【富裕層のお金の増やし方】
地方で駅前や百貨店跡地にタワマンが増殖するワケ 一戸建てからの住み替えも「賃貸か持ち家か」という議論はいまだ尽きませんが、富裕層の多くは持ち家に住んでいます。 私自身は相続税調査で、賃貸住まいの富裕層を一度も見たことがありません。総務省の統計でも、世帯主の年収が高いほど持ち家率が高くなることが示されています。年収400万~500万円の持ち家率は66.2%ですが、年収2000万円以上の世帯になると9割に迫る水準。 では、なぜ富裕層には持ち家派が多いのでしょう。一つには、富裕層には先祖代々引き継いできた土地や家屋があるケースが多いことが挙げられます。相続した持ち家があれば、固定費としてもっとも大きな住居費を抑えることができて、資産形成に有利であることは間違いありません。

もう一つの理由は、優遇税措置の影響があると考えられます。その一つが相続税の特例の一つである「小規模宅地等の特例」。これは非常に節税効果の高い特例です。 たとえば、亡くなった被相続人が住んでいた土地を配偶者が相続したとしましょう。すると、その敷地面積のうち330平方メートルまでの評価額が80%減額されます。ということは、特例を使う前の相続税評価額が1億円で、面積が330平方メートル以内であれば、評価額を2000万円まで落とせるということ。名前こそ「小規模」ですが、330平方メートルといえば「100坪」ですから、かなりの広さです。 相続税に限らず、日本政府はこれまで住宅取得を支援するため、さまざまな優遇税制を設けてきました。持ち家の優遇税制措置は、「買う時」「売る時」「もらう時」の3つに分けられます。 まず買う時に利用したいのが、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)。これは10年以上の住宅ローンを組む人を対象に、年末時点のローン残高の一定割合を税額から差し引くものとなっています。売る時も、売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税がかかるのですが、やはり複数の優遇措置があります。 その代表的なものが「3000万円の特別控除」と呼ばれる制度であり、住居として使っていた建物と敷地であれば、売却益3000万円までは無税です。売却時の優遇税制措置は、相続のタイミングでも活用できます。 たとえば、両親が死亡して実家が空き家になった場合、以下の条件を満たすと3000万円の特別控除が使えます。(1)亡くなった人が1人で住んでいたこと(2)1981年5月31日以前に建築された家屋とその敷地であること(3)相続開始から売却日まで継続して空き家であること(4)売却代金が1億円以下であること(5)2023年12月31日までに譲渡すること(延長の可能性アリ) 家は大きな買い物なので、こうした優遇税制措置のことを理解しておくことが大事です。制度をうまく活用できれば、広い家に住みながら住居費を抑えることができます。(小林義崇/フリーライター 構成=中森勇人)
「賃貸か持ち家か」という議論はいまだ尽きませんが、富裕層の多くは持ち家に住んでいます。
私自身は相続税調査で、賃貸住まいの富裕層を一度も見たことがありません。総務省の統計でも、世帯主の年収が高いほど持ち家率が高くなることが示されています。年収400万~500万円の持ち家率は66.2%ですが、年収2000万円以上の世帯になると9割に迫る水準。
では、なぜ富裕層には持ち家派が多いのでしょう。一つには、富裕層には先祖代々引き継いできた土地や家屋があるケースが多いことが挙げられます。相続した持ち家があれば、固定費としてもっとも大きな住居費を抑えることができて、資産形成に有利であることは間違いありません。
もう一つの理由は、優遇税措置の影響があると考えられます。その一つが相続税の特例の一つである「小規模宅地等の特例」。これは非常に節税効果の高い特例です。
たとえば、亡くなった被相続人が住んでいた土地を配偶者が相続したとしましょう。すると、その敷地面積のうち330平方メートルまでの評価額が80%減額されます。ということは、特例を使う前の相続税評価額が1億円で、面積が330平方メートル以内であれば、評価額を2000万円まで落とせるということ。名前こそ「小規模」ですが、330平方メートルといえば「100坪」ですから、かなりの広さです。
相続税に限らず、日本政府はこれまで住宅取得を支援するため、さまざまな優遇税制を設けてきました。持ち家の優遇税制措置は、「買う時」「売る時」「もらう時」の3つに分けられます。
まず買う時に利用したいのが、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)。これは10年以上の住宅ローンを組む人を対象に、年末時点のローン残高の一定割合を税額から差し引くものとなっています。売る時も、売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税がかかるのですが、やはり複数の優遇措置があります。
その代表的なものが「3000万円の特別控除」と呼ばれる制度であり、住居として使っていた建物と敷地であれば、売却益3000万円までは無税です。売却時の優遇税制措置は、相続のタイミングでも活用できます。
たとえば、両親が死亡して実家が空き家になった場合、以下の条件を満たすと3000万円の特別控除が使えます。
(1)亡くなった人が1人で住んでいたこと(2)1981年5月31日以前に建築された家屋とその敷地であること(3)相続開始から売却日まで継続して空き家であること(4)売却代金が1億円以下であること(5)2023年12月31日までに譲渡すること(延長の可能性アリ)
家は大きな買い物なので、こうした優遇税制措置のことを理解しておくことが大事です。制度をうまく活用できれば、広い家に住みながら住居費を抑えることができます。
(小林義崇/フリーライター 構成=中森勇人)