4月6日午後4時頃、沖縄県の宮古島周辺を飛行していた陸上自衛隊(陸自)の多用途ヘリコプターUH-60JAが行方不明となり、その後、同海域で墜落したことが明らかになった。
筆者は、この報に接した時、災害派遣で宮古島に派遣されたヘリが不慮の事故に見舞われたと、早合点した。
それには理由がある。
沖縄県での離島からの急患搬送の多くを陸自が担っており、1990年には、宮古島に向かった陸自101飛行隊の連絡機LR-1が墜落し、陸自隊員3名と同乗していた民間の医師1名が亡くなるという痛ましい事故の記憶があったからだ。
だが、その後、「第8師団長が搭乗」「事故と判明」という防衛省の発表に接し、筆者の脳裏に不可解な疑念が生じた。
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疑念の内容を明かす前に、陸自の組織について簡単に説明しておきたい。陸自の部隊は、陸上総隊と方面隊に大きく分かれており、方面隊は北部、東北、東部、中部及び西部の5つで構成される。陸上総隊は隷下に第1空挺団や水陸機動団、特殊作戦群などの直轄部隊を有し、有事に際しては、方面隊を指揮して陸上部隊を統合運用する。そして、師団とは隊員6000名ほどの主たる作戦単位をいう。つまり、平素は各方面隊が担当区域の防衛・警備に責任を持っているが、有事には陸上総隊が複数の方面隊を指揮して、オール陸自の体制で戦いに臨むというわけだ。着任わずか5日目の事故へリに搭乗していた坂本雄一第8師団長は、北熊本の建軍駐屯地に所在する西部方面隊所属の第8師団の指揮官で、階級は陸将(陸軍中将に相当)。第8師団は熊本県と宮崎県、鹿児島県の防衛・警備を担当しているが、2017年には全国の師団に先駆けて、「事態が生起した場合、必要に応じ、警備区域を超えて緊急展開」する機動師団に改編された。そのため、同師団は鎮西機動師団を自称しており、師団のパンフレット(下図参照)でも「島しょ防衛態勢 第一列島線の抑止・対処」を役割として掲げている。出展:陸上自衛隊第8師団ここまで読んでいただければ、筆者の疑念の一つが推察いただけるだろう。事故が起こった場所は沖縄県の宮古島周辺海域で、沖縄県は那覇駐屯地に所在する第15旅団が担当する。もちろん、有事に際して第15旅団の増援部隊となる第8師団の長が、防衛省が発表したように、上空から島の地形などを確認する航空偵察を行うことは、あり得なくはない。 しかし、坂本第8師団長が着任したのは、今年3月31日。この日は金曜日なので、実質的には着任後わずか5日目にして、担当区域を超えて航空偵察したことなる。航空偵察とは言うものの、師団長によるそれは、実質的な視察にあたるだろう。だが、筆者は、坂本師団長の行動は、自衛隊の指揮官として、極めて異例だと指摘したい。後編記事『陸自ヘリ墜落、防衛省に「強烈な違和感」を抱いた理由…中国海軍空母が航行するなか、なぜ「重大事故」は起きたのか』では、筆者がこの事故に関して感じた不可解な点について詳述する。
疑念の内容を明かす前に、陸自の組織について簡単に説明しておきたい。
陸自の部隊は、陸上総隊と方面隊に大きく分かれており、方面隊は北部、東北、東部、中部及び西部の5つで構成される。
陸上総隊は隷下に第1空挺団や水陸機動団、特殊作戦群などの直轄部隊を有し、有事に際しては、方面隊を指揮して陸上部隊を統合運用する。
そして、師団とは隊員6000名ほどの主たる作戦単位をいう。
つまり、平素は各方面隊が担当区域の防衛・警備に責任を持っているが、有事には陸上総隊が複数の方面隊を指揮して、オール陸自の体制で戦いに臨むというわけだ。
へリに搭乗していた坂本雄一第8師団長は、北熊本の建軍駐屯地に所在する西部方面隊所属の第8師団の指揮官で、階級は陸将(陸軍中将に相当)。
第8師団は熊本県と宮崎県、鹿児島県の防衛・警備を担当しているが、2017年には全国の師団に先駆けて、「事態が生起した場合、必要に応じ、警備区域を超えて緊急展開」する機動師団に改編された。
そのため、同師団は鎮西機動師団を自称しており、師団のパンフレット(下図参照)でも「島しょ防衛態勢 第一列島線の抑止・対処」を役割として掲げている。
出展:陸上自衛隊第8師団
ここまで読んでいただければ、筆者の疑念の一つが推察いただけるだろう。
事故が起こった場所は沖縄県の宮古島周辺海域で、沖縄県は那覇駐屯地に所在する第15旅団が担当する。
もちろん、有事に際して第15旅団の増援部隊となる第8師団の長が、防衛省が発表したように、上空から島の地形などを確認する航空偵察を行うことは、あり得なくはない。
しかし、坂本第8師団長が着任したのは、今年3月31日。この日は金曜日なので、実質的には着任後わずか5日目にして、担当区域を超えて航空偵察したことなる。航空偵察とは言うものの、師団長によるそれは、実質的な視察にあたるだろう。だが、筆者は、坂本師団長の行動は、自衛隊の指揮官として、極めて異例だと指摘したい。後編記事『陸自ヘリ墜落、防衛省に「強烈な違和感」を抱いた理由…中国海軍空母が航行するなか、なぜ「重大事故」は起きたのか』では、筆者がこの事故に関して感じた不可解な点について詳述する。
しかし、坂本第8師団長が着任したのは、今年3月31日。
この日は金曜日なので、実質的には着任後わずか5日目にして、担当区域を超えて航空偵察したことなる。
航空偵察とは言うものの、師団長によるそれは、実質的な視察にあたるだろう。
だが、筆者は、坂本師団長の行動は、自衛隊の指揮官として、極めて異例だと指摘したい。
後編記事『陸自ヘリ墜落、防衛省に「強烈な違和感」を抱いた理由…中国海軍空母が航行するなか、なぜ「重大事故」は起きたのか』では、筆者がこの事故に関して感じた不可解な点について詳述する。