ふだん街を歩いたり車に乗っていると、道路を行き交ったり駐車場に停めてある他の車のナンバープレートが気になるという人も多いのではないだろうか。
筆者の場合、ドライバーそれぞれの個性や好みが垣間見られ、想像が膨らむから一向に飽きない。この頃の流行りは「358」とされる。その詳細については関連記事《全国でなぜか大人気! 自動車のナンバープレートで『358』と『3588』が急増している「本当の理由」》に譲るが、社会の閉塞感もあって幸福思考が増しているのだろう。名古屋では2021年4月から全国に先駆けて、「358」は抽選対象番号に指定されるほどの人気だという。
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幸運ナンバーを「エンジェルナンバー」と呼ぶ人もいて、そうなると神社仏閣巡り、パワーストーンや縁起物の数珠が流行るのと一緒だ。
かつては、ゾロ目やシンプルなキリ番(55、100など)が偶然取得できれば「(運を)持ってる人」とされ、オーナーも自慢げだったが、その後、好きなナンバーがとれる希望番号制度が1998年5月から一部地域でスタートし、翌年5月から全国で実施された(2005年1月からは軽自動車も対象となった)。
当初、1111や8888は当然人気になったが、現在もそれらの希望者は多く、抽選待ちだ。車種に合わせたナンバーは良く目にする。ポルシェの911、スカイラインGTRの型式32、33、34、35。RX-7の7、ミニクーパーの32、3298は多い。
たとえばE.YAZAWAファンの830や4649のように、好きな著名人の名前にあやかったり、自らの職業や名字、趣味を意識したナンバーもよく見かける。競馬関係者の知り合いに11(獣医)がいたし、故人の後藤浩輝騎手は510だった。近年はもうすっかり見なくなったが、83、893、5910(極道)というのもあった(そのナンバーには気をつけろよとネタにしていた教習所の教官もいた)。
湘南界隈を走っていると、1173(いい波)というサーファーもいる。最近の大谷翔平選手の活躍もあってか、WBC以降、17を見かけるようにもなった。
縁起担ぎが好きなギャンブラーは、チンチロリン・サイコロ博打の最強数456、麻雀の1181(いい牌)。警察官のプライベートカーの110、消防士の119は、いずれも自らの仕事に誇りを持っているのだろうし、実際、仕事熱心なんだろう。気象予報士の資格を有する知人のナンバーは177だった。
わが子の誕生日をナンバーにしている人もいる。当人の誕生日が直接表示されている車は個人情報の観点から、今は危険視されている。1122(いい夫婦)や1188(いいパパ)は人気があるが、結婚記念日は別れてしまったら厄介だ。
筆者が浅草界隈に住んでいた頃は、吉原(この住所は今はなく、正式には千束3丁目~4丁目)と上野駅や日暮里駅間を走る送迎ワゴン車のナンバーに目を凝らしたものだった。台東区竜泉のバス通りや入谷の金美館通りを、19、26、69、1126、4126、4919、8181というナンバーが走っている。
このうち、あるナンバーで、ひと騒動起こした知人女性がいる。
まだ希望ナンバーが取得できないバイク――ホンダのスクーターを購入した彼女に割り当てられたナンバーが、住んでいる区の、Hの69だったのだ。
既婚者で子どももいる彼女は、「エッチのシックスナインってどういうことよ!」と烈火の如く怒って、区役所に変更を迫ったのである。
しかし、この話を聞いた筆者は、間髪を入れず「そのナンバーをバイクごと売ってくれ」と頼んだ。
二輪レースファンの間では、2006年に世界最高峰MotoGPでHONDAのマシンでチャンピオンになり、その後サイクリング中に不慮の事故に遭い、2017年5月22日にこの世を去ったレーサーのニッキー・ヘイデンのことが広く知られている。
彼のゼッケンナンバーが69。つまりHONDAのヘイデンのHの69となれば、ファンにとっては垂涎のナンバーだからだ(ちなみに引退したバレンチーノ・ロッシの46も人気が高く、バイクレース会場の駐車場では46の車が多く見られる)。
だが時すでに遅し。怒髪天を衝く彼女の剣幕に、区役所側はやむなくそのナンバーを抹消して異なる番号を交付したのだった。
この話をバイク乗り仲間にすると同音異口「なんで、もったいない」となる。車と違ってバイクの希望ナンバーの取得には苦労するからだ。
交付先にアルバイトを雇って並ばせ、自分の名前にちなんだ数字を取得しようとする芸能人もいる。筆者はゾロ目を求めて役所の交付係に毎日電話をして、「いま何番ですか」と訊ねる日が続いたことがある。
相手もこうした電話の対応には慣れており、希望番号が近づくと「そろそろ並んだ方が良いですよ」と教えてくれたものだ。郵便局が耐用年数の切れたバイクを何十台も入れ替えると、連番ナンバーがごそっと交付されてしまったり、バイクのツーリングシーズンや新年度が始まる春になると希望ナンバー取得は困難を極めるので、冬が狙い目だった。
このような、ナンバープレートに関するあれこれは日本だけに限らない。
後編記事『アメリカでいま、日本車のナンバープレートが高額で取引されている「ヤバすぎるワケ」』では、アメリカでいま起きている“異変”について紹介しよう。