「中国のミサイルで撃墜されたとしか考えられない」「機体の故障を引き起こす電磁波による攻撃」「日本政府が機体を隠蔽し機体もすでに回収した」
陸上自衛隊のヘリコプター事故をめぐり、ネットで噴出する陰謀論。広まる背景について、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は次のように話す。
【映像】フライトシミュレーターでヘリの“着水”“墜落”を検証「多くの人が関心を持っている事象であること。もう1つは『よくわからない』、つまり推察の余地があると陰謀論は誕生しやすい。政治や防衛はイデオロギーが絡みやすいし、想像が働きやすい部分なので、さらに生まれやすい。拡散する陰謀論やフェイクニュースは、一部リアルな部分を含んでいることが多い」

中国撃墜説の根拠としてあげられているのが、事故当日、中国海軍の情報収集艦1隻が沖縄本島と宮古島の間を通過して南下していたこと。事故翌日の国会では中国との関連について、浜田防衛大臣が「そういったことは今のところ入っていない。確たるものをお話しすることは差し控えたい」と答えている。 政府関係者による曖昧な回答は、事故原因の解明がなされないことも加わり、陰謀論にさらなる拍車をかけることになった。 元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏は「民間の飛行機とは違うので、防衛機密を外に出せないということがあるのではないか。防衛大臣やその上の総理には『実はこうです』というのはあがっているかもしれないが、大臣もそれを言うことはできない。そういう状況になっているのかなと、頭をよぎるぐらいだ」と推測の域を出ない考えを説明。 事故機が飛び立った宮古島から台湾までの距離はわずか458km。陸上自衛隊宮古島駐屯地は、近年緊張の高まる台湾有事や離島防衛に備えて2019年に設置されたばかり。また、事故にみまわれた第8師団は、南西諸島で事が起これば航空機や艦船で移動し機動戦闘車を駆使する最前線拠点の1つ。そうした緊張感が今回の陰謀論を生んでいることは否定できない。 山口氏はさらに、人は自身と似た考えや情報を収集しがちだと指摘する。「心理学でいうところの『確証バイアス』『認知バイアス』。例えば、『これは撃墜されたんじゃないか』とモヤッとしている人は、ネットで『撃墜だ』『事故だ』という声を見た時、前者のほうに寄っていってしまう。さらに、陰謀論を強固に信じている人に対して『それは違う』と否定すると、反発してよりその情報を信じてしまう『バックファイア効果』もある。識者やメディアが陰謀論ではないと報じていても、『何か隠そうとしているのではないか』と勘ぐってしまう」 では、中国からの攻撃の可能性は本当にないのか。昨年、領空侵犯のおそれがある外国機に対して航空自衛隊の戦闘機が緊急発進するスクランブルの回数は788回。その内7割は中国機が対象で、南西航空方面隊は515回と突出して多い。特に沖縄本島と宮古島の間を通過する中国機の数が増加している。 こうした状況に対し、海上自衛隊時代はヘリの操縦士でもあった軍事ジャーナリストの小原凡司氏は「中国は東シナ海を自分の海にしようとしている。この地域での軍事的な緊張が高まるし、その中で最も緊張するのが航空機による接近。戦闘機が超音速で飛んでくるとすれば対応できる時間は極めて短いために、スクランブルという対応をせざるを得ない。政治的に考えても今の状況で中国が日本の自衛隊に攻撃を仕掛ける、これは明らかに主権の侵害になるので、今の段階では非常に考えにくい」と話す。 ABEMA NEWS政治担当の今野忍記者によると、陸上自衛隊幹部は「陰謀論はない。南西諸島では中国の艦艇の動き、航空機の動きはすべて見ているから、99.9%ない」と話しているという。 さらに、「5年ぐらい前にも似た事故が起きていて、佐賀県で攻撃用のヘリ『アパッチ』が民家に墜落した。この時はローターが外れていて、緊急信号も出ていなかった。陸上自衛隊のヘリのパイロット経験者に今回のことを聞くと『それぐらいしか思いつかない』というような話だ」と明かした。 フライトレコーダーが回収できていないことも、原因究明の大きな障壁となっている。山口氏は「今回の件はまだわからない点があり、他の陰謀論のように片付けていい話でもないと思う。まずは原因究明をして、しっかり説明していくことが大事だ。それによって陰謀論のような声は減ると思うが、0になることはないと思う。例えば、『解析した結果は伏せられている』『故意に改ざんされたんだ』という話が新たに出てくるかもしれない」との見方を示した。(『ABEMA的ニュースショー』より)
「多くの人が関心を持っている事象であること。もう1つは『よくわからない』、つまり推察の余地があると陰謀論は誕生しやすい。政治や防衛はイデオロギーが絡みやすいし、想像が働きやすい部分なので、さらに生まれやすい。拡散する陰謀論やフェイクニュースは、一部リアルな部分を含んでいることが多い」
中国撃墜説の根拠としてあげられているのが、事故当日、中国海軍の情報収集艦1隻が沖縄本島と宮古島の間を通過して南下していたこと。事故翌日の国会では中国との関連について、浜田防衛大臣が「そういったことは今のところ入っていない。確たるものをお話しすることは差し控えたい」と答えている。
政府関係者による曖昧な回答は、事故原因の解明がなされないことも加わり、陰謀論にさらなる拍車をかけることになった。
元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏は「民間の飛行機とは違うので、防衛機密を外に出せないということがあるのではないか。防衛大臣やその上の総理には『実はこうです』というのはあがっているかもしれないが、大臣もそれを言うことはできない。そういう状況になっているのかなと、頭をよぎるぐらいだ」と推測の域を出ない考えを説明。
事故機が飛び立った宮古島から台湾までの距離はわずか458km。陸上自衛隊宮古島駐屯地は、近年緊張の高まる台湾有事や離島防衛に備えて2019年に設置されたばかり。また、事故にみまわれた第8師団は、南西諸島で事が起これば航空機や艦船で移動し機動戦闘車を駆使する最前線拠点の1つ。そうした緊張感が今回の陰謀論を生んでいることは否定できない。
山口氏はさらに、人は自身と似た考えや情報を収集しがちだと指摘する。
「心理学でいうところの『確証バイアス』『認知バイアス』。例えば、『これは撃墜されたんじゃないか』とモヤッとしている人は、ネットで『撃墜だ』『事故だ』という声を見た時、前者のほうに寄っていってしまう。さらに、陰謀論を強固に信じている人に対して『それは違う』と否定すると、反発してよりその情報を信じてしまう『バックファイア効果』もある。識者やメディアが陰謀論ではないと報じていても、『何か隠そうとしているのではないか』と勘ぐってしまう」
では、中国からの攻撃の可能性は本当にないのか。昨年、領空侵犯のおそれがある外国機に対して航空自衛隊の戦闘機が緊急発進するスクランブルの回数は788回。その内7割は中国機が対象で、南西航空方面隊は515回と突出して多い。特に沖縄本島と宮古島の間を通過する中国機の数が増加している。
こうした状況に対し、海上自衛隊時代はヘリの操縦士でもあった軍事ジャーナリストの小原凡司氏は「中国は東シナ海を自分の海にしようとしている。この地域での軍事的な緊張が高まるし、その中で最も緊張するのが航空機による接近。戦闘機が超音速で飛んでくるとすれば対応できる時間は極めて短いために、スクランブルという対応をせざるを得ない。政治的に考えても今の状況で中国が日本の自衛隊に攻撃を仕掛ける、これは明らかに主権の侵害になるので、今の段階では非常に考えにくい」と話す。
ABEMA NEWS政治担当の今野忍記者によると、陸上自衛隊幹部は「陰謀論はない。南西諸島では中国の艦艇の動き、航空機の動きはすべて見ているから、99.9%ない」と話しているという。
さらに、「5年ぐらい前にも似た事故が起きていて、佐賀県で攻撃用のヘリ『アパッチ』が民家に墜落した。この時はローターが外れていて、緊急信号も出ていなかった。陸上自衛隊のヘリのパイロット経験者に今回のことを聞くと『それぐらいしか思いつかない』というような話だ」と明かした。
フライトレコーダーが回収できていないことも、原因究明の大きな障壁となっている。山口氏は「今回の件はまだわからない点があり、他の陰謀論のように片付けていい話でもないと思う。まずは原因究明をして、しっかり説明していくことが大事だ。それによって陰謀論のような声は減ると思うが、0になることはないと思う。例えば、『解析した結果は伏せられている』『故意に改ざんされたんだ』という話が新たに出てくるかもしれない」との見方を示した。(『ABEMA的ニュースショー』より)