厚生労働省の人口動態統計特殊報告によると、離婚件数は年々減少傾向にある。一方で、熟年離婚は増加し、2020年には20年以上同居した夫婦の離婚率が21.5%と過去最高を更新した。その後もほぼ横ばい状態が続いている。
長年連れ添った相手と別れた後に待つのは、幸せな生活か、それとも後悔の日々か。
【映像】熟年離婚の原因ランキング ベスト3(画像あり) 北海道で暮らす高橋さん(仮名・54歳)は2年前、21年間連れ添ったパートナーと熟年離婚した。

「早起きができたら朝歩いたり、時間ができたら夕方から歩いたりする時もある。幸せなことだ」 夫に借金や浮気はなかった。なぜ、離婚に踏み切ったのか。「結婚したら出産も育児も全部が初めてのことだった。でも、そういう1個ずつのことが『俺は苦手だから』と言われちゃって。段々と『もう頼るのはやめちゃおうかな』となった」 子育てや家庭の相談に乗ってもらえず、それでも家族を支えてきた高橋さん。離婚を決意したのは、2018年に起きた北海道胆振東部地震がきっかけだった。「地震で北海道全域がブラックアウトした。電気が通ってないから、家族でただシーンとした家の中にいるしかなかった。私が『こうしようか』と夫に言った時に『あぁ?』って感じの態度だった。もう無理かもと思った」 熟年離婚をして2年。今の思いについて聞くと「快適だ。自分が死ぬ時に『よく頑張ったね』って褒められて死ぬより『あー自分の人生楽しかった!』と言って死にたい」と話す。今は相手がいない分、好きなテレビを見たり、おしゃれを楽しんだり、自分のために使える時間があり、それが一番の幸せだという。■結婚生活28年目で別居…離婚を決意したポヨさんのケース ポヨさん(仮名)も昨年、夫に離婚を告げる置き手紙を残して家を出た。結婚生活は28年、現在は離婚調停中だ。「当初から結婚生活や人生のパートナーについて“認識の違い”があると折々感じていた。そこに、金銭トラブルやモラハラ、家族の話を聞かないなどの不満が徐々に募って、けんかすることがあった。私を見た子どもたちからは“修行僧”と言われていた」 夫に対して「態度を改めてほしい」と伝えることはしなかったのか。「夫はかなり男尊女卑で、父権意識の強い人だった。『収入がある者が意見を言っていい』という認識があったと思う。だから、私や子どもたちの意見は全然歯牙にもかけない感じだ。子どもも私と一緒に家を出た。一人はまだ学生なので、一緒に住んでいる。夫はずっと『離婚はしない』と主張している。今は調停中で、財産分与などを話し合う準備をしている段階だ。やり取りは弁護士を通じてやっていて、直接コンタクトはとっていない」 離婚届をテーブルに出したところで「全く話が進まない、こじれるだけだ」と思ったポヨさん。「私も“普通の家庭”として、愛着を強く持っていた。ただ、過去に大きい借金問題が2回あって、さすがに離婚を考えた。『ギャンブルや借金を続けるのか、離婚するのか』と迫った時に『ギャンブルをやめる』と言った。それを信じていた。結婚当初からもっと話し合いができる環境だったら、違っていたかなと思う。そういう時間が持てなかったことが、今も尾を引いているのだと思う」 ポヨさんのケースに、夫婦問題研究家の岡野あつこ氏は「熟年離婚のありがちなセオリーだ」と話す。「もう話し合っても無駄だと思って、弁護士を立てて黙って手紙を置いていく。そして、調停で話し合いができなかったら、裁判までいく。円満に離婚したいと思っても、パートナーが同じ方向を向いていない。これが長引く熟年離婚のケースだ」 外資IT企業で働く64歳の薄井シンシア氏も、結婚生活30年で熟年離婚をしたという。「全ての熟年離婚がネガティブというわけではない。私も熟年離婚だが、元夫とすごく揉めたり、夫に悪いところがあったわけではない。お互い人生に求めているものが違うから、離婚して新しい人生を始めようとなった。相手側に全て責任があるように取り上げるのは、違和感がある。30年間も一緒にいればもう家族だ。いきなり他人にはなれない。子どもがいるからこそ、揉めて離婚はしたくなかった。いくら離婚したからといっても、大事な娘の父親だ」 その上で、薄井氏は「離婚になっても“いい人”でいてくれる人かどうか。結婚する時によく選んだほうがいい」と指摘。「私は結婚に賞味期限があると思っている。人生が長くなったのだから、40年も50年も同じ人と結婚しているのは、すごく無理がある。終身雇用と同じように、終身結婚はもうない。『いつかくるかもしれない』と思って、いざとなったら円満に離婚できるように準備しておくほうがいい」(「ABEMA Prime」より)
北海道で暮らす高橋さん(仮名・54歳)は2年前、21年間連れ添ったパートナーと熟年離婚した。
「早起きができたら朝歩いたり、時間ができたら夕方から歩いたりする時もある。幸せなことだ」
夫に借金や浮気はなかった。なぜ、離婚に踏み切ったのか。
「結婚したら出産も育児も全部が初めてのことだった。でも、そういう1個ずつのことが『俺は苦手だから』と言われちゃって。段々と『もう頼るのはやめちゃおうかな』となった」
子育てや家庭の相談に乗ってもらえず、それでも家族を支えてきた高橋さん。離婚を決意したのは、2018年に起きた北海道胆振東部地震がきっかけだった。
「地震で北海道全域がブラックアウトした。電気が通ってないから、家族でただシーンとした家の中にいるしかなかった。私が『こうしようか』と夫に言った時に『あぁ?』って感じの態度だった。もう無理かもと思った」
熟年離婚をして2年。今の思いについて聞くと「快適だ。自分が死ぬ時に『よく頑張ったね』って褒められて死ぬより『あー自分の人生楽しかった!』と言って死にたい」と話す。今は相手がいない分、好きなテレビを見たり、おしゃれを楽しんだり、自分のために使える時間があり、それが一番の幸せだという。
ポヨさん(仮名)も昨年、夫に離婚を告げる置き手紙を残して家を出た。結婚生活は28年、現在は離婚調停中だ。
「当初から結婚生活や人生のパートナーについて“認識の違い”があると折々感じていた。そこに、金銭トラブルやモラハラ、家族の話を聞かないなどの不満が徐々に募って、けんかすることがあった。私を見た子どもたちからは“修行僧”と言われていた」
夫に対して「態度を改めてほしい」と伝えることはしなかったのか。
「夫はかなり男尊女卑で、父権意識の強い人だった。『収入がある者が意見を言っていい』という認識があったと思う。だから、私や子どもたちの意見は全然歯牙にもかけない感じだ。子どもも私と一緒に家を出た。一人はまだ学生なので、一緒に住んでいる。夫はずっと『離婚はしない』と主張している。今は調停中で、財産分与などを話し合う準備をしている段階だ。やり取りは弁護士を通じてやっていて、直接コンタクトはとっていない」
離婚届をテーブルに出したところで「全く話が進まない、こじれるだけだ」と思ったポヨさん。
「私も“普通の家庭”として、愛着を強く持っていた。ただ、過去に大きい借金問題が2回あって、さすがに離婚を考えた。『ギャンブルや借金を続けるのか、離婚するのか』と迫った時に『ギャンブルをやめる』と言った。それを信じていた。結婚当初からもっと話し合いができる環境だったら、違っていたかなと思う。そういう時間が持てなかったことが、今も尾を引いているのだと思う」
ポヨさんのケースに、夫婦問題研究家の岡野あつこ氏は「熟年離婚のありがちなセオリーだ」と話す。
「もう話し合っても無駄だと思って、弁護士を立てて黙って手紙を置いていく。そして、調停で話し合いができなかったら、裁判までいく。円満に離婚したいと思っても、パートナーが同じ方向を向いていない。これが長引く熟年離婚のケースだ」
外資IT企業で働く64歳の薄井シンシア氏も、結婚生活30年で熟年離婚をしたという。
「全ての熟年離婚がネガティブというわけではない。私も熟年離婚だが、元夫とすごく揉めたり、夫に悪いところがあったわけではない。お互い人生に求めているものが違うから、離婚して新しい人生を始めようとなった。相手側に全て責任があるように取り上げるのは、違和感がある。30年間も一緒にいればもう家族だ。いきなり他人にはなれない。子どもがいるからこそ、揉めて離婚はしたくなかった。いくら離婚したからといっても、大事な娘の父親だ」
その上で、薄井氏は「離婚になっても“いい人”でいてくれる人かどうか。結婚する時によく選んだほうがいい」と指摘。
「私は結婚に賞味期限があると思っている。人生が長くなったのだから、40年も50年も同じ人と結婚しているのは、すごく無理がある。終身雇用と同じように、終身結婚はもうない。『いつかくるかもしれない』と思って、いざとなったら円満に離婚できるように準備しておくほうがいい」
(「ABEMA Prime」より)