日本共産党の凋落が止まらない。統一地方選挙では、共産党は今回選挙があった全国の議員選に計1396人擁立、1079人が当選したが、全体の1割超にあたる135席もの現有議席を失った。党員の減少、高齢化によって基盤が弱体化していて、党員の異論を封じて除名へと追い込んだ一連の騒動が影響している。
志位和夫氏は2000年11月に静岡県熱海市で開いた共産党大会で、不破哲三氏の後任として書記局長から委員長に選出された。在任期間は今年11月で23年になる。
北朝鮮の金正日中央委員会総書記の任期が14年だった。中国の習近平国家主席が現在までで10年、ロシアのプーチン大統領は現在までで18年と志位氏より最高権力の座についている期間は短い。知名度は抜群だが…(Gettyimages)安倍晋三氏が首相に返り咲いてからは、「アベ政治を許さない」人たちの急先鋒として、脚光を浴びた。特に、2015年の安全保障関連法案の反対する世論の高まりを受けて、「野党共闘」を本格化、存在感を増した。しかし、共産党の党勢のピークはこのあたりだったようだ。安倍元首相、菅義偉前首相の退陣を前後して、退潮傾向が始まり、現在では猛スピードで党勢が衰えている。野党共闘の相手である立憲民主党も、共産党との連携が「左傾化が進んだ」と世論に認められてしまったのかもしれない。「立憲共産党」「野合」などと批判を受け、支持を失ってしまった。今では、日本維新の会に勢いで圧倒されている。野党第一党の地位を失うのも時間の問題だ。立憲民主党は、露骨に共産党を避けるようになっているようだ。千葉5区の補欠選挙では、立憲民主党から共産党に対して、候補者調整の要請がなかった。岸田戦略の妙味当選者が1人しかいない小選挙区制では、大政党同士の「真ん中」の取り合いの様相を呈している。保守を自認する政党も、リベラルを自認する政党でも、結局、小選挙区においては、右でも左でもない無党派層が当落のカギを握っている。安倍政権のように「ちょっと右」に進んでいこうとしたように見える与党に対しては、対抗軸として「共産党と組んでちょっと左」もありえたのかもしれないが、現在の岸田政権が(実際にそうであるかは別にして)有権者には右寄りには見えていないのだろう。共産党と連携することは、確かな組織票を手にすることができる半面、「真ん中の無党派層」を取りこぼすことにつながりかねない。 この失敗は、大阪において、自民党が犯してきた失敗と同じだ。維新への対抗を図るために、左右の壁を超えてなりふり構わず共闘し、自民党と共産党が組むという事態が発生した。これは、自民党を支持してきた保守層の反発と、無党派層離れを引き起こした。現在に至る大阪での維新の躍進は、こうした大阪自民の「黒歴史」も背景にあることを理解しなくてはいけないだろう。立憲民主党も、同じ過ちを歩んでしまった。共産党と組むことで、自らに「左派」とレッテルを貼ってしまったのだ。立憲民主党は、今後、無党派層を取り組むときは本当に苦労することだろう。申し訳ないが、これでは共産党は「疫病神」としかいいようがない。チャンスはあったのに…共産党には、この間、組織を立て直す機会はいくつかあったはずだ。ロシアによるウクライナ侵略をみても、平和や話し合いを唱えているだけでは、自国の領土、国民の生命と財産が守れないことはわかったはず。自国民の安全を守る最低限度の現実的な安保へのアプローチを開始する絶好の機会であったにもかかわらず、現在まで、やはり「最後まで話し合いアプローチ」を捨てていない。無法国家の侵略が起きた際に、自国民の安全をどう確保するのか、きちんと明示すべきだろう。 現実的な政党になる絶好のチャンスを潰しつつ、共産党は、支持層をシラケさせる行動にもでてしまった。共産党本部の政策委員会で安保外交部長も務めたジャーナリストの松竹伸幸氏が、党トップの委員長を全党員による投票で選ぶことなどを提案した『シン・日本共産党宣言』を出版すると、わずか数週間で「党に敵対する行為はおこなわない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの党規約に背く「重大な規律違反」という理由で「除名」をされたのだ。小池晃書記局長は「共産党は意見を言う自由は認められている。問題は党の中で述べることなしに、突然攻撃してきたことが重要」などと、事実上の追放処分の理由を説明しているが、松竹氏は、党のあり方を茶化したわけではなく、本気で憂慮して提言をしたのだ。本の出版を「突然の攻撃」として、被害者ぶっているが、そんな強権的な姿勢を、リベラルな支持層が受け入れるはずもなかろう。危機を笑えない朝日新聞社説(2月8日)も「党勢回復に向け、党首公選を訴えた党員を、なぜ除名しなければいけないのか。異論を排除するつもりはなく、党への「攻撃」が許されないのだと言うが、納得する人がどれほどいよう。かねて指摘される党の閉鎖性を一層印象づけ、幅広い国民からの支持を遠ざけるだけだ」「党内の結束が保てたとしても、これまで共産党の政策や活動に理解や共感を示してきた、党員以外の有権者や知識人の心が離れるなら、党勢は細るばかりだと思い知るべきだ」と共産党の対応に怒りをあらわにしている。しかし、朝日新聞も共産党の危機を論評している場合ではないのではないか。共産党の機関紙「赤旗」(4月25日)によれば、「(2023年)3月末までに4年前の党勢を回復・突破するという目標は達成できず、私たちは、4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者で(統一地方選挙を)たたかうことになりました」と、選挙結果の要因を分析している。機関紙読者の減少を食い止められないことがひとつの敗因だったようだが、朝日新聞も収入の7割を占める「紙」の部数(購読料)減、広告減に悩まされ、頼みのデジタル化が進んでいない。朝日のデジタルは利用率、ツイート数、検索数、LINEの友達の数等で大部分の他紙ニュースサイトを上回っているものの、それでも有料会員数は31万人、月間PV数は2億程度。これは、紙の朝刊部数と比較して、あまりに心もとない状態だ。ウェブの伸長にもがいている間に、紙の部数の減少は進んでいる。日本ABC協会が公表した報告書によると、朝日新聞の部数は2023年1月に400万部の大台を割り込んでしまった。かつての勢いを考えれば「激減」といって差し支えないだろう。 大手広告代理店関係者は「いまや、全国紙といえるのは読売新聞だけになってしまった。大手企業からの新聞への広告出稿も、読売新聞、日経新聞と2紙だけを検討する状況が続いている」という。そんな状態を見越してか、5月1日から500円の値上げをした朝日新聞に対して、読売新聞は「物価高騰が家計を圧迫する中で、読者の皆さまに正確な情報を伝え、信頼に応える新聞の使命を全うしていくため、読売新聞社は少なくとも向こう1年間、朝夕刊セットの月ぎめ購読料4400円、朝刊1部売り150円、夕刊1部売り50円(いずれも消費税込み)を値上げしないことに決定しました」と宣言した。読売新聞は、朝日新聞を完全に引き離しにかかっているのだ。私は、朝日新聞の退潮傾向は共産党のそれに近く、その要因は立憲民主党と同じだとみている。それは「世の中の真ん中」をとれなくなっているということだ。穏健な生活者の視点をきちんと踏まえて、読者の現実的な課題を解決していくべきだろう。後編『朝日新聞「凋落」の原因は立憲民主党と同じだった…真面目でおカタい「非現実的な話」など、いったい誰が読むというのか』では、筆者なりにその解決のための具体的な手段を提案していきたい。
北朝鮮の金正日中央委員会総書記の任期が14年だった。中国の習近平国家主席が現在までで10年、ロシアのプーチン大統領は現在までで18年と志位氏より最高権力の座についている期間は短い。
知名度は抜群だが…(Gettyimages)
安倍晋三氏が首相に返り咲いてからは、「アベ政治を許さない」人たちの急先鋒として、脚光を浴びた。特に、2015年の安全保障関連法案の反対する世論の高まりを受けて、「野党共闘」を本格化、存在感を増した。
しかし、共産党の党勢のピークはこのあたりだったようだ。安倍元首相、菅義偉前首相の退陣を前後して、退潮傾向が始まり、現在では猛スピードで党勢が衰えている。
野党共闘の相手である立憲民主党も、共産党との連携が「左傾化が進んだ」と世論に認められてしまったのかもしれない。「立憲共産党」「野合」などと批判を受け、支持を失ってしまった。今では、日本維新の会に勢いで圧倒されている。野党第一党の地位を失うのも時間の問題だ。
立憲民主党は、露骨に共産党を避けるようになっているようだ。千葉5区の補欠選挙では、立憲民主党から共産党に対して、候補者調整の要請がなかった。
当選者が1人しかいない小選挙区制では、大政党同士の「真ん中」の取り合いの様相を呈している。保守を自認する政党も、リベラルを自認する政党でも、結局、小選挙区においては、右でも左でもない無党派層が当落のカギを握っている。
安倍政権のように「ちょっと右」に進んでいこうとしたように見える与党に対しては、対抗軸として「共産党と組んでちょっと左」もありえたのかもしれないが、現在の岸田政権が(実際にそうであるかは別にして)有権者には右寄りには見えていないのだろう。共産党と連携することは、確かな組織票を手にすることができる半面、「真ん中の無党派層」を取りこぼすことにつながりかねない。
この失敗は、大阪において、自民党が犯してきた失敗と同じだ。維新への対抗を図るために、左右の壁を超えてなりふり構わず共闘し、自民党と共産党が組むという事態が発生した。これは、自民党を支持してきた保守層の反発と、無党派層離れを引き起こした。現在に至る大阪での維新の躍進は、こうした大阪自民の「黒歴史」も背景にあることを理解しなくてはいけないだろう。立憲民主党も、同じ過ちを歩んでしまった。共産党と組むことで、自らに「左派」とレッテルを貼ってしまったのだ。立憲民主党は、今後、無党派層を取り組むときは本当に苦労することだろう。申し訳ないが、これでは共産党は「疫病神」としかいいようがない。チャンスはあったのに…共産党には、この間、組織を立て直す機会はいくつかあったはずだ。ロシアによるウクライナ侵略をみても、平和や話し合いを唱えているだけでは、自国の領土、国民の生命と財産が守れないことはわかったはず。自国民の安全を守る最低限度の現実的な安保へのアプローチを開始する絶好の機会であったにもかかわらず、現在まで、やはり「最後まで話し合いアプローチ」を捨てていない。無法国家の侵略が起きた際に、自国民の安全をどう確保するのか、きちんと明示すべきだろう。 現実的な政党になる絶好のチャンスを潰しつつ、共産党は、支持層をシラケさせる行動にもでてしまった。共産党本部の政策委員会で安保外交部長も務めたジャーナリストの松竹伸幸氏が、党トップの委員長を全党員による投票で選ぶことなどを提案した『シン・日本共産党宣言』を出版すると、わずか数週間で「党に敵対する行為はおこなわない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの党規約に背く「重大な規律違反」という理由で「除名」をされたのだ。小池晃書記局長は「共産党は意見を言う自由は認められている。問題は党の中で述べることなしに、突然攻撃してきたことが重要」などと、事実上の追放処分の理由を説明しているが、松竹氏は、党のあり方を茶化したわけではなく、本気で憂慮して提言をしたのだ。本の出版を「突然の攻撃」として、被害者ぶっているが、そんな強権的な姿勢を、リベラルな支持層が受け入れるはずもなかろう。危機を笑えない朝日新聞社説(2月8日)も「党勢回復に向け、党首公選を訴えた党員を、なぜ除名しなければいけないのか。異論を排除するつもりはなく、党への「攻撃」が許されないのだと言うが、納得する人がどれほどいよう。かねて指摘される党の閉鎖性を一層印象づけ、幅広い国民からの支持を遠ざけるだけだ」「党内の結束が保てたとしても、これまで共産党の政策や活動に理解や共感を示してきた、党員以外の有権者や知識人の心が離れるなら、党勢は細るばかりだと思い知るべきだ」と共産党の対応に怒りをあらわにしている。しかし、朝日新聞も共産党の危機を論評している場合ではないのではないか。共産党の機関紙「赤旗」(4月25日)によれば、「(2023年)3月末までに4年前の党勢を回復・突破するという目標は達成できず、私たちは、4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者で(統一地方選挙を)たたかうことになりました」と、選挙結果の要因を分析している。機関紙読者の減少を食い止められないことがひとつの敗因だったようだが、朝日新聞も収入の7割を占める「紙」の部数(購読料)減、広告減に悩まされ、頼みのデジタル化が進んでいない。朝日のデジタルは利用率、ツイート数、検索数、LINEの友達の数等で大部分の他紙ニュースサイトを上回っているものの、それでも有料会員数は31万人、月間PV数は2億程度。これは、紙の朝刊部数と比較して、あまりに心もとない状態だ。ウェブの伸長にもがいている間に、紙の部数の減少は進んでいる。日本ABC協会が公表した報告書によると、朝日新聞の部数は2023年1月に400万部の大台を割り込んでしまった。かつての勢いを考えれば「激減」といって差し支えないだろう。 大手広告代理店関係者は「いまや、全国紙といえるのは読売新聞だけになってしまった。大手企業からの新聞への広告出稿も、読売新聞、日経新聞と2紙だけを検討する状況が続いている」という。そんな状態を見越してか、5月1日から500円の値上げをした朝日新聞に対して、読売新聞は「物価高騰が家計を圧迫する中で、読者の皆さまに正確な情報を伝え、信頼に応える新聞の使命を全うしていくため、読売新聞社は少なくとも向こう1年間、朝夕刊セットの月ぎめ購読料4400円、朝刊1部売り150円、夕刊1部売り50円(いずれも消費税込み)を値上げしないことに決定しました」と宣言した。読売新聞は、朝日新聞を完全に引き離しにかかっているのだ。私は、朝日新聞の退潮傾向は共産党のそれに近く、その要因は立憲民主党と同じだとみている。それは「世の中の真ん中」をとれなくなっているということだ。穏健な生活者の視点をきちんと踏まえて、読者の現実的な課題を解決していくべきだろう。後編『朝日新聞「凋落」の原因は立憲民主党と同じだった…真面目でおカタい「非現実的な話」など、いったい誰が読むというのか』では、筆者なりにその解決のための具体的な手段を提案していきたい。
この失敗は、大阪において、自民党が犯してきた失敗と同じだ。維新への対抗を図るために、左右の壁を超えてなりふり構わず共闘し、自民党と共産党が組むという事態が発生した。これは、自民党を支持してきた保守層の反発と、無党派層離れを引き起こした。現在に至る大阪での維新の躍進は、こうした大阪自民の「黒歴史」も背景にあることを理解しなくてはいけないだろう。
立憲民主党も、同じ過ちを歩んでしまった。共産党と組むことで、自らに「左派」とレッテルを貼ってしまったのだ。立憲民主党は、今後、無党派層を取り組むときは本当に苦労することだろう。申し訳ないが、これでは共産党は「疫病神」としかいいようがない。
共産党には、この間、組織を立て直す機会はいくつかあったはずだ。
ロシアによるウクライナ侵略をみても、平和や話し合いを唱えているだけでは、自国の領土、国民の生命と財産が守れないことはわかったはず。自国民の安全を守る最低限度の現実的な安保へのアプローチを開始する絶好の機会であったにもかかわらず、現在まで、やはり「最後まで話し合いアプローチ」を捨てていない。無法国家の侵略が起きた際に、自国民の安全をどう確保するのか、きちんと明示すべきだろう。
現実的な政党になる絶好のチャンスを潰しつつ、共産党は、支持層をシラケさせる行動にもでてしまった。共産党本部の政策委員会で安保外交部長も務めたジャーナリストの松竹伸幸氏が、党トップの委員長を全党員による投票で選ぶことなどを提案した『シン・日本共産党宣言』を出版すると、わずか数週間で「党に敵対する行為はおこなわない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの党規約に背く「重大な規律違反」という理由で「除名」をされたのだ。小池晃書記局長は「共産党は意見を言う自由は認められている。問題は党の中で述べることなしに、突然攻撃してきたことが重要」などと、事実上の追放処分の理由を説明しているが、松竹氏は、党のあり方を茶化したわけではなく、本気で憂慮して提言をしたのだ。本の出版を「突然の攻撃」として、被害者ぶっているが、そんな強権的な姿勢を、リベラルな支持層が受け入れるはずもなかろう。危機を笑えない朝日新聞社説(2月8日)も「党勢回復に向け、党首公選を訴えた党員を、なぜ除名しなければいけないのか。異論を排除するつもりはなく、党への「攻撃」が許されないのだと言うが、納得する人がどれほどいよう。かねて指摘される党の閉鎖性を一層印象づけ、幅広い国民からの支持を遠ざけるだけだ」「党内の結束が保てたとしても、これまで共産党の政策や活動に理解や共感を示してきた、党員以外の有権者や知識人の心が離れるなら、党勢は細るばかりだと思い知るべきだ」と共産党の対応に怒りをあらわにしている。しかし、朝日新聞も共産党の危機を論評している場合ではないのではないか。共産党の機関紙「赤旗」(4月25日)によれば、「(2023年)3月末までに4年前の党勢を回復・突破するという目標は達成できず、私たちは、4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者で(統一地方選挙を)たたかうことになりました」と、選挙結果の要因を分析している。機関紙読者の減少を食い止められないことがひとつの敗因だったようだが、朝日新聞も収入の7割を占める「紙」の部数(購読料)減、広告減に悩まされ、頼みのデジタル化が進んでいない。朝日のデジタルは利用率、ツイート数、検索数、LINEの友達の数等で大部分の他紙ニュースサイトを上回っているものの、それでも有料会員数は31万人、月間PV数は2億程度。これは、紙の朝刊部数と比較して、あまりに心もとない状態だ。ウェブの伸長にもがいている間に、紙の部数の減少は進んでいる。日本ABC協会が公表した報告書によると、朝日新聞の部数は2023年1月に400万部の大台を割り込んでしまった。かつての勢いを考えれば「激減」といって差し支えないだろう。 大手広告代理店関係者は「いまや、全国紙といえるのは読売新聞だけになってしまった。大手企業からの新聞への広告出稿も、読売新聞、日経新聞と2紙だけを検討する状況が続いている」という。そんな状態を見越してか、5月1日から500円の値上げをした朝日新聞に対して、読売新聞は「物価高騰が家計を圧迫する中で、読者の皆さまに正確な情報を伝え、信頼に応える新聞の使命を全うしていくため、読売新聞社は少なくとも向こう1年間、朝夕刊セットの月ぎめ購読料4400円、朝刊1部売り150円、夕刊1部売り50円(いずれも消費税込み)を値上げしないことに決定しました」と宣言した。読売新聞は、朝日新聞を完全に引き離しにかかっているのだ。私は、朝日新聞の退潮傾向は共産党のそれに近く、その要因は立憲民主党と同じだとみている。それは「世の中の真ん中」をとれなくなっているということだ。穏健な生活者の視点をきちんと踏まえて、読者の現実的な課題を解決していくべきだろう。後編『朝日新聞「凋落」の原因は立憲民主党と同じだった…真面目でおカタい「非現実的な話」など、いったい誰が読むというのか』では、筆者なりにその解決のための具体的な手段を提案していきたい。
現実的な政党になる絶好のチャンスを潰しつつ、共産党は、支持層をシラケさせる行動にもでてしまった。
共産党本部の政策委員会で安保外交部長も務めたジャーナリストの松竹伸幸氏が、党トップの委員長を全党員による投票で選ぶことなどを提案した『シン・日本共産党宣言』を出版すると、わずか数週間で「党に敵対する行為はおこなわない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの党規約に背く「重大な規律違反」という理由で「除名」をされたのだ。
小池晃書記局長は「共産党は意見を言う自由は認められている。問題は党の中で述べることなしに、突然攻撃してきたことが重要」などと、事実上の追放処分の理由を説明しているが、松竹氏は、党のあり方を茶化したわけではなく、本気で憂慮して提言をしたのだ。本の出版を「突然の攻撃」として、被害者ぶっているが、そんな強権的な姿勢を、リベラルな支持層が受け入れるはずもなかろう。
朝日新聞社説(2月8日)も「党勢回復に向け、党首公選を訴えた党員を、なぜ除名しなければいけないのか。異論を排除するつもりはなく、党への「攻撃」が許されないのだと言うが、納得する人がどれほどいよう。かねて指摘される党の閉鎖性を一層印象づけ、幅広い国民からの支持を遠ざけるだけだ」「党内の結束が保てたとしても、これまで共産党の政策や活動に理解や共感を示してきた、党員以外の有権者や知識人の心が離れるなら、党勢は細るばかりだと思い知るべきだ」と共産党の対応に怒りをあらわにしている。
しかし、朝日新聞も共産党の危機を論評している場合ではないのではないか。
共産党の機関紙「赤旗」(4月25日)によれば、「(2023年)3月末までに4年前の党勢を回復・突破するという目標は達成できず、私たちは、4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者で(統一地方選挙を)たたかうことになりました」と、選挙結果の要因を分析している。
機関紙読者の減少を食い止められないことがひとつの敗因だったようだが、朝日新聞も収入の7割を占める「紙」の部数(購読料)減、広告減に悩まされ、頼みのデジタル化が進んでいない。
朝日のデジタルは利用率、ツイート数、検索数、LINEの友達の数等で大部分の他紙ニュースサイトを上回っているものの、それでも有料会員数は31万人、月間PV数は2億程度。これは、紙の朝刊部数と比較して、あまりに心もとない状態だ。ウェブの伸長にもがいている間に、紙の部数の減少は進んでいる。
日本ABC協会が公表した報告書によると、朝日新聞の部数は2023年1月に400万部の大台を割り込んでしまった。かつての勢いを考えれば「激減」といって差し支えないだろう。
大手広告代理店関係者は「いまや、全国紙といえるのは読売新聞だけになってしまった。大手企業からの新聞への広告出稿も、読売新聞、日経新聞と2紙だけを検討する状況が続いている」という。そんな状態を見越してか、5月1日から500円の値上げをした朝日新聞に対して、読売新聞は「物価高騰が家計を圧迫する中で、読者の皆さまに正確な情報を伝え、信頼に応える新聞の使命を全うしていくため、読売新聞社は少なくとも向こう1年間、朝夕刊セットの月ぎめ購読料4400円、朝刊1部売り150円、夕刊1部売り50円(いずれも消費税込み)を値上げしないことに決定しました」と宣言した。読売新聞は、朝日新聞を完全に引き離しにかかっているのだ。私は、朝日新聞の退潮傾向は共産党のそれに近く、その要因は立憲民主党と同じだとみている。それは「世の中の真ん中」をとれなくなっているということだ。穏健な生活者の視点をきちんと踏まえて、読者の現実的な課題を解決していくべきだろう。後編『朝日新聞「凋落」の原因は立憲民主党と同じだった…真面目でおカタい「非現実的な話」など、いったい誰が読むというのか』では、筆者なりにその解決のための具体的な手段を提案していきたい。
大手広告代理店関係者は「いまや、全国紙といえるのは読売新聞だけになってしまった。大手企業からの新聞への広告出稿も、読売新聞、日経新聞と2紙だけを検討する状況が続いている」という。
そんな状態を見越してか、5月1日から500円の値上げをした朝日新聞に対して、読売新聞は「物価高騰が家計を圧迫する中で、読者の皆さまに正確な情報を伝え、信頼に応える新聞の使命を全うしていくため、読売新聞社は少なくとも向こう1年間、朝夕刊セットの月ぎめ購読料4400円、朝刊1部売り150円、夕刊1部売り50円(いずれも消費税込み)を値上げしないことに決定しました」と宣言した。
読売新聞は、朝日新聞を完全に引き離しにかかっているのだ。
私は、朝日新聞の退潮傾向は共産党のそれに近く、その要因は立憲民主党と同じだとみている。それは「世の中の真ん中」をとれなくなっているということだ。穏健な生活者の視点をきちんと踏まえて、読者の現実的な課題を解決していくべきだろう。
後編『朝日新聞「凋落」の原因は立憲民主党と同じだった…真面目でおカタい「非現実的な話」など、いったい誰が読むというのか』では、筆者なりにその解決のための具体的な手段を提案していきたい。