全国に200店舗以上を展開するペットショップ大手「Coo&RIKU」(クーアンドリク)で、契約トラブルが続出している。「ペットの命を何だと思っているのか」と憤りを隠さないのが、今年6月に木更津店(千葉県・木更津市)で子犬を購入した女性(20代)である。引き渡された当日から子犬は体調を崩し、2日後に入院。獣医から「寄生虫に蝕まれていて瀕死の状態」と宣告された。だが、女性が店にクレームを入れると、「治療費は払えない。犬の交換ならできます」と突っぱねられたというのだ。
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【写真】病院に運ばれたとき、寄生虫に体を蝕まれ瀕死の状態だった「アモ」。点滴につながれた姿が痛々しいケージの中は汚物まみれだった 都内で一人暮らしをするA子さんは、半年くらいかけてネットで目当ての犬種を探していた。A子さんが欲しかった犬種は「キャバリア」と「ビションフリーゼ」のミックス犬。ぬいぐるみのような可愛らしさが特徴で、ミックス犬の中でも希少価値が高い犬種と知られる。全国に216店舗を展開するペットショップ「Coo&RIKU」 ネットで入荷情報を見つけて問い合わせるも、「売り切れました」と断られることの繰り返し。だが、粘り強く探し続けるうちに、今年の5月末、クーアンドリクのホームページで入荷情報を見つけた。すぐさま、サイトにあったLINE窓口から問い合わせると「まだいます」。アポを取って、2~3日後、当該犬がいる木更津店へと向かった。 だが、ようやく辿り着いた目当ての子犬はケージの中で汚物まみれになっていた。応対した店長はこう言った。「輸送疲れで下痢しているだけです。1週間くらいお待ちください」 その場で購入する予定だったが、逸る気持ちを抑えてその日は内金3万円を払い、帰宅して連絡を待った。5日ほど経って、再度問い合わせると、店長は「治りました。引き取りに来てください」。再び木更津へ向かった。瀕死の状態だった 前回と違って、ケージの中に汚物はなく、シャンプーもされていて下痢は治っているように見えた。店長はこう言った。「めちゃくちゃ元気になったんで、体調に問題ありません。今日お引き取りできますよ」〈良かった、治ったんだ!〉 A子さんはその場で代金の約50万円をカードで支払った。高額だったが、半年間も待ち望んだ初めての“我が子”だ。すでに、ケージや毛布を購入してお迎えの準備を整え、名前も「アモ」と決めていた。 だが、ここからA子さんに思いも寄らない悲劇が襲いかかるのである。 アモは家に帰ると、再び下痢をし始めた。初めての環境に慣れないストレスが原因かもしれないと2日くらい様子を見たが、食欲がなく下痢も止まらない。心配になったA子さんは自宅近くの動物病院に連れて行った。 獣医から聞かされたのは、衝撃の診断結果だった。「お腹の中に、ジアルジアと糞線虫という二種類の寄生虫がいる。それもすごい量で、腸内が荒れ果てている。タンパク質濃度が著しく下がっていて、命の危機にある。助かるか助からないかは五分五分の状況です」「治療費は払えないが、交換はできる」 アモはガリガリに痩せ細っていた。初めてペットを飼うA子さんは、アモが命の危機に瀕していた兆候に全く気づけなかったのである。そのまま入院させることにして、A子さんは契約を担当した木更津店の店長に電話を入れた。 店長は「元気じゃないワンちゃんを渡してしまってすみません」と一旦は詫びた。だが、現状について訴えると、「うちにいた時は元気でした」と店側の非を認めようとしなかった。 A子さん「もう入院させてしまったんです。治療費はどうするんですか?」 店長「契約を完了してしまったので、その後の治療費は支払うことはできません。ただ、同じような犬種との交換は可能です。もしくは、犬と引き換えに返金には応じられます」 A子さんがその時の怒りを語る。「まだ数日しか一緒に過ごしていないとはいえ、アモは我が子です。しかも、いつ死んでもおかしくない状況にいるのです。交換ということは、アモを病床から引っ剥がして、連れ出せということですよね。店に戻すなんて考えは思いも寄らなかった。こんなデタラメなペットショップに戻したら、この子が死んでしまうと思った」責任逃れする発言を続けた店長 A子さんは購入の際、「100ヶ月の生命保障制度」として、約21万円を一括で支払っていた。「これは入っておかないといけない、みたいな勧め方だった」とA子さんは振り返る。 この生命保障制度と5年縛りの「フード定額プラン」(A子さんの場合、2カ月で1万1759円)を一緒に加入すると、最大で50パーセント程度、値引きが受けられるサービスが同社の売りである。 だが、この生命保障制度は、保障期間内にケガや病気で購入したペットが死亡した場合に代替ペットを提供するというもので、治療費の賠償はできないと書かれている。それを盾に、店長は「治療費は支払えない」と言い続けたのである。 なお、A子さんは契約の際、別途、〈安心パック料金〉として5万8000円を支払っている。そこには、初回ワクチン代、狂犬病ワクチンなどの他に、虫下しやメディカルチェックも含まれているが、店長はこう反論し続けたという。「ブリーダーさんからペットショップに来た段階ではまだ卵の状態で、潜伏期間中だった可能性もある。引き渡し後の発症については当方では責任を負えない」 最初にA子さんが来店した時、下痢が止まらず引き渡しができない状況だったにもかかわらずである。契約が杜撰だったことを示す「証拠」 クーアンドリク側は「契約にサインをしている」と主張を曲げないが、そもそも、店長の契約時の説明自体が杜撰で、説明義務を怠っていた可能性もある。「流れ作業的に、この書類を読んでサインして、といくつかの書類にサインさせられるのですが、店長は途中で席を立ったりするので説明が不十分でした。実際、私がコピーを持ち帰った『ご契約チェックリスト』にも説明が不十分であったことが記録として残っています」(同) ご契約チェックリストとは、携帯電話を契約する際によくある、店員から契約に際してちゃんと説明があったかどうかを購入者が確認してチェックを入れる書類である。 A子さんが見せてくれたその控えには、確かに、〈性別の確認〉〈生命保障〉〈定期フード〉などの欄にはチェックが入っているものの、〈潜伏している可能性のある病気になどについては現状でのお渡しとなり、お迎え後に出るリスク、また当社での治療費の負担は出来かねる説明はありましたか?〉〈身体的特徴のチェックは実際にわん(ねこ)ちゃんを触りながら確認できましたか?〉など4点の確認項目にはチェックが入っていない。「この紙は店長に渡されて、チェックしておいてくださいと言われたものです。ただ、店長は書類に記入中、どこかへいなくなってしまう。説明がなかったところについては、後から説明があるのかなと思って、空欄にしておいたまま、契約が完了してしまったのです」(同)治療費13万円はA子さんが泣き寝入り その後、アモは入院中の投薬により快方に向かい、5日後に退院。退院後も店長との話し合いは続いたが、態度は硬化するばかりで、しまいにクレーマー扱いされたという。「最初の方は、謝る姿勢を見せていたのですが、上司に相談してからは強気に変わった。本部のカスタマーセンターにも電話しましたが、『木更津店とあなたのやり取りだから、木更津店の方に言っておきます』みたいな言われ方をして、取り合ってくれない。店長とは1週間くらい毎日のように電話をし続けましたが、最後に私が『この件を公表します』と言うと、『あなたのやっていることは脅迫です』とも言われました」(同) 最後に電話した6月15日以降、クーアンドリクからは連絡もない。アモは退院後、順調に快復し、現在は元気に過ごしているが、かかった治療費の約13万円はA子さんが負担したままだ。 A子さんが憤るのはお金の問題ばかりではない。「『交換ならできます』というのはどういうことなのか。“不良品だったので取り替えます”みたいな言い草です。大手だと思って安心して購入したのに、ペットの命についてどう考えているのか、不信感でいっぱいです」 クーアンドリクにこのトラブルについて問い合わせたところ、書面で下記の回答が届いた。〈該当ワンちゃん(以下、「生体」といいます。)が店舗へ来た段階で、体調不良(お腹が緩く下痢症状)により、様子を見ておりました最中、A子様が生体を気に入ってくださり、お迎えいただく運びとなりました。 しかしながら、生体の体調面からお渡しは後日ということとなり、3日後に生体の体調が復調したため、A子様へご連絡し、2023年6月7日(水)に契約・引渡しの運びとなりました。その際に、A子様は、ご同行の方と共に説明を受けられ、持参されたキャリーケースに生体を入れられましたが、一旦、生体を出していただき弊社スタッフとA子様で生体の身体的チェックを実施させていただきました。 生体は動物であるがゆえに、病気を含めて何があるか分かりませんので、売買契約上、先天性疾患が発見された場合については保証させていただくこととなっております。他方、今回のような後天性の疾患につきましては、多額の治療費が発生してしまうことがありますので、ペット医療保険への加入を勧めさせていただいております。ペット医療保険は、生体のお引き渡し当日から適用されますが、A子様においてはお知り合いにペット医療保険の事業者さんがいらっしゃるとのことで、弊社がご提案したペット医療保険には加入しないとのご判断でした。 上記の事実経過からしますと、チェックシートの記載漏れは、弊社スタッフの記入ミスであると思われますが、生体のお引き渡し3日後のジアルジア、糞線虫という後天性疾患に鑑みますと、弊社がお勧めしたペット医療保険にご加入されなかったとはいえ、A子様に寄り添った対応が必要な事案であったと考えております。A子様には大変なご迷惑、ご心労をお掛けしていることと存じますので、今後につきましては、A子様のご要望を踏まえて個別に対応させていただく所存です〉 後編〈ペットショップ「クーアンドリク」の杜撰すぎる契約書 「広告の3万3250円が…」「断ったはずの生命保障制度に加入させられていた」〉では、同社でチワワを購入した女性のトラブル事例を紹介する。デイリー新潮取材班
都内で一人暮らしをするA子さんは、半年くらいかけてネットで目当ての犬種を探していた。A子さんが欲しかった犬種は「キャバリア」と「ビションフリーゼ」のミックス犬。ぬいぐるみのような可愛らしさが特徴で、ミックス犬の中でも希少価値が高い犬種と知られる。
ネットで入荷情報を見つけて問い合わせるも、「売り切れました」と断られることの繰り返し。だが、粘り強く探し続けるうちに、今年の5月末、クーアンドリクのホームページで入荷情報を見つけた。すぐさま、サイトにあったLINE窓口から問い合わせると「まだいます」。アポを取って、2~3日後、当該犬がいる木更津店へと向かった。
だが、ようやく辿り着いた目当ての子犬はケージの中で汚物まみれになっていた。応対した店長はこう言った。
「輸送疲れで下痢しているだけです。1週間くらいお待ちください」
その場で購入する予定だったが、逸る気持ちを抑えてその日は内金3万円を払い、帰宅して連絡を待った。5日ほど経って、再度問い合わせると、店長は「治りました。引き取りに来てください」。再び木更津へ向かった。
前回と違って、ケージの中に汚物はなく、シャンプーもされていて下痢は治っているように見えた。店長はこう言った。
「めちゃくちゃ元気になったんで、体調に問題ありません。今日お引き取りできますよ」
〈良かった、治ったんだ!〉
A子さんはその場で代金の約50万円をカードで支払った。高額だったが、半年間も待ち望んだ初めての“我が子”だ。すでに、ケージや毛布を購入してお迎えの準備を整え、名前も「アモ」と決めていた。
だが、ここからA子さんに思いも寄らない悲劇が襲いかかるのである。
アモは家に帰ると、再び下痢をし始めた。初めての環境に慣れないストレスが原因かもしれないと2日くらい様子を見たが、食欲がなく下痢も止まらない。心配になったA子さんは自宅近くの動物病院に連れて行った。
獣医から聞かされたのは、衝撃の診断結果だった。
「お腹の中に、ジアルジアと糞線虫という二種類の寄生虫がいる。それもすごい量で、腸内が荒れ果てている。タンパク質濃度が著しく下がっていて、命の危機にある。助かるか助からないかは五分五分の状況です」
アモはガリガリに痩せ細っていた。初めてペットを飼うA子さんは、アモが命の危機に瀕していた兆候に全く気づけなかったのである。そのまま入院させることにして、A子さんは契約を担当した木更津店の店長に電話を入れた。
店長は「元気じゃないワンちゃんを渡してしまってすみません」と一旦は詫びた。だが、現状について訴えると、「うちにいた時は元気でした」と店側の非を認めようとしなかった。
A子さん「もう入院させてしまったんです。治療費はどうするんですか?」
店長「契約を完了してしまったので、その後の治療費は支払うことはできません。ただ、同じような犬種との交換は可能です。もしくは、犬と引き換えに返金には応じられます」
A子さんがその時の怒りを語る。
「まだ数日しか一緒に過ごしていないとはいえ、アモは我が子です。しかも、いつ死んでもおかしくない状況にいるのです。交換ということは、アモを病床から引っ剥がして、連れ出せということですよね。店に戻すなんて考えは思いも寄らなかった。こんなデタラメなペットショップに戻したら、この子が死んでしまうと思った」
A子さんは購入の際、「100ヶ月の生命保障制度」として、約21万円を一括で支払っていた。「これは入っておかないといけない、みたいな勧め方だった」とA子さんは振り返る。
この生命保障制度と5年縛りの「フード定額プラン」(A子さんの場合、2カ月で1万1759円)を一緒に加入すると、最大で50パーセント程度、値引きが受けられるサービスが同社の売りである。
だが、この生命保障制度は、保障期間内にケガや病気で購入したペットが死亡した場合に代替ペットを提供するというもので、治療費の賠償はできないと書かれている。それを盾に、店長は「治療費は支払えない」と言い続けたのである。
なお、A子さんは契約の際、別途、〈安心パック料金〉として5万8000円を支払っている。そこには、初回ワクチン代、狂犬病ワクチンなどの他に、虫下しやメディカルチェックも含まれているが、店長はこう反論し続けたという。
「ブリーダーさんからペットショップに来た段階ではまだ卵の状態で、潜伏期間中だった可能性もある。引き渡し後の発症については当方では責任を負えない」
最初にA子さんが来店した時、下痢が止まらず引き渡しができない状況だったにもかかわらずである。
クーアンドリク側は「契約にサインをしている」と主張を曲げないが、そもそも、店長の契約時の説明自体が杜撰で、説明義務を怠っていた可能性もある。
「流れ作業的に、この書類を読んでサインして、といくつかの書類にサインさせられるのですが、店長は途中で席を立ったりするので説明が不十分でした。実際、私がコピーを持ち帰った『ご契約チェックリスト』にも説明が不十分であったことが記録として残っています」(同)
ご契約チェックリストとは、携帯電話を契約する際によくある、店員から契約に際してちゃんと説明があったかどうかを購入者が確認してチェックを入れる書類である。
A子さんが見せてくれたその控えには、確かに、〈性別の確認〉〈生命保障〉〈定期フード〉などの欄にはチェックが入っているものの、〈潜伏している可能性のある病気になどについては現状でのお渡しとなり、お迎え後に出るリスク、また当社での治療費の負担は出来かねる説明はありましたか?〉〈身体的特徴のチェックは実際にわん(ねこ)ちゃんを触りながら確認できましたか?〉など4点の確認項目にはチェックが入っていない。
「この紙は店長に渡されて、チェックしておいてくださいと言われたものです。ただ、店長は書類に記入中、どこかへいなくなってしまう。説明がなかったところについては、後から説明があるのかなと思って、空欄にしておいたまま、契約が完了してしまったのです」(同)
その後、アモは入院中の投薬により快方に向かい、5日後に退院。退院後も店長との話し合いは続いたが、態度は硬化するばかりで、しまいにクレーマー扱いされたという。
「最初の方は、謝る姿勢を見せていたのですが、上司に相談してからは強気に変わった。本部のカスタマーセンターにも電話しましたが、『木更津店とあなたのやり取りだから、木更津店の方に言っておきます』みたいな言われ方をして、取り合ってくれない。店長とは1週間くらい毎日のように電話をし続けましたが、最後に私が『この件を公表します』と言うと、『あなたのやっていることは脅迫です』とも言われました」(同)
最後に電話した6月15日以降、クーアンドリクからは連絡もない。アモは退院後、順調に快復し、現在は元気に過ごしているが、かかった治療費の約13万円はA子さんが負担したままだ。
A子さんが憤るのはお金の問題ばかりではない。
「『交換ならできます』というのはどういうことなのか。“不良品だったので取り替えます”みたいな言い草です。大手だと思って安心して購入したのに、ペットの命についてどう考えているのか、不信感でいっぱいです」
クーアンドリクにこのトラブルについて問い合わせたところ、書面で下記の回答が届いた。
〈該当ワンちゃん(以下、「生体」といいます。)が店舗へ来た段階で、体調不良(お腹が緩く下痢症状)により、様子を見ておりました最中、A子様が生体を気に入ってくださり、お迎えいただく運びとなりました。
しかしながら、生体の体調面からお渡しは後日ということとなり、3日後に生体の体調が復調したため、A子様へご連絡し、2023年6月7日(水)に契約・引渡しの運びとなりました。その際に、A子様は、ご同行の方と共に説明を受けられ、持参されたキャリーケースに生体を入れられましたが、一旦、生体を出していただき弊社スタッフとA子様で生体の身体的チェックを実施させていただきました。
生体は動物であるがゆえに、病気を含めて何があるか分かりませんので、売買契約上、先天性疾患が発見された場合については保証させていただくこととなっております。他方、今回のような後天性の疾患につきましては、多額の治療費が発生してしまうことがありますので、ペット医療保険への加入を勧めさせていただいております。ペット医療保険は、生体のお引き渡し当日から適用されますが、A子様においてはお知り合いにペット医療保険の事業者さんがいらっしゃるとのことで、弊社がご提案したペット医療保険には加入しないとのご判断でした。
上記の事実経過からしますと、チェックシートの記載漏れは、弊社スタッフの記入ミスであると思われますが、生体のお引き渡し3日後のジアルジア、糞線虫という後天性疾患に鑑みますと、弊社がお勧めしたペット医療保険にご加入されなかったとはいえ、A子様に寄り添った対応が必要な事案であったと考えております。A子様には大変なご迷惑、ご心労をお掛けしていることと存じますので、今後につきましては、A子様のご要望を踏まえて個別に対応させていただく所存です〉
後編〈ペットショップ「クーアンドリク」の杜撰すぎる契約書 「広告の3万3250円が…」「断ったはずの生命保障制度に加入させられていた」〉では、同社でチワワを購入した女性のトラブル事例を紹介する。
デイリー新潮取材班