート店員のBさんにもお話を聞くことができた。夜の勤務がメインだったAさんに対し、昼をメインに勤務していたBさんが体験したネズミ事情はさらに衝撃的なものであった。
◆ネズミにとっても“食べ放題店”だった
2人が働いていたのは、さまざまな食材をバイキング形式で楽しめる某飲食店。繁華街から離れた郊外にあり、お店の周りは畑が多かったという。
Bさんは、自身が働いていた食べ放題店にネズミが出るようになった理由を解説をしてくれた。
「その土地の地主の人から聞いたんですけど、畑には食べ物があるのでネズミが住み着きやすいみたいです。近くには私が働いていた食べ放題店と中華料理屋が並んであって、ネズミにとっては最高の環境だったのではないでしょうか。しかも、お米やホットケーキミックスなどの冷蔵じゃない食べ物は、プレハブ小屋みたいなバックヤードに保管されていたので、ネズミも入りやすかったと思いますよ。畑があって、さらに種類の違う飲食店2つもあったら、まさにネズミにとっても食べ放題といえる環境だったのではないでしょうか」
◆隣の中華料理店はさらに壮絶な状況
朝からの勤務が多かったBさんは、地主の人以外にも開店前にお店にやってくるゴミ収集業者の人と会話することがあったとのこと。その業者の人から、ネズミにまつわる意外な話を聞いたという。
「ある日、オープン前にゴミ収集業者の方が来たとき、私たちの目の前をネズミが横切ったんです。私としては、すごく恥ずかしくて気まずくて、笑ってごまかしていたんですが……。その業者の方は普通の顔で『隣にある中華料理店はこんなもんじゃないですよ』と話しました。その方の話によると、隣の中華料理店でも毎日のようにネズミが出ていたそうで……。ただ、私たちと違うのは、そこで働く中国人の店員さんはネズミの存在に慣れていたようで、罠などは使わずにネズミを蹴って退治していたみたいなんです(笑)。その撃退方法も凄いですが、業者の人がいる前でやっていたことも驚きですよね」
Bさんのお店ではバックヤードに罠を仕掛けて捕獲し、処分していたのだが、隣接する中華料理店ではカンフー映画のワンシーンのように退治していたとのこと。その店では処分するわけではなく、追い払うだけの対応しかしていなかったようだ。
◆いい加減な処分方法に業者は怒り心頭
ゴミ収集業者の人も、お店にネズミがいるからといって特に驚くことはなかったのだが、ある日Bさんはその業者の人からこっぴどく怒られたという。

◆ネズミの処分をどうしてもできなかったBさん
捕獲されているネズミを粘着シートごと捨てても、生きている場合はゴミ袋からカサカサと音がするため、業者としては生きたまま捨てていることがすぐに分かるようだ。
「ちなみに私はネズミを処分するのが怖くて、どうしてもできなかったので、その時に一緒に働いていた人にお願いしていました。そのなかでも40代女性のパート店員Cさんがとってもたくましくて、『私に任せておき!』と言っていつも処分してくれましたね。私はゴキブリは叩いて殺すことはできますが、哺乳類のネズミを処分する勇気はなく、見ていることすらできませんでした……」
◆ドリンクバーの裏で見た凄まじい光景
元バイト店員だったAさんが語ってくれたように、罠にかかったネズミを処分する際には、袋に水を溜めて罠ごと突っ込んで溺死させていたとのこと。極度にネズミを怖がるBさんは、処分を躊躇なく行うCさんからイタズラをされたこともあったそうだ。
「ある日、Cさんから『面白いものを見せてあげる』と言われて、ドリンクバーのマシンの裏に連れていかれたんです。そしたら、そこにネズミの赤ちゃんが5匹くらい死んでて……。思わず悲鳴をあげちゃいました。やっぱり機械の周りは暖かいから居心地がいいんでしょうね。今これを話してても、思い出して鳥肌が立ちました。その死体をほうきとちりとりで掬いあげて死んでるかを確認してゴミ箱に捨てるCさんは、やっぱりたくましかったですね。イタズラは腹立ちましたけど……」
◆閉店した後でも残り続ける汚名
なお、この食べ放題店は3年ほど前に閉店したとのこと。しかし、Googleマップを見てみると、クチコミに『ネズミがホール内を走っていた』という投稿があり、現在も見られる状態になっていた。
一度ネットでこのようなことが書かれると、たとえその後、完全に解決していたとしても、信用を回復するには相当な時間と労力が必要となる。一昔前なら風化するものも、現代のネット社会ではそうもいかない。
そう考えると、飲食店に限らず、さまざまな出来事に対して常に誠実に向き合うことが求められる、よりシビアな時代になったといえるだろう。
取材・文/サ行桜井