暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、7日から8日未明にかけて阪神地区は大雨に見舞われた。
兵庫県伊丹市で天神川の堤防が決壊して住宅が浸水被害に遭うなど、各地で影響が出た。
伊丹市荒牧では8日午前0時50分頃、大雨による急な増水で天神川左岸の堤防が約30メートル決壊。周辺の住宅地に水や土砂が流れ出し、計12軒が床上、床下浸水した。けが人はいなかった。
天神川は川床が周囲より高い「天井川」。現場では、天神川の下を東西に走る荒牧トンネルの拡幅工事中で、工事を担当していた県宝塚土木事務所の恒藤博文・武庫川対策室長は「工事は5月末で一時中止し、出水期の6~10月は工事を止める予定だった。迷惑をおかけした住民の皆様には非常に申し訳ない。被害状況をしっかりと調査し、補償に努める」と話した。
現場周辺では、7日晩から施工業者が警戒を行っていたが、市が周辺に避難指示を出したのは堤防決壊から約1時間後、市長ら幹部が市役所に参集したのは堤防決壊から約2時間後と、対応の遅れが目立った。
自宅前に土砂が流れ込んだというパート従業員(46)は「歩いて避難するのは危険だと判断し、浸水に備え自宅3階に避難した。30年以上住んでいるが、普段から水量が少なく、大雨や台風でも決壊の心配をしたことがなかった。こんなことは初めてで怖かった」と話した。
8日午前3時までの24時間降水量が、5月の観測史上最大の189・5ミリを観測した西宮市内では、倒木や土砂崩れが発生した。同市門戸西町では、東光寺敷地の石垣の一部が崩れ、隣接する住宅1棟に石や土砂が流れ込んで住宅の壁に穴を開けたり、市道をふさいだりした。けが人はいなかった。
住人の男性(40)によると、8日午前1時30分頃に「ドン」という大きな音で目が覚め、慌てて外を見ると、自宅前の市道に土砂が流れ落ちていたという。男性は「家のすぐ横に雷が落ちたかと思うような衝撃だった」と驚き、「土砂災害のない場所だということを確認して家を購入したが、こんなことになるなんて。壁には大きな穴が開いており、今後の生活が不安だ」と肩を落とした。
市は周辺の世帯に避難勧告を出すかどうか検討している。
宝塚市雲雀丘山手の民家では、石垣が幅約5メートル、高さ約2メートルにわたって崩れ、市道を一時ふさいだ。同市を流れる武庫川では、未明に氾濫注意水位(3・2メートル)に近づき、河川敷には流木や魚などが打ち上げられた。宝塚大橋近くの武庫川の中州に制作された阪神大震災の犠牲者を追悼する石積みオブジェ「生」も水没した。
芦屋市では幹線道路や鉄道高架下のアンダーパスが相次いで冠水した。市防災安全課などによると、市役所近くの芦屋川沿いにある市道で、国道43号をくぐるアンダーパスが冠水し、7日午後11時10分頃から約6時間半、通行止めとなった。ポンプで排水したが追いつかなかったという。またJR芦屋駅近くや阪神芦屋駅近くにある鉄道高架下の道路も冠水し、それぞれ一時通行止めとなった。