◆パチプロは肩身の狭い存在 この世界で食っていくのなら、パチンコ台のハンドルを握るたびに覚悟しなければならないのが出入禁止と出玉没収。雑誌やインターネットでも打ち方の情報が手に入る「止め打ち(※1)」「捻り打ち(※2)」などの小技でもそのリスクがあり、ましてやプログラムの穴をつく攻略打法は極めて危険だ。「食わせてもらっている」という意識を持ち、謙虚でいなければ明日はない。メーカーよりもパチンコ屋よりも圧倒的に弱い存在、それが「パチプロ」なのである。
※1 止め打ち……ムダな打ち出しを控えて玉を節約する打法※2 捻り打ち……ハンドル操作で玉に緩急の差をつける打法
◆パチプロが追い続けていた「CR アップルシード」
はじめての出玉没収は、『CR アップルシード』を追いかけた2015年。小刻みに開放するV穴(ここに玉が入れば大当り)を狙い打つことができるため、よほど運が悪くなければプラス収支で終えられるマシンだった。
どこかの記事に「何千種類かのV穴開放パターンがあって攻略対策が万全です」と書いてあったが、あれは真っ赤なウソ。解析したところ、実際は7パターンほどの手抜きプログラムだった。手順は、開放パターンを丸暗記してタイミングよく玉を打ち出すだけ。効果のほどは、「蒼穹のファフナー(初代)」、「湘南爆走族」など、プロに攻略されて撤去されてしまったマシンと肩をならべるほど。
ただ、0.2秒ズレたら裏のタイミングを打ってしまうため、繊細な技術を要する。その見返りは大きく、期待時給1万円が望める魅力的なマシンだった。
◆景品交換を拒む女性店員
パチンコ番組の収録を終えた夕方に、4のつく日が盛り上がる店に立ち寄った。12月4日のホール状況は、予想通りの高還元。プロに対する警戒が薄いように思えたけれど、それでも出しすぎるのはマナー違反。2万発(貸玉で8万円ぶんの価値)をいただいて、20時にはヤメることにした。
こうして景品カウンターに立つ菜々緒さん似のスレンダーな女性に出玉情報の入ったICカードを渡したところ、どうにも様子がおかしい。その彼女はカードを握りしめながらインカムを口元に近づけ、誰かと会話を始めたのだ。イヤな予感がした……。処刑の順番を待っているわけでもないのに、ゾワゾワとした。
◆体格のいい男性店員から怒鳴られ…
80秒くらい待っただろうか。現れたのは、空手の師範でもやっていそうな体格のいい男性。彼は突然、「お前みたいなヤカラは出ていけ」と大声で怒鳴った。心当たりは十分にある。攻略法で抜かれたことが気に入らなかったのだろう。
覚悟していたので、すぐに「すみませんでした」と深々と頭を下げたが、そんな言葉に揺らぐ様子はない。そこで、「せめて投資分だけは返していただけませんでしょうか」とお願いした。すると彼は「オマエが入店してから打ち終えるまで監視カメラでずっと見てた」と、得意げな表情を浮かべた。
ようするに、最初から投資金を目当てにしたパチプロホイホイ。これに、まんまと引っかかってしまったのだ。
◆建造物侵入罪をチラつかせる店員に応戦
彼は続けて「オマエみたいなヤカラに返す金はない、早く出ていかないと警察を呼ぶぞ!」と建造物侵入罪をチラつかせてきた。さすがに納得がいかなかったので、コチラも「釘を曲げていらっしゃることを通報しますよ」と切り返した。

◆他の被害者を出さないためにもツイートすることに
勝とうとする人間を排除したい気持ちは分かるし、誠実な店員さんであれば受け入れられる。そもそも自由を求めてこの道を選んだわけだし、ことを荒立てるのは大嫌い。けれどもここは、投資金だけを吸い上げる悪魔城。 さすがに、「このドラキュラみたいな経営が続いたらマズいよな」と思い、出玉没収の件をツイートした。べつに擁護してほしいわけじゃなくて、他の被害者がでてほしくないから。
◆店長からデマを流される
あれだけの態度をとった店長さんが黙っているわけもなく、パチンコ業界の関係者の方々に「何度も注意したのにミネッチは攻略をヤメなかった」とデマを流されてしまうことに……。その情報を信じる人が意外にも多くて、パチンコ業界での評判はガタ落ち。イバラの道を進むことになってしまった。
◆ツイートしたことによって嬉しいことも
それでも、嬉しいこともあった。この事件からすぐに、イエローカード(2枚もらったら出入り禁止となる)を導入するパチンコ店が増えたのだ。つまり一発退場となる店が減ったということ。実際のところ没収事件と因果関係があるかは分からないけれど、少しでもフェアな世の中になったならば後悔はない。
ちなみにその店は5年前に閉業。資金繰りに、悩んでいたのかもしれない。
文/ミネッチ