テレ朝newsは5月30日、「高級スクール突然閉鎖 “授業料500万円”返金されず 保護者困惑…創立者の言い分は」との記事を配信した。東京・港区にある“インターナショナルスクール”が突然閉鎖。年間500万円にのぼる授業料を返金せず、保護者が困惑しているという内容だった。
***
【写真を見る】家賃が未払いになっている「シャトースクール」の建物 テレビ朝日によると、このスクールは2015年に開校。0歳から6歳までの幼児、およそ100人が通っていたという。

「インターナショナルスクール」との名称を使っているにもかかわらず、《0歳~6歳の幼児》しか通っていないという点に違和感を覚えた方もいるだろう。この点については後で詳述する。リナ・ローズさん(Yuma Yoshitsugu, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons) スクールは地下1階・地上2階建てのビルと賃貸契約を結んでいた。港区西麻布という一等地に位置し、コンクリートの打ちっぱなしの外壁に大きなガラス窓という美しい外観も印象的だ。 トラブルの原因はスクール側の家賃滞納だったという。建物オーナーの代理人弁護士がテレ朝の取材に応じた。 弁護士によると、家賃滞納によって立ち退きが決まったのは2017年11月。オーナー側はいつでも強制執行が可能だったが、幼児が通う“教育施設”であることに配慮し、協議や調停を打診していたという。 しかし、話し合いで解決することはなく、今年3月に明け渡しの強制執行が行われた。 強制執行が行われたことで、授業料の問題も浮上した。2017年11月に立ち退きが決まったにもかかわらず、スクール側は《保護者に対して今年度の授業料の振り込みを要求》していたとテレ朝は報じた。プラダジャパンを提訴 スクールの創立者であるリナ・ローズさんはテレ朝の取材に応じ、《こちらは本当に何も悪いことをやっていないので。これだけは自信もって言えるのは、100%何も悪いことしてなくて》と“潔白”を訴えた。 リナ・ローズさんはWikipediaにも項目が存在し、それによると生年は《1974年》。続けて以下のような略歴が記載されている。《東京都出身の実業家》《本名は高桑里奈》《1980年代よりマサチューセッツ州のボーディングスクールに進学。ニューヨークの高校を卒業》《1998年、ニューヨークのパーソンズ美術大学BBAデザインマーケティング学科卒業。米国のシャネルに就職》 さらに《プラダジャパンに転職し、2009年に不当に解雇されたとして訴訟を起こした》との記述がある。この件についてファクトチェックを行うと、3つの記事を見つけることができた。 まず、毎日新聞が2010年4月16日の夕刊に「提訴:プラダジャパン元部長が不当解雇で 慰謝料請求」との記事を掲載した。記事内容は以下の通りだ。《元女性部長が「容姿や服装に関する上司の発言などを、本社に報告したところ不当に解雇された」として、日本法人に慰謝料と解雇無効の確認を求める訴えを東京地裁に起こしたことが分かった》プラダが勝訴 毎日新聞はプラダ側の《プラダのイメージを傷つけるいかなる非難も名誉棄損とみなし、断固反論する》とのコメントも掲載した。 この訴訟について続報を伝えたのは、フランスのAFP通信が運営するAFPBB News(日本語電子版)だった。 同年8月25日、「プラダジャパン、不当解雇を訴えた元販売部長を逆提訴」との記事を配信。当時、リナ・ローズさんは「ボブリース里奈」という名前だったようだ。《イタリアの高級ブランド「プラダ(Prada)」の日本法人「プラダジャパン(Prada Jpan)」は、容姿などを理由に不当に解雇されたとして同社を訴えていた元販売担当部長のボブリース里奈(Rina Bovrisse)さんを逆提訴した》 結果はプラダ側の勝訴。日テレNEWSは2012年12月26日、「プラダ元女性部長敗訴 セクハラ抗議で解雇」との記事を配信した。《裁判は、「プラダジャパン」の元統括部長・ボヴリース里奈さん(38)が09年、上司から「プラダルックにしろ」「痩せろ」「君の醜さが恥ずかしい」などと言われて抗議したところ、解雇されたと主張して、会社に損害賠償などを求めていた》《東京地裁は26日、「上司が『醜い』と発言したとは認められない」として、解雇は有効と判断した。また、「別ブランドの製品を身につけて出勤していたことを注意するのは社会通念上、相当」で、「体形に関する発言は配慮を欠いた面があるが、慰謝料を認めるほどではない」として、ボヴリースさん側の訴えを退けた》スクールの開校 翌13年、リナ・ローズさんはファッション誌「Grazia」3月号(講談社・休刊)の記事に登場した。 この時の名前はリナ・シャトーさんだった。記事の書き出しには《リナ・シャトーさんは2年前表参道に(現在は原宿に移転)インターナショナルスクールを立ち上げた》とある。《起業前はハイブランドのマーケット・アナリストなど、ファッション業界で華々しく活躍していた。居住地もNY、パリ、ハワイなど。その彼女がなぜ日本で、しかも“教育”のジャンルでの企業を目指したのか?》 この問いかけにリナ・ローズさんは次のように説明する。《私自身、13歳で海外に出て以来、世界中で学びました。その経験を通して、語学が堪能で、自分の個性を主張できれば世界中どこでだって、自由に生きていけることを実感してきたのです。しかし、残念ながら日本の幼児教育のスタイルでは、語学力を磨き、確かな判断力を培うのはなかなか難しい……。だからこそ、このような学びの場を作る必要があると思ったのです》 記事は《息子の存在も大きかった》と指摘し、リナ・ローズさんは《彼が2歳になるまでは、会社員としてそれはハードに働いていました》と振り返った。《息子の成長を実感する余裕のないまま毎日が過ぎていく中、子育てと仕事の理想的な環境は、起業でしか作れないと思いました。また母となったことで価値観が変わり、興味の中心がファッションではなく“教育”へと変わったことも理由のひとつでしたね》《彼女の夢はさらに広がっていく》──この一文のあとリナ・ローズさんは《いずれは海外にも開校して、よりグローバルなスクールにしたいです》と抱負を語った。殺到するメディア「Grazia」の記事から2年後の2015年5月、ファッション関連のニュースを中心とした情報サイト「FASHIONSNAP」は「新インターナショナルスクールが六本木に」との記事を配信した。 本来のタイトルには東証に上場するセレクトショップ大手の社名と関係者の名前が記載されており、記事には経営に参画するとの記述がある。だが、ここでは割愛した。記事のポイントを紹介しよう。 スクールの運営元は《シンガポールの外資系投資企業》であり、《代表取締役社長は創始者で日本国籍のリナ・ボヴリース》と伝えた。 経営方針は《“MADE IN JAPAN”のインターナショナルスクールと質の高い教材の世界展開を主な事業とし、日本のクリエイティブが詰まった初のインターナショナルスクールの世界展開を計画。東京に続きニューヨークに開設が企画されている》と報じている。 WEBマガジンの「OPENERS」も2015年7月、「革新的なインターナショナルスクールが東京・西麻布に開校」との記事を配信した。骨子を箇条書きにしてお伝えする。◆子供が持つ秘めた才能を宝石のように輝かせる革新的な幼児教育プログラム◆子供たちが“パスポート”を持って通学するという新しいコンセプト◆教える人たちは「Ambassador(大使)」と呼ばれ、世界各国から集まり、2カ国語以上を話し、World Diplomacy(世界外交)という特別プログラムを分かち合えるスキルを持ち合わせている◆学校の共通語は英語で、3歳から12歳までを対象にした語学プログラムには、スペイン語、フランス語、中国語、日本語とともに世界各国の料理を体験する機会もある認可外保育施設 学費は2022年から23年にかけての資料がネット上に残っていた。それによると、入学金は36万5000円。 午前9時から午後3時までの「スクール」が、半年払いで158万4000円、年間払いで288万円。 午前9時から午後6時までの「スクール&クラブ」が、半年払いで209万8800円、年間払いで381万6000円だった。 経営は順調だったように見える。2021年11月、創立10周年のプレスリリースを配信サービスの「PR TIMES」を通じて発表した。《原宿キャットストリートの地下の一室で生まれた小さなスクールは、2015年に西麻布に拠点を移した後、少しずつその歩みを大きくし、現在ではクリエイティブなファミリーのアイコンとなりました》 さらに、2018年にアメリカに設立されたスクールに《本部機関を移転いたしました》と発表している。 先に紹介した通り、このスクールは0歳から6歳が対象であり、日本の法律では「認可外保育施設」となる。 東京都福祉保健局のサイトには、2015年度の「立入調査結果」の一覧が公表されている。それによると、この施設が「問題点を指摘されたが後に改善されたもの(×→〇)」と記載されたポイントは以下の7点だった。立ち入り検査の結果==(×→〇)と記載されたポイント==【1】乳児と幼児の保育場所が区画されている【2】便所及び保育室専用の手洗い設備が設けられている【3】基本的な発育チェックを毎月行っている【4】調理・調乳に携わる職員の検便が実施されている【5】感染症への対応が適切である【6】児童安全の確保の配慮がなされている【7】施設及びサービスに関する内容が掲示されている 一方、「×」のままとなっていたのは、《児童の避難に適した階段等が設けられている(3階以上の場合、保育室から300メートル以内)》だった。 日本人の多くが「インターナショナルスクール」と聞いて思い浮かべるのは、東京都調布市にあるアメリカンスクール・イン・ジャパン(ASIJ)だろう。 卒業生には、駐日大使を務めたエドウィン・O・ライシャワー(1910~1990)、タレントのジョン・カビラ(64)、ソニーグループの社長を務めた平井一夫氏(62)、歌手の宇多田ヒカル(40)──など多くの有名人がいる。 ASIJは東京都認可の各種学校。アメリカの教育法令に基づく全日制の男女共学校であり、アーリーラーニングセンター(3歳から5歳までが対象=日本の幼稚園に相当)と第1学年から第12学年(日本の小学校・中学校・高等学校に相当)までのクラスが運営されている。 株式会社が運営する認可外保育施設とは、法的な位置づけも施設の規模も全く違うことが分かる。子供を通わせていた芸能人 ASIJは文部科学省の学習指導要領に沿った教育が行われないことから、長年、日本の小・中・高校の卒業生とは見なされなかった。 しかし2003年に改正が行われ、第12学年を修了すると、日本の高等学校卒業者と対等な資格を得られることになった。 こうした事実を見ると、リナ・ローズさんが運営するスクールは「英語教育に力を入れている認可外保育園であって、インターナショナルスクールではない」と考える保護者がいても不思議はないだろう。 とはいえ、先に紹介した通り、保育園としては桁違いの学費が必要であるにもかかわらず、かなりの人気を集めていたようだ。 NEWSポストセブンは5月31日、「《500万円返金トラブル》麻布の高級インターナショナルスクールが怒りの反論声明 リナ・ローズ氏が2011年に創立、保護者には芸能人や一流アスリートも」との記事を配信した。 記事では教育系ライターが《麻布エリアにあり、子どもを通園させる芸能人や一流アスリートなども実際に複数名いました》と証言している。裕福な保護者が、子供を通わせていたようだ。 スクール側はInstagramに反論の文書を掲載した(註)。次回は加熱を続ける“インターナショナルスクール”業界の問題点について取り上げる。スクール側の反論註:6月2日現在、スクール側がInstagramに掲載した文書は以下の2本【1】Fake News Apology by TV Asahi “Good Morning”show on May 30,2023(https://www.instagram.com/p/Cs4-vsgobJ2/)【2】Children’s Rights & Violence Against Teachers(https://www.instagram.com/p/Cs9VaQRsX-F/) このうち【1】を翻訳し、要旨をまとめたものを以下に掲載する。◆テレビ朝日の報道は、事実のねじ曲げ、虚報、中傷的な内容が含まれ、我々の評価を著しく毀損した。◆テレビ朝日に対し、あらゆる名誉毀損行為と商標の無断使用の停止、ネット上の関連素材の削除、公の場での謝罪を求める。◆慎重に検討した結果、悪意ある行動をとった2人の保護者に対し法的措置を取る。発生した損害については適切な補償を求める。◆我々は悪意ある一派に責任を取らせるべく、利用可能な全ての法的手段を徹底的に追求する。デイリー新潮編集部
テレビ朝日によると、このスクールは2015年に開校。0歳から6歳までの幼児、およそ100人が通っていたという。
「インターナショナルスクール」との名称を使っているにもかかわらず、《0歳~6歳の幼児》しか通っていないという点に違和感を覚えた方もいるだろう。この点については後で詳述する。
スクールは地下1階・地上2階建てのビルと賃貸契約を結んでいた。港区西麻布という一等地に位置し、コンクリートの打ちっぱなしの外壁に大きなガラス窓という美しい外観も印象的だ。
トラブルの原因はスクール側の家賃滞納だったという。建物オーナーの代理人弁護士がテレ朝の取材に応じた。
弁護士によると、家賃滞納によって立ち退きが決まったのは2017年11月。オーナー側はいつでも強制執行が可能だったが、幼児が通う“教育施設”であることに配慮し、協議や調停を打診していたという。
しかし、話し合いで解決することはなく、今年3月に明け渡しの強制執行が行われた。
強制執行が行われたことで、授業料の問題も浮上した。2017年11月に立ち退きが決まったにもかかわらず、スクール側は《保護者に対して今年度の授業料の振り込みを要求》していたとテレ朝は報じた。
スクールの創立者であるリナ・ローズさんはテレ朝の取材に応じ、《こちらは本当に何も悪いことをやっていないので。これだけは自信もって言えるのは、100%何も悪いことしてなくて》と“潔白”を訴えた。
リナ・ローズさんはWikipediaにも項目が存在し、それによると生年は《1974年》。続けて以下のような略歴が記載されている。
《東京都出身の実業家》《本名は高桑里奈》《1980年代よりマサチューセッツ州のボーディングスクールに進学。ニューヨークの高校を卒業》
《1998年、ニューヨークのパーソンズ美術大学BBAデザインマーケティング学科卒業。米国のシャネルに就職》
さらに《プラダジャパンに転職し、2009年に不当に解雇されたとして訴訟を起こした》との記述がある。この件についてファクトチェックを行うと、3つの記事を見つけることができた。
まず、毎日新聞が2010年4月16日の夕刊に「提訴:プラダジャパン元部長が不当解雇で 慰謝料請求」との記事を掲載した。記事内容は以下の通りだ。
《元女性部長が「容姿や服装に関する上司の発言などを、本社に報告したところ不当に解雇された」として、日本法人に慰謝料と解雇無効の確認を求める訴えを東京地裁に起こしたことが分かった》
毎日新聞はプラダ側の《プラダのイメージを傷つけるいかなる非難も名誉棄損とみなし、断固反論する》とのコメントも掲載した。
この訴訟について続報を伝えたのは、フランスのAFP通信が運営するAFPBB News(日本語電子版)だった。
同年8月25日、「プラダジャパン、不当解雇を訴えた元販売部長を逆提訴」との記事を配信。当時、リナ・ローズさんは「ボブリース里奈」という名前だったようだ。
《イタリアの高級ブランド「プラダ(Prada)」の日本法人「プラダジャパン(Prada Jpan)」は、容姿などを理由に不当に解雇されたとして同社を訴えていた元販売担当部長のボブリース里奈(Rina Bovrisse)さんを逆提訴した》
結果はプラダ側の勝訴。日テレNEWSは2012年12月26日、「プラダ元女性部長敗訴 セクハラ抗議で解雇」との記事を配信した。
《裁判は、「プラダジャパン」の元統括部長・ボヴリース里奈さん(38)が09年、上司から「プラダルックにしろ」「痩せろ」「君の醜さが恥ずかしい」などと言われて抗議したところ、解雇されたと主張して、会社に損害賠償などを求めていた》
《東京地裁は26日、「上司が『醜い』と発言したとは認められない」として、解雇は有効と判断した。また、「別ブランドの製品を身につけて出勤していたことを注意するのは社会通念上、相当」で、「体形に関する発言は配慮を欠いた面があるが、慰謝料を認めるほどではない」として、ボヴリースさん側の訴えを退けた》
翌13年、リナ・ローズさんはファッション誌「Grazia」3月号(講談社・休刊)の記事に登場した。
この時の名前はリナ・シャトーさんだった。記事の書き出しには《リナ・シャトーさんは2年前表参道に(現在は原宿に移転)インターナショナルスクールを立ち上げた》とある。
《起業前はハイブランドのマーケット・アナリストなど、ファッション業界で華々しく活躍していた。居住地もNY、パリ、ハワイなど。その彼女がなぜ日本で、しかも“教育”のジャンルでの企業を目指したのか?》
この問いかけにリナ・ローズさんは次のように説明する。
《私自身、13歳で海外に出て以来、世界中で学びました。その経験を通して、語学が堪能で、自分の個性を主張できれば世界中どこでだって、自由に生きていけることを実感してきたのです。しかし、残念ながら日本の幼児教育のスタイルでは、語学力を磨き、確かな判断力を培うのはなかなか難しい……。だからこそ、このような学びの場を作る必要があると思ったのです》
記事は《息子の存在も大きかった》と指摘し、リナ・ローズさんは《彼が2歳になるまでは、会社員としてそれはハードに働いていました》と振り返った。
《息子の成長を実感する余裕のないまま毎日が過ぎていく中、子育てと仕事の理想的な環境は、起業でしか作れないと思いました。また母となったことで価値観が変わり、興味の中心がファッションではなく“教育”へと変わったことも理由のひとつでしたね》
《彼女の夢はさらに広がっていく》──この一文のあとリナ・ローズさんは《いずれは海外にも開校して、よりグローバルなスクールにしたいです》と抱負を語った。
「Grazia」の記事から2年後の2015年5月、ファッション関連のニュースを中心とした情報サイト「FASHIONSNAP」は「新インターナショナルスクールが六本木に」との記事を配信した。
本来のタイトルには東証に上場するセレクトショップ大手の社名と関係者の名前が記載されており、記事には経営に参画するとの記述がある。だが、ここでは割愛した。記事のポイントを紹介しよう。
スクールの運営元は《シンガポールの外資系投資企業》であり、《代表取締役社長は創始者で日本国籍のリナ・ボヴリース》と伝えた。
経営方針は《“MADE IN JAPAN”のインターナショナルスクールと質の高い教材の世界展開を主な事業とし、日本のクリエイティブが詰まった初のインターナショナルスクールの世界展開を計画。東京に続きニューヨークに開設が企画されている》と報じている。
WEBマガジンの「OPENERS」も2015年7月、「革新的なインターナショナルスクールが東京・西麻布に開校」との記事を配信した。骨子を箇条書きにしてお伝えする。
◆子供が持つ秘めた才能を宝石のように輝かせる革新的な幼児教育プログラム
◆子供たちが“パスポート”を持って通学するという新しいコンセプト
◆教える人たちは「Ambassador(大使)」と呼ばれ、世界各国から集まり、2カ国語以上を話し、World Diplomacy(世界外交)という特別プログラムを分かち合えるスキルを持ち合わせている
◆学校の共通語は英語で、3歳から12歳までを対象にした語学プログラムには、スペイン語、フランス語、中国語、日本語とともに世界各国の料理を体験する機会もある
学費は2022年から23年にかけての資料がネット上に残っていた。それによると、入学金は36万5000円。
午前9時から午後3時までの「スクール」が、半年払いで158万4000円、年間払いで288万円。
午前9時から午後6時までの「スクール&クラブ」が、半年払いで209万8800円、年間払いで381万6000円だった。
経営は順調だったように見える。2021年11月、創立10周年のプレスリリースを配信サービスの「PR TIMES」を通じて発表した。
《原宿キャットストリートの地下の一室で生まれた小さなスクールは、2015年に西麻布に拠点を移した後、少しずつその歩みを大きくし、現在ではクリエイティブなファミリーのアイコンとなりました》
さらに、2018年にアメリカに設立されたスクールに《本部機関を移転いたしました》と発表している。
先に紹介した通り、このスクールは0歳から6歳が対象であり、日本の法律では「認可外保育施設」となる。
東京都福祉保健局のサイトには、2015年度の「立入調査結果」の一覧が公表されている。それによると、この施設が「問題点を指摘されたが後に改善されたもの(×→〇)」と記載されたポイントは以下の7点だった。
==(×→〇)と記載されたポイント==【1】乳児と幼児の保育場所が区画されている【2】便所及び保育室専用の手洗い設備が設けられている【3】基本的な発育チェックを毎月行っている【4】調理・調乳に携わる職員の検便が実施されている【5】感染症への対応が適切である【6】児童安全の確保の配慮がなされている【7】施設及びサービスに関する内容が掲示されている
一方、「×」のままとなっていたのは、《児童の避難に適した階段等が設けられている(3階以上の場合、保育室から300メートル以内)》だった。
日本人の多くが「インターナショナルスクール」と聞いて思い浮かべるのは、東京都調布市にあるアメリカンスクール・イン・ジャパン(ASIJ)だろう。
卒業生には、駐日大使を務めたエドウィン・O・ライシャワー(1910~1990)、タレントのジョン・カビラ(64)、ソニーグループの社長を務めた平井一夫氏(62)、歌手の宇多田ヒカル(40)──など多くの有名人がいる。
ASIJは東京都認可の各種学校。アメリカの教育法令に基づく全日制の男女共学校であり、アーリーラーニングセンター(3歳から5歳までが対象=日本の幼稚園に相当)と第1学年から第12学年(日本の小学校・中学校・高等学校に相当)までのクラスが運営されている。
株式会社が運営する認可外保育施設とは、法的な位置づけも施設の規模も全く違うことが分かる。
ASIJは文部科学省の学習指導要領に沿った教育が行われないことから、長年、日本の小・中・高校の卒業生とは見なされなかった。
しかし2003年に改正が行われ、第12学年を修了すると、日本の高等学校卒業者と対等な資格を得られることになった。
こうした事実を見ると、リナ・ローズさんが運営するスクールは「英語教育に力を入れている認可外保育園であって、インターナショナルスクールではない」と考える保護者がいても不思議はないだろう。
とはいえ、先に紹介した通り、保育園としては桁違いの学費が必要であるにもかかわらず、かなりの人気を集めていたようだ。
NEWSポストセブンは5月31日、「《500万円返金トラブル》麻布の高級インターナショナルスクールが怒りの反論声明 リナ・ローズ氏が2011年に創立、保護者には芸能人や一流アスリートも」との記事を配信した。
記事では教育系ライターが《麻布エリアにあり、子どもを通園させる芸能人や一流アスリートなども実際に複数名いました》と証言している。裕福な保護者が、子供を通わせていたようだ。
スクール側はInstagramに反論の文書を掲載した(註)。次回は加熱を続ける“インターナショナルスクール”業界の問題点について取り上げる。
註:6月2日現在、スクール側がInstagramに掲載した文書は以下の2本
【1】Fake News Apology by TV Asahi “Good Morning”show on May 30,2023(https://www.instagram.com/p/Cs4-vsgobJ2/)
【2】Children’s Rights & Violence Against Teachers(https://www.instagram.com/p/Cs9VaQRsX-F/)
このうち【1】を翻訳し、要旨をまとめたものを以下に掲載する。
◆テレビ朝日の報道は、事実のねじ曲げ、虚報、中傷的な内容が含まれ、我々の評価を著しく毀損した。
◆テレビ朝日に対し、あらゆる名誉毀損行為と商標の無断使用の停止、ネット上の関連素材の削除、公の場での謝罪を求める。
◆慎重に検討した結果、悪意ある行動をとった2人の保護者に対し法的措置を取る。発生した損害については適切な補償を求める。
◆我々は悪意ある一派に責任を取らせるべく、利用可能な全ての法的手段を徹底的に追求する。
デイリー新潮編集部