「最近、岸田総理が妙に元気ハツラツとしているんですよね。本当に元気なのか、それとも……」(自民党関係者)
某日、報道陣のカメラを避けるように通話する岸田文雄首相(65)。スマホの背面には、広島東洋カープの「カープ坊や」と「岸田文雄」の4文字が描かれた千社札風シールが貼られている。
広島は言わずもがな、岸田家の地元であり自らの地盤。熱烈なカープファンを公言し、2016年にはマツダスタジアムでも始球式をしている。3月10日のWBC韓国戦の始球式では、開成高校野球部出身らしからぬ「暴投ワンバン投球」を披露してしまったが、カープ愛はウソではないのだろう。
ウクライナの首都キーウに電撃訪問し、ゼレンスキー大統領との会談を行った岸田首相。混迷を極める国際情勢のなか、今年5月に開催されるG7広島サミットは非常に重要なモーメントだ。岸田首相は誰よりも思い出深い広島に凱旋し、“岸田家の故郷(ふるさと)”に錦を飾る心算(こころづもり)だろう。
だが、岸田がサミットで飾るのは「錦」ではなく「花道」かもしれない。岸田政権はハッキリ言ってボロボロだ。内閣支持率は一時期よりも回復したものの、岸田に味方がいないのが最大のネック。秘書官に据えた長男・翔太郎がどれだけバッシングされようとも更迭しないのは、そうした理由もある。
ある自民党議員秘書は言う。
「翔太郎さんを切らないのも、心を許せる存在が彼しかいないからです。どうやら岸田さんは、我々にもわからない深い闇を抱えている」
安倍内閣は「お友達内閣」とも揶揄されたが、少なくとも困った時相談に乗れる閣僚がいた。対して岸田首相が孤立無縁に陥ってしまったのは、周囲の「根回し力」に依るところもあるという。前出の秘書が続ける。
「安倍さんの時は、清和会の人脈豊富な議員が他派閥との間を取り持って、摩擦が強くならないように調整していた。ところが岸田派(宏池会)の上層部にはそういった人材が見当たらない。肝心の根本匠事務局長があまり機能していない。岸田派の若い議員に、『根本さんが決められるのは、例会(派閥の食事会)の弁当くらい』と揶揄されていましたね」
4月の統一地方選に向けて一致団結といきたい自民党だが、国会は目下のところ、総務省内部文書問題における高市早苗経済安全保障担当大臣(62)の答弁で、カオスな状態になっている。岸田首相にとっては余計な悩みのタネが増えたといったところだろう。
「自民党の重鎮も、さすがに統一地方選挙前に内部で揉めるのはまずいと思っているはず。選挙後にあるサミットが、岸田降ろしの号令になるかもしれない」
と分析するのは、ジャーナリストの鈴木哲夫氏だ。
「岸田首相には表立ってやりたい政策がない。やっていることといえば、巧妙な言い方での争点隠しくらいです。一方で、強権的ではないために、霞が関官僚が御しやすい存在。増税や軍備増強が進められ、原発新設の議論が持ち上がっているのは、各官僚の振り付け通りに動いた結果でしょう。当然、自民党議員からすれば看過できない」
では、誰が「岸田降ろし」の音頭を取るのか。鈴木氏が続ける。
「菅義偉前首相(74)です。麻生太郎副総裁(82)、茂木敏充幹事長(67)との『三頭政治』の中で、蚊帳の外の菅前首相は党内きっての『反首相派』。来秋の総裁選も睨(にら)み、サミット後に菅前首相が何らかのアクションを起こす可能性はあります」
四面楚歌の岸田首相、その本当の胸中はーー。(文中一部敬称略)