23日投票の統一地方選・後半戦では、立候補者とは別人の顔写真やCGキャラクターを掲載した選挙ポスターが、東京都内各地の掲示板に貼り出された。
選挙ポスターは有権者が投票先を決める際の判断材料になるだけに、市民からは戸惑いの声が聞かれた。
港区議選の期間中、区内の掲示板には、芸能人らを脅迫したなどとして逮捕状が出ている前参院議員の「ガーシー」こと東谷義和容疑者(51)の顔写真を入れた選挙ポスターが貼られた。ポスターには大きな文字で「ガーシー」「東谷義和」とあったが、立候補したのは東谷容疑者ではなく、新人の深瀬良乃氏(30)。深瀬氏によると、所属政党の幹部から「他候補のポスターの間に埋もれるから」と助言され、自身の顔写真入りのポスターのほかに、東谷容疑者のポスターを区内100か所以上に貼ったという。
区選挙管理委員会には「ガーシーが立候補しているのか」といった問い合わせや、「ふざけたことはやめさせてほしい」などの苦情が寄せられ、投票日にポスターを見た区内の主婦(61)も「いったい何を訴えたいのか……」とあきれ顔。ただ、区選管の担当者は「ポスターは候補者本人の責任で貼るもの。選管に内容を審査する権限はなく、指摘することはない」と話す。
武蔵野市議選では、新人の佐野香氏(49)が、CGで作成した自身の「アバター」(分身)の画像をポスターに使用した。佐野氏は取材に「次世代の候補者の方法として趣向を変えた」とするが、SNS上では「どういう人なんだ」「本当に実在する候補者か」などの書き込みが相次いだ。
結果は2人とも落選に終わった。
選挙ポスターを巡っては、過去にも候補者の全裸姿や別人の写真が使用されたことがあり、そのたびに選管に苦情が寄せられている。しかし、選挙ポスターの写真について公職選挙法上の規制はなく、総務省選挙課はその理由を「表現の自由の侵害や、選挙活動の制限につながる恐れがあるため」と説明する。
顔写真と投票行動の関係を研究する拓殖大の浅野正彦教授(政治学)は「違反でなくても、顔から受ける印象や情報が遮断されると、候補者がどんな人物かわからない。有権者は奇抜さに目を奪われず、候補者の主張をしっかり見比べてほしい」と指摘する。